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 特にあの…わたしを褒める時に現れる熱い眼に、心がひどく揺れ動くのを感じてしまうから。

『お前、本当に良い女だよな』

 心底嬉しそうに、兄はわたしを見ながら言う。
 幼い頃から両親は不在がちで、兄はずっとわたしに付きっきりだった。
 わたしの身の回りのことも、兄が仕切っていた。
 そのことを別にどーでもよく思い、好きにさせていたのが悪かったのだろうか。
 すっかりわたし中心の人生になってしまった。
 わたしも自分の世界に兄がいることを、自然と慣れてしまった。
 髪型も着る洋服も家具すら、兄が選んだものだった。
 押し付けられたワケじゃない。
 何となく好みが合うから、兄に全てを任せてしまっているのだ。
 兄は別に自分の好みで、わたしを育てあげたわけじゃない。
 ちゃんとわたしの性格を熟知して、合わせてくれているのだ。
「でもいつまで経ってもこのままじゃ…流石にお互い、成長しないわよねぇ」
 将来、両親から結婚相手を薦められる可能性は高い。
 特に家を継ぐ立場の兄には、婚約の話も出ているだろう。
 でも兄は結婚する気、今は全然ないだろう。
 かと言ってわたしが兄より先に結婚できるのかというと…絶対にあり得ない。
 兄が裏から手を回し、潰すのが容易に想像できてしまうのだから、恐ろしい。
「はぁあ~」
 深く息を吐き、わたしは眼を閉じた。
 いろいろ考えていたせいか、眠りに落ちてしまうのに、時間はかからなかった。


『わたしの兄 /二人の関係』
「んっ…」
 頭を撫でる、優しく大きな手。
 そして顔に何度も触れる、あたたかな唇の感触。
 うっすら眼を開けると、兄の優しく微笑む顔が間近にあった。
 すでに外は暗く、月の明かりが兄の笑みを浮かび上がらせる。
 身贔屓しなくて、良い男だ。
「…夕食、できたの?」
「開口一番、色気のない言葉が出るなぁ」
 苦笑しながらもわたしの前髪を上げて、額にキスをする。
「だってお腹減っているもの。あんなに着せ替えされたら、疲れるしお腹も減るものなの」
「ふぅん。…ならもっとお腹を減らして、食事を美味く頂くっていうのはどうだ?」
「もう少し待てってこと?」
「そうじゃなくてさ」
 クスッと妖しく笑う兄の笑みの意味を悟り、思わず顔をしかめてしまう。
「体を疲れさせるようなこと、しないか?」
 わたしの耳元で低く囁く声に、背筋にぞくっと甘い痺れが走る。
「…やめてよ」
「ん~、どうしよっかな?」
 クスクス笑いながら、ワンピースの裾から手を入れて、わたしの足を撫でる。
「やめてってば!」
 ぐいっと兄の胸を押して、わたしは脱出した。
「―こういうことは麗華さんとしてよ」
「アイツの体も飽きてきたんだよな」
「…鬼畜、外道」
 わたしは冷たく言い放つ。
 本当に酷い言葉を吐く。しかも罪悪感など欠片もなく。
「お褒めいただき、光栄のいたり」
「バッカじゃないの?」
「オレはただ、お前のことを愛しているだけだって」
「…あっ、そう」
 服の乱れを直し、髪も直しながら、わたしは兄から視線をそらす。
 …あの熱情に満ちた眼を見たくなかったから。
「そう言えばお兄様、留学なさるの?」
「ん? 何その話」
 兄は初耳だという顔をして見せる。
「高校を卒業したら、外国へ行くんじゃないかって話、出ているんじゃないの?」
「ああ、そういう話もあったっけ。でもオレ、付属の大学へ行こうと思っているんだ。お前も将来は行くだろう?」
「それは…まだ分からないけど」
「どこかのお嬢様大学にでも行きたいのか?」
「いや、それはないわ」
 今だって肩が凝る生活を送っているのに。
 わたしには残念ながら、お嬢様生活があまり合っていないようだった。
「付属の大学へ行こうよ。そしたら三年間はまた一緒だぞ?」
 無邪気な笑顔を浮かべても、腹黒さは隠せていない。
「お兄様…いつまでわたしに執着しているつもりなの?」
「死ぬまでずっと」
「何でそこまで…。そろそろわたしから離れた方が良いんじゃないの?」
「ヤダよ。オレに死ねって言うの?」
 …そこまでか。

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【2017/05/24 01:03】 | 恋愛小説
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