フリーのシナリオライターとして活動しています
「聞きたいことがあるなら、はっきり聞いたらどうだ?」
「えっ?」
「マノンのこと、聞きたいんだろう?」
「…聞いても?」
 マカは黙って首を縦に振った。
「行方は血族で全力で捜しているが、見つかっていない。だが肉体の維持をする為に、近々悪さをするだろう。その時が勝負だな」
 血族のネットワークを使っても、マノンの行方は知れず。
 頼るものがいないならば、マノンは自分で動くしかない。
 その時こそ、決着を付けなければ。
「消えた人形の持ち主―いや、契約者と言った方がいいだろう。その者達をも吸収して行ったんだ。…次に会う時には、それこそ死闘だろうな」
 マカは失踪者達がすでにこの世にいないことを知っていた。
 あの光に溶けたのは人形と、人形の契約者達だということを、分かったのだ。
 契約者達は最愛の者と一緒に、マノンの肉体の一部にさせられた。
 恐らく解放は、マノン死のみ―。
 だからこそ、負けられない。
「今度は負けない。必ず、私が勝つ」
 眼が赤く染まったマカを見て、店主は深くため息をついた。
「こんな事態になるなら…」
「関わらなければ良かった、などとは思うなよ? 結局、こういう運命だったんだからな」
「運命…ですか。もっとロマンのある言葉だと思っていたんですけどね」
 苦笑する店主を見て、マカは呆れた顔をした。
「ウチの血縁者ならば、運命は諦める言葉だと思え」
「そうですね」
「さて、そろそろミナとの待ち合わせの時間だ」
 店の壁にかけてある時計を見て、マカはブレンドティーを飲み干し、立ち上がった。
「相変わらず仲がよろしいことで。今度ここに連れて来てくださいよ」
「緊急避難場所としてなら来てやる」
「おやおや」
 肩を竦める店主を店に残し、マカは出て行った。
 細い路地を抜け、街に出る。
 駅に向かって歩いていると、ミナの姿が見えた。
 ちょうど駅から出てくるところだった。
「あっ、マカぁ」
「ミナ、今そっちに行くから待ってて!」
「うん!」
 笑顔のミナに手を振り、マカは信号を待った。
 休日にもなると、駅前は若い人でごった返す。
 …失踪事件があろうと、ここにいる人間の何人が覚えているのか。
 マカは少しむなしく思え、ため息をついた。
 その間に信号は青へと変わった。
 慌てて人ごみの中を歩き出す。
 向かいから来る人をうまく避けながら、ミナの元へと急ぐ。
 ―だから気付かなかった。
 向かいから歩いてくる人物。
 黒尽くめの服を着て、フードを深く被っている。
 口元には笑みが浮かんでいた。
 マカが向かってくるのを、心待ちにしているように。
 そして二人がすれ違いざま。

大切なモノは、ちゃんと守らなきゃ… いつか失ってしまうよ?

 マカの眼が大きく見開かれた。
 しかし足はそのまま信号を渡りきってしまった。
 向こう側へとたどり着いたマカは振り返る。
 しかしそこに、黒尽くめの人物はいなかった。


【終わり】


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【2017/05/28 07:01】 | ★マカシリーズ★
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