フリーのシナリオライターとして活動しています
「あっああ、いくらだ?」
「こちらは乗車券ですので、お支払いは降りられた所でお願いします」
「そうか。ところでどこから乗ればいいんだ?」
「こちらです。ご案内いたしますので、ついてきてください」
 わたしが歩き出すと、男性も歩き出した。
 そして数分も経たない内に、細い階段の前に来た。
「こちらを降りられると、目的の場所まで行けますよ」
「あっああ…」
 いまいち納得して無さそうな顔で、男性は降りて行った。
 …あの切符は、先程の老女が持っていた切符とは種類が違う。
 でも男性は自ら電車に乗ることを決めた。
「ちゃんと説明を求めればいいのにね」
 小さくなっていく男性の背中を見ながら、わたしは呟いた。
 さて…、まだ迷子がいるみたいだ。
 わたしは踵を返し、感覚に引っ掛かる所を目指して歩き出した。
 しかもコレは…ちょっと厄介だ。
 深くため息をつき、肩を鳴らした。
 少し気合を入れていかなきゃ。


 その存在は、奥の方にいた。
 ずっと壁を見つめているのは、古い民族衣装に身を包んだ青年だ。
「何故…。何故こんな所に…」
「もしもし?」
 声をかけると、ゆっくりと振り返る。
「ここがどこだか、お分かり…ですか?」
「ああ…。何となくは…」
「では、大人しく行ってくれますか?」
 青年の目が僅かにつり上がった。
「ここへ来てしまったということは、そういうことなんですよ」
 わたしは出来るだけ穏やかに声をかける。
「…だ」
 …ああ、やっぱり。
「イヤだイヤだっ! こんな所へ来るはずではなかった! 私はずっとあの場所にっ…!」
 まあこういう迷子はたま~に来る。
 一つの場所に留まっていた昔の人。
 けれど何らかの力が働いて、追い出されたのだろう。
 追い出されれば、ここへ来るのは必須。
「そうはおっしゃられてもね。きっと戻れませんよ? それにここからも出られません。あなたの行く所は、一つですから」
「…っ! 言うなっ! 小娘!」
「小娘…て言われるほど、わたし、可愛くないんですよ」
 そりゃ彼からすれば、小娘に見えるだろう。
 けど…この身に流れる血は彼より古く、そして重い。
「申し訳ありませんが、あなたはすでに切符を持っていらしているはず。乗ってもらいますよ」
 あたしは制服のポケットから笛を取り出した。
 銀色の細い笛。
 しかし彼は色を変えてきた。
 どんどん濁った黒い色に染まり、形も歪んできた。
 …こりゃ、マズイな。
 よどみとなったモノは伸びたり縮んだりを繰り返していた。
 しかし突如動きを止め、狙いをあたしに定めた。
 あたしは飛び掛るよどみを避けながら、笛を吹いた。

ピィーーー!

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【2017/06/03 18:51】 | ★マカシリーズ★
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