『桜の恋 櫻の愛』・7

2017.05.24(01:13)

「魅桜はずっと、オレが育ててきたんだ。最期まで面倒を見続けるのが、兄ってもんだろう」
 そう言ってベッドに腰掛けるわたしに抱き着いてくる。
 兄のあたたかな重みを受け止めながら、わたしは苦しげに顔を歪ませた。
「…兄妹以上の感情を捨ててくれたら、良いのにね」
「ああ、無理だよ。それは」
 兄の声が不意に真剣みを帯びる。
「魅桜はオレにとって、妹っていう簡単な存在じゃないんだ。―知っているだろう?」
「ええ…よく知っているわ」
 兄が顔を上げれば、二人の顔は間近になる。
 そして兄が近付いてこれば、その距離はなくなってしまう。
「んっ…」
 兄の近付いてくる唇を、避けようと思えば避けられた。
 兄はいつだってわたしを一番に優先する。
 だからイヤがれば、それ以上の無理強いはしてこない。
「魅桜はもう一人のオレなんだよ。だからオレは自分を愛しているようなもんなんだ」
「勝手な言いぐさね」
「だな。でもお前だってそう思っているから、オレを拒まないんだろう?」
 自信たっぷりに言うと、わたしの腰に手を回し、体の密着度を高めてくる。
「不思議だと思わないか? 歳も性別も違うのに、オレ達はこんなに似ている。性格だって、正反対のようで本当は同じなんだよ」
 兄の言わんとしていることは、何となく分かっていた。
 お互い、根本的に似ているのだ。
 それでいて正反対。
 まるで一つの魂を、二つに分かち合ったかのような存在。
 陰と陽―男と女。
 欠けているからこそ、二人一緒にいることを強く望んでしまうのだろう―兄は。
 そしてわたしは離れることを望みつつ、共に生きることを望んでしまう、二つの気持ちがある。
 迷いの原因は、いろいろある。
 世間体だの、常識とかだのだ。
 それを抜かせば、わたしだって兄が愛おしい。

誰にも渡したくないぐらい、
誰にも見られてほしくないぐらいの、
独占力を持っている。

わたしだけに触れて、
わたしだけを見て、
わたしだけを感じてくれたら…。

「櫻美…」
 だから二人っきりの時は、わたしからキスをしてしまう。
「なぁ、魅桜。兄と妹ってあり方も、案外悪くないかもしれないぞ?」
「どこがよ? バれたらどんな恐ろしいことになるか、分からないほどあなたはバカじゃないでしょう?」
「バレれば、な。でもばれなければ良い」
 そう言って何度も啄むようにキスをしてくる。
「兄妹は産まれた時からずっと一緒だ。この身に同じ血を流し、名字だって同じ。二人で一緒にいても、周囲は何も不思議に思わないだろう? 都合が良いんだよ」
 都合、ね。
 確かにそう思うことは、わたしもある。
 いつでもどんな時でも二人一緒でも、周囲は何も言わないし思わない。
 特にウチの両親が不在がちであれば、特にだ。
「愛している人とずっと同じ家に住んでても良いんだぞ? 便利じゃないか、兄妹ってヤツは」
 ニヤッと得意げに笑われても、素直に同調はできない。
 わたしにはまだ、冷静な常識人の心が残っているのだ。
 彼のように、一線を簡単には越えられない。
 こういうところが彼にはないからこそ、わたしにはあるんだろう。
 わたし達は対だから…。
 でもお互いに特別な感情を抱いているのは同じなのだから、変な話。
 わたしが男であれば、きっと彼のようになっていただろう。
 そして彼が女であれば、わたしのようになっていた。
 それが対というものだから。

 二人だけの秘密は今、月の光の下にさらされる―。


『わたしの兄 /二人で歩む未来』
「…書類の確認だけって話じゃなかったっけ?」
「すまん。書類を確認していたら、ミスを発見したんだ」
 翌朝、わたしは蘭と生徒会役員達と書類を見ながら動き回っていた。
 朝一番に蘭からメールが届いた。
 何でも書類にミスを何か所か発見したらしく、至急、早朝会議を開いてほしいとのことだった。
 生徒会長の命令は絶対なので、わたしは慌てて役員全員に声をかけた。
 今度ウチの学校で、ダンスパーティーが行われる。
 その準備の為の書類だったのだが、今日中に出さなければいろいろなことが遅れてしまう。
「今日の授業、全部ムリね」
「だな」
 生徒会の特権で、役員の仕事がある時は授業のサボりを特別に許可されている。
「会長! ここの確認をお願いします!」
「会長、例の件ですが…」
「はいはいはい!」
 次から次へと呼ばれ、息つく暇もない。

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