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【地下鉄】・1

あらすじ
 降りてはならない地下鉄の駅があるのをご存知ですか? 
 彼女はそこでバイトをしています。
 地下鉄に迷い込んだ者を導く為に…。
 あなたはご存知ですか? 
 この世には降りてはならない地下鉄への階段があることを…。
 マカの従姉・女子大生のルカは地下鉄でバイトをしています。
 それはちょっと特殊な仕事です。


『昼間 /大学にて』

「ねぇねぇ、帰り、カラオケ行こーよ」
「おっ、良いね」
「あっ、わたしも行くぅ」
 そう言って手を上げると、周囲にいた友達がきょとんとした。
「えっ、ルカ。行けるの?」
「今日、バイトあるって言ってなかったっけ?」
「わたしのバイト、夜勤なんだ。だから昼間はへーキ」
 にっこり笑って手を振ると、今度は不安顔。
「え~。なら、寝た方が良いんじゃない」
「夜勤ってきっついよ。今から帰って寝たら?」
「大丈夫だって。明日は授業、午後からだし。ちょーどバイト代、入ったばっかだから奢るよ」
「えっ、ホント?」
「ラッキー。今日はルカの奢りね」
「はいはい」
 奢り、という言葉に気を良くした友人達と一緒に、大学の校舎を出る。
「ねぇねぇ、そう言えば聞いたぁ? 最近、ヘンな地下鉄が出るんだって」
「『地下鉄が出る』? ある、じゃなくて?」
「それがね、真夜中にいきなり地下鉄の入り口が出るんだって。それでうっかりそこの階段を下りて、地下に行くと、この世じゃない所へ行く地下鉄に出会っちゃうんだって」
「へぇ…。でも乗らなきゃ平気なんじゃない?」
「さぁ。アタシが聞いたのは、そういう所へ行くってことだけだから。最近さぁ、霧が多いじゃん? だからそういうウワサ話が出るんじゃないかなぁって」
「ああ、あるかもね。ちょっと前にも、ケータイの都市伝説はやってたし。でもいつの間にか消えていたよね」
「ごほっ!」
 何も口に含んでいないのに、思いっきりむせた。
「ごほっがほっ!」
「なぁに、ルカ。怖かった?」
「ケータイ電話のウワサ話も、嫌がってたもんね」
「いっいや、ちょっとノド渇いただけ。先にファミレスにでも行かない? そっちも奢るからさ」
「いや~ん。ルカ、太っ腹!」
「良いバイト、見つけたんだね」
「まっまあ、夜勤だからね。それに身内に紹介されたヤツだから特別なの」
「でも気を付けなよぉ。最近霧が多いせいで、変質者増えているみたいだしぃ」
「ヘンなウワサもあるからね。行く時とかタクシーでも使って行きなよ」
「うん、さんきゅっ。でも大丈夫、人気の多い所だから安心して」
 心から心配してくれる友人達に笑みを浮かべて見せる。
 ほんの少しの罪悪感と共に。


『夜 /バイト先にて』

 友人達とファミレス、カラオケ、ショッピングのハシゴをした後、わたしは家に帰らず、そのままバイト先に向かった。
 終電近くの時刻。
 すでに辺りは真っ暗で、霧が濃くなっていた。
 今日は満月だというのに、朧月夜だ。
「まあキライじゃないけどね。キレイだし」
 肩を鳴らし、駅から少し離れた地下鉄に降りる。
 改札を通る前に、駅員室の扉をノックした。
「おお、ルカちゃん。いらっしゃい。今晩もよろしくね」
 中から人の良さそうな中年男性が顔を出す。ここの駅員だ。
「はい、よろしくです。何か注意、ありますか?」
 中に入ると、もう一人の駅員の人が頭を下げてきた。この人は新人だ。
「そうだねぇ…。相変わらず『迷い人』が多いぐらいだね。でも私達ではどちらなのか、見分けが付かないからねぇ」
 説明を受けているうちに、若い駅員がお茶を淹れてくれた。
「どうも」
 お茶を一口飲み、中年の駅員を見た。
「対処は?」
「とりあえず、いつもの通りだよ。あとはルカちゃんに任せるよ」
 困った様子の駅員2人に、私は苦笑した。
「はい、それがわたしの仕事ですから。それよりも帰り道にはくれぐれも気を付けてください。表の世の犯罪者には、わたし達の力は行使できませんから」
「分かっているよ。ルカちゃんの親族の人が、送迎してくれるから大丈夫」

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