Kissシリーズ・甘々・5(2)

2017.06.13(22:55)

「実はあのクッキー、砂糖の分量間違えて作ったから、結構甘かったんだよね」
「はあ…」
「けれどキミは本当に美味しそうに食べてくれかたら。それじゃあいけないと思って、ちゃんとしたお菓子作りをするようになったんだよ」
 お兄さんは時々、お菓子を作ってくれます。
 それはどれも本当に美味しいので…お兄さんの作ったお菓子以外は、食べなくなってしまいました。
 お兄さんは失敗作と言いましたが、わたしは…。
「…でもそれでも美味しく感じたのは多分、当時からわたしがお兄さんのことを好きだったから、だと思います」
「うっ…。それを言われると、余計に罪悪感を感じてしまうなぁ」
「えっ!? どっどうしてですか?」
 わたしが慌てふためくと、お兄さんはまたもや笑い出します。
「あっ、もしかしてからかいました?」
 顔が熱くなるほど慌てる姿を見て、お兄さんはお腹を抱えるほど笑います。
 それでも外にいるので、声は出さずに、体が震えるぐらいに抑えてはいますが…。
「ぶぅ」
「ごっゴメン…。本当にキミが可愛くて…」
「どうにもバカにされているようにしか聞こえません!」
 わたしはミルクティーを一気に飲んで、立ち上がります。
「わたしは先に出ています。落ち着いたら来てください」
「あっ、待ってよ!」
 わたしはズンズンと歩き、お店を出ました。
「あっ、お会計…」
 お金のことを思い出し、立ち止まって振り返ります。
 しかしお兄さんがすでに伝票をレジに持って、払っている最中でした。
 …でもレジをしているウエイトレスの顔が、嬉しそうに見えて…わたしはまた胸が苦しくなります。
 恋人になろう、と言ってくれたのはお兄さんの方から。
 わたしはわたしなりに、お兄さんへの気持ちを伝えてきたつもりでした。
「でも…幼馴染から、何も変わらない…」
 手をつないで歩いたり、二人っきりで過ごすことも恋人と言えるでしょう。
 けれどそれは、幼馴染という関係でもできることです。
 わたしはいたたまれなくて、歩きだします。
「いざ恋人になったら、期待ハズレだったとか…」
 …自分で言って、自分でダメージを受けました。
 七歳の年の差は思っていたより、大きいのかもしれません。
 わたしはまだ学生で、お兄さんはすでに社会人。
 わたしが社会人になるには、あと五年は必要になるでしょう。
 大学に進むつもりですし…。
 そしたらお兄さんはもう29歳。
 …その年齢になれば、結婚ということも考えるでしょう。
 でもわたしは社会人になったばかりで、きっと結婚とは両立できない気がします。
 そこまで器用ではないと、自覚しているから…。
「ふぅ…」
 お兄さんと恋人になってから、何だかため息が増えた気がします。
 周囲の人達は恋人ができると、それは幸せそうに見えるのですが…。
 今のわたしはきっと、幼馴染の頃より幸せそうな顔はしていないと思います。
 悩むことが増え、苦しむことが増えました。
 いっそもう恋人を終わらせようかと考えた時も、一度や二度ではありません。
 でも…やっぱりお兄さんを他の女性には取られたくないのです。
「…どうしたもんですかね?」
「何を?」
「ぅわあ! あっ、お兄さん」
 いつの間にか、わたしの後ろにはお兄さんがいました。
「ようやく追い付いた。恋人を置いて行くなんてひどいなぁ」
「恋人をからかう人の方がヒドイです!」
「ゴメンゴメン。ただキミって僕の一言で、随分表情を変えるからさ」
「…そういうの、面白がっているって言うんです」
 意地悪な人です!
 …でも意地悪になったのは、恋人になってからのような気がします。
 幼馴染だった頃は、もっと優しかったですから。
「面白がっているというより、嬉しいかな? 僕のこと、気にしてくれているって感じがするから」
「あっあの…ちょっと、ご相談があるんですが…」
「相談?」
 眼を丸くしたお兄さんの顔が見れなくて、思わず俯きます。
「…この先に海に面した公園がありますので、そこでお話します」
「うん」
 そしてわたし達は公園にやって来ました。
 今日は天気が良いので、人も多いです。
 人のいない所を目指して歩くも、会話はありません。
 やがて海が展望できる場所にたどり着き、そこには誰もいませんでした。
「わぁ…! 今日は海がキレイに見渡せますね」
「だね。ここ、良い穴場みたいだ」
 お兄さんと並んで、しばらく海を眺めていました。
 けれど…言いたいことが、あります。
「あの…ご相談のこと、ですが」
「うん? 何かな?」
 わたしは大きく息を吸い込み、そしてお兄さんの顔を真っ直ぐに見ます。
「恋人、やめませんか?」
「えっ…」
「幼馴染の関係に、戻りませんか?」
「どう…して」
 お兄さんは心底驚いた顔をします。
 …でもわたしは決めました。
「疲れて…しまったんです、わたし。幼馴染であった頃の方が、楽しくて良かった…。今はもうただ苦しくて、辛いだけなんです」

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村←よかったら、ぽちっと押してください。

スポンサーサイト

コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://hosimure.blog33.fc2.com/tb.php/1094-3f540d22