フリーのシナリオライターとして活動しています
『人形とよみがえり』
 店主の説明では、白い人形に自分の血と命、そして死者の肉体の一部を入れると、死者をよみがえらせるというモノだった。
 だがその本当の効能とは―。
 白い人形の本体とも言うべきが、恐らくは今のマノンの肉体だ。
 そこに血と命を注ぎ込まれる。
 そして死者のよみがえりの呪をかけられる。
 ―それでマノンはよみがえる。
 よみがえるどころか、注がれた命と血のおかげで力を得る。
 恐らく、よみがえった死者もそんなに長くは持たないだろう。
 力の大半は、目の前にいるマノンに吸い取られているのだから。

『絶望と幸福』
「…てことを…。何てことをぉお!」
 マカは激昂した。
 誰だって死んで欲しくない、死にたくない人間はいる。
 特に若い者であれば、尚更だ。
 カノンが人形を与えるターゲットを、自分と近い歳の者を選んだのにも理由がある。
 マノンと言う、もう一人のマカをよみがえらせる為に。
 近い歳の者の血と命、そして呪が必要だったのだ。
 でもこんなのは、人の悲しみと弱みに付け込んだ悪しき行動以外の何物でもない。
 人の死は、とても悲しく苦しく切ない。
 だからこそ、生は楽しく明るく嬉しいものなのだ。
 生に闇や影があろうとも、生きていればどうにだって出来るし、何にでもなれる。
 その人の絶望と幸福を利用して、得た結果が、目の前の闇のモノ。
 すでに人成らざるモノなんていう次元じゃない。
 あっては成らない、闇の眷属だ。
「マノンっ! 頼むから闇へ返れ! この世に存在するだけで災いとなるお前を、このまま野放しには出来ないんだ!」
「死ぬことを頼むなんて、ヘンな姉さんだね。イヤに決まっているじゃないか」
 マノンは避けるだけで、攻撃を仕掛けてはこない。
 だが体力の限界を、マカの方が感じていた。
 すでに息は上がりつつあるのに、マノンは息一つ切らせていない。
 …そういう肉体的な機能が無いのかもしれない。
 昂る感情のせいで、涙が溢れてきた。
 仮にも同じ両親を持ちながらも、己が半身は闇のモノと化してしまった。
 元より、この血をもって生まれたことより、自分がただの人間だとは一度たりとも思ったことは無かった。
 だが、あえて人としての道を外れようとも思わなかった。
 例えそれに近い道に進んだとしても、必ず引き戻せる自信があったのに…。
 けれど目の前の自分は、闇の道を進むことを決めてしまった。
 それは血族の次期当主としても、普通の女子高校生としても許せることではない!
「…終わりにしよう。マノン」
 マカは静かに息を吸った。
 そして右手に気を溜める。
 屈み込み、一気に走り出す!
 マノンの首を狙って。
 しかし…。
「遅いよ、姉さん」
 無邪気な笑顔に、一瞬手が揺れた。
 その隙に攻撃の腕を捕まれ、地面に体を叩き付けられた。
「がはっ!?」
 肺の空気が全て抜けた。
 右腕と首元を捕まれた。
 抗おうとしても、体への衝撃のせいで指一本動かせない。
 ノドを締められ、空気が漏れる。
「ひゅっ…」

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【2017/05/26 16:36】 | ★マカシリーズ★
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