フリーのシナリオライターとして活動しています
「魅桜はずっと、オレが育ててきたんだ。最期まで面倒を見続けるのが、兄ってもんだろう」
 そう言ってベッドに腰掛けるわたしに抱き着いてくる。
 兄のあたたかな重みを受け止めながら、わたしは苦しげに顔を歪ませた。
「…兄妹以上の感情を捨ててくれたら、良いのにね」
「ああ、無理だよ。それは」
 兄の声が不意に真剣みを帯びる。
「魅桜はオレにとって、妹っていう簡単な存在じゃないんだ。―知っているだろう?」
「ええ…よく知っているわ」
 兄が顔を上げれば、二人の顔は間近になる。
 そして兄が近付いてこれば、その距離はなくなってしまう。
「んっ…」
 兄の近付いてくる唇を、避けようと思えば避けられた。
 兄はいつだってわたしを一番に優先する。
 だからイヤがれば、それ以上の無理強いはしてこない。
「魅桜はもう一人のオレなんだよ。だからオレは自分を愛しているようなもんなんだ」
「勝手な言いぐさね」
「だな。でもお前だってそう思っているから、オレを拒まないんだろう?」
 自信たっぷりに言うと、わたしの腰に手を回し、体の密着度を高めてくる。
「不思議だと思わないか? 歳も性別も違うのに、オレ達はこんなに似ている。性格だって、正反対のようで本当は同じなんだよ」
 兄の言わんとしていることは、何となく分かっていた。
 お互い、根本的に似ているのだ。
 それでいて正反対。
 まるで一つの魂を、二つに分かち合ったかのような存在。
 陰と陽―男と女。
 欠けているからこそ、二人一緒にいることを強く望んでしまうのだろう―兄は。
 そしてわたしは離れることを望みつつ、共に生きることを望んでしまう、二つの気持ちがある。
 迷いの原因は、いろいろある。
 世間体だの、常識とかだのだ。
 それを抜かせば、わたしだって兄が愛おしい。

誰にも渡したくないぐらい、
誰にも見られてほしくないぐらいの、
独占力を持っている。

わたしだけに触れて、
わたしだけを見て、
わたしだけを感じてくれたら…。

「櫻美…」
 だから二人っきりの時は、わたしからキスをしてしまう。
「なぁ、魅桜。兄と妹ってあり方も、案外悪くないかもしれないぞ?」
「どこがよ? バれたらどんな恐ろしいことになるか、分からないほどあなたはバカじゃないでしょう?」
「バレれば、な。でもばれなければ良い」
 そう言って何度も啄むようにキスをしてくる。
「兄妹は産まれた時からずっと一緒だ。この身に同じ血を流し、名字だって同じ。二人で一緒にいても、周囲は何も不思議に思わないだろう? 都合が良いんだよ」
 都合、ね。
 確かにそう思うことは、わたしもある。
 いつでもどんな時でも二人一緒でも、周囲は何も言わないし思わない。
 特にウチの両親が不在がちであれば、特にだ。
「愛している人とずっと同じ家に住んでても良いんだぞ? 便利じゃないか、兄妹ってヤツは」
 ニヤッと得意げに笑われても、素直に同調はできない。
 わたしにはまだ、冷静な常識人の心が残っているのだ。
 彼のように、一線を簡単には越えられない。
 こういうところが彼にはないからこそ、わたしにはあるんだろう。
 わたし達は対だから…。
 でもお互いに特別な感情を抱いているのは同じなのだから、変な話。
 わたしが男であれば、きっと彼のようになっていただろう。
 そして彼が女であれば、わたしのようになっていた。
 それが対というものだから。

 二人だけの秘密は今、月の光の下にさらされる―。


『わたしの兄 /二人で歩む未来』
「…書類の確認だけって話じゃなかったっけ?」
「すまん。書類を確認していたら、ミスを発見したんだ」
 翌朝、わたしは蘭と生徒会役員達と書類を見ながら動き回っていた。
 朝一番に蘭からメールが届いた。
 何でも書類にミスを何か所か発見したらしく、至急、早朝会議を開いてほしいとのことだった。
 生徒会長の命令は絶対なので、わたしは慌てて役員全員に声をかけた。
 今度ウチの学校で、ダンスパーティーが行われる。
 その準備の為の書類だったのだが、今日中に出さなければいろいろなことが遅れてしまう。
「今日の授業、全部ムリね」
「だな」
 生徒会の特権で、役員の仕事がある時は授業のサボりを特別に許可されている。
「会長! ここの確認をお願いします!」
「会長、例の件ですが…」
「はいはいはい!」
 次から次へと呼ばれ、息つく暇もない。

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村←よかったら、ぽちっと押してください。

スポンサーサイト

【2017/05/24 01:13】 | 恋愛小説
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック