フリーのシナリオライターとして活動しています
 よく年上の女の人はこう言う。
「恋愛から結婚へのステップって、難しいのよね」
 …でもアタシはこう思う。
「友達から恋愛へのステップの方が、難しい気がする」
 小学生の頃から、何となく気になっている男の子がいた。
 いつも一緒に遊んでいて、気が合って、楽しかった。
 男の子から告白されたのは、小学校の卒業式の後。
 中学は同じ所に通うことは分かっていたけど、男の子は小学校を卒業するのを機に、友達も卒業したいと言ってきた。
 そして恋人になりたい―と。
 何となくだけど、男の子のことが気になっていたアタシは、すぐにOKした。
 その時から、男の子はアタシの彼になった。
 春休みはほぼ一緒に遊んだ。
 お互いにケータイを持っていたから、毎日のメールや電話は当たり前。
 中学に入っても、それはほとんど変わらなかった。
 運良く同じクラスになった。
 彼はバスケ部に入って、アタシにマネージャーになってほしいと言ってきた。
 特に入りたい部活もなかったので、これまたすぐにOKした。
 部員の人達はとっても優しくて、あたたかい人ばかり。
 先輩マネージャーもまるで姉のように、頼りがいがあって、親切な人。
 部員の人達は、アタシと彼のことを祝福してくれた。
 恵まれていて、幸せだった。
 …ハズなのに。
「何か…ときめきを感じないのは何故?」
 首を傾げながら、彼の自主トレの様子を見守る。
 部活が無い日の休日は貴重だ。
 でも最近じゃ、彼の自主トレデートばかり。
 別に行きたい所とか、したいことがないから、OKしてたけど…何か恋人っぽくない。
 バスケットゴールがある公園は、住宅街から少し離れている。
 そのせいか人気が少なく、彼が自主トレをするには格好の場所。
 彼は1人、ボールとゴールを必死に追いかけていた。
 アタシはベンチに座り、ぼ~っと見ているだけ。
 恋人になってから、二年の月日が流れた。
 一応恋人らしいこともしているけど…何か倦怠期というモノを感じている今日この頃。
「ふぅ…。休憩にすっか」
「あっ、うん」
 顔から流れる汗を、アタシはタオルで拭いてあげる。
「さんきゅっ」
 そうすると、本当に嬉しそうに笑うから。
 思わずアタシも笑顔になってしまう。
「いえいえ、マネージャーの仕事ですから」
「彼女の仕事、でもあるだろう?」
 そう言って汗だくの体で抱きついてくる。
「きゃあっ!? ちょっ、汗臭い!」
「ヒッデーな。彼氏の匂いだろ?」
「そういう問題じゃっない~!」
 慌てて押しのけようとしても、彼の体はビクともしない。
 …いつの間に、こんなにたくましくなったんだろう?
 小学生の頃はほとんどアタシと変わらなかった彼の体。
 それが今では頭1つ分彼の方が高く、体付きも男性っぽくなった。
 その成長が目まぐるしくて、見ていて飽きなかったけど…。
「良いんだよ、マーキングのつもりだから」
「アタシは電信柱か! いいから離れてよ! ホントに汗臭いんだから」
 後ろ髪を引っつかんで、引っ張る。
「いででっ。髪の毛、ひっぱんなよ」
「自業自得よ!」
 顔を寄せて怒鳴ると、彼は一瞬顔をしかめる。
 だけどすぐに笑顔になる。
 この笑顔は…マズイ。
 髪を掴んでいる腕と、腰を掴まれ、引き寄せられる。
 近付く唇と、彼の吐息に目眩がする。
「んっ…」
 彼の熱い唇が、アタシの唇に触れる。
 …彼のキスも変わった。
 前はホントに少し触れるだけだったのが、今では唇をむさぼられるようなキスをしてくる。
 野生的で本能的なキスに、いつも頭の中が真っ白になる。
「…ちょっと、人が来たらどうすんの?」
 少し唇を離して言うと、アタシの吐息が唇に当たったのか、くすぐったそうに彼は笑った。
「大丈夫だって。ここは滅多に人が来ない。だから練習場にしてんだから」
「あきれた。スケベな下心で練習場を選んだの?」
「それもあるけど…練習している姿って、カッコ悪いだろ?」
「まっ、確かに人に見せるようなモノじゃないわね」
 彼の練習している姿を思い浮かべ、思わず肩を竦めて見せる。
「ひっでーな。まっ、確かにそれもあるかな」
 そう言って、角度を変えてキスをしてくる。
「んっんんっ…」
 彼のキスは好き。
 翻弄されることが分かっていても、離れられない。
 離れたくない。
 だから唇が離れると、さみしくて思わず彼に抱きついてしまう。
「『汗臭い』んじゃなかったのか?」
「…今なら良いわ。後でスプレー、いっぱいかけるから」
「なら、オレにも貸してくれよ」
「良いケド…女の子向けだけど?」
「別に良い。お前と同じ匂いになるんだろう? 恋人らしいじゃねーか」
 まあ…一理あるな。
 ときめきはキスをしている時だけ、感じる。
 そりゃ彼がバスケをしている姿とか、アタシへの思いを語っている時は、胸も高鳴る。
 だけどそれが特別な好きにつながるのかと言えば、ちょっと悩む。
 彼のことは好き。
 これは間違いない。
 キスをするのも、2人っきりでいるのも、彼とだけ。
 彼としか、考えられない。
 だからこのまま付き合って、そのまま結婚とかになっても、素直に受け入れられるだろうけど…。
 恋愛って、ときめきが大事なんじゃないのかな?
 彼とは一緒にいて、すっごく落ち着く。
 そのことはやっぱり大事なんだけど…。
 物足りないって言うのかな?
 …中学生でこんなこと考えるなんて、大人びているんだか、老けているんだか。
「なあ、腹減った。お弁当、作ってきてくれたんだろう?」
「あっああ、うん。もちろん!」
 アタシは彼の手を引っ張って、ベンチに座らせた。
 そしてバックから、お弁当箱と水筒を取り出した。
「ちゃんと朝早くから作ってきたわよ。飲み物はレモン水ね」
「さんきゅー。愛してるぜ!」
 そう言って抱きついてきて、アタシの頬にキスしてくる。
「ふふっ、ありがと。アタシも愛してるわよ」
 アタシは冷たいおしぼりを取り出し、彼の手を拭いてあげる。
 そしてコップにレモン水を注いで、彼に渡す。
「はい、まずは水分補給」
「おう!」
 彼は一気にレモン水を飲んだ。
「あ~! 冷たくて酸っぱくて、美味い!」
「良かった。それじゃあお弁当もどうぞ♪」
 彼の好きな和風のお弁当箱を差し出すと、彼はまずおにぎりを手にとって、食べた。
「うん、コレも美味い! オレ、ずっとお前の料理食べてたいなぁ」
「はいはい。ずっと面倒見てあげるわよ」
 彼の笑顔が大好きだから。
 ずっと側で見ていたい。
 1人占めしていたから…。
「あっ…」
「ん? どした?」
 …気付いた。
 おだやかだと思っていた中にひそんでいた、熱い恋心に。
 アタシはずっと、彼を1人占めしていたんだ…。
 今、2人でいることを、続けたいと思った。
 それがきっと、恋心。
「…ねぇ」
「なに?」
 アタシは彼の頬に、キスをした。
「ずっと一緒にいようね♪」

<終わり>

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【2017/06/03 18:32】 | <Kiss>シリーズ
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