『桜の恋 櫻の愛』・2

2017.05.20(13:38)

「それともスイーツでも食べに行くか? あっ、アクセサリーを見に行くのも良いな」
 わたしは良くない!
「ねぇ、お兄様。いい加減、妹離れしたら?」
「いや、ムリ」
 瞬時に笑顔で否定しやがった!
「お前のことは、お袋のお腹にいた時から知っているしな。これからもずっと見守っていきたいんだよ」
 兄は優しく微笑み、わたしの頬を撫でる。
「お兄様…それは正直言って、嬉しくないわ」
「えっ!? 何で?」
「とっととお兄様が結婚して、甥か姪でも生まれた方が、わたしは嬉しいもの」
「んなっ!」
「そしたらわたしも安心して、結婚することができるもの」
「そっそんな…」
 本気でショックを受けた兄は、真面目に落ち込んでしまった。
 けれど突如顔を上げた瞬間、とんでもない言葉を言いやがった。
「じゃあオレが結婚しなきゃ、お前も結婚しないってことだよな?」
「はあ?」
「よしっ! ならできるだけ、結婚しないようにしよう!」
 …言っていることが無茶苦茶です。
 我が兄ながら、バカだと思う。
 この妹バカを抜かせば、割と完璧な人なんだけどな~。
 妹のわたしから見ても容姿端麗、成績も優秀で、カリスマもある。
 両親は出来た兄を心から愛した。
 もちろん、わたしのことも大事にしてくれる。
 だけど兄のは…少し、重い気がする。
 両親の仕事が多忙で、近くにいないせいだとも言えるんだけど。
 せっかく彼女がいるんだから、もうちょっと向こうへ行ってほしい。
「なあ、じゃあ映画とかにするか?」
「はあ…。もう買い物で良いわよ」
「よしっ。それじゃあ授業が終わったら、教室で待っててくれ」
「はいはい」
 うんざりしながら、会話を続けること数十分後。
 学校に到着。
 わたしは運転手に開けてもらったドアから、とっとと脱出した。
 この密閉空間は、結構キツイものがある。
 しかし兄は険しい表情をして、なかなか出てこない。
「あ~あ。魅桜と離れたくないなぁ」
「学校にいる間ぐらい、ガマンしてよ。放課後は一緒に買い物に行くんだから」
「はいはい。じゃあそれを糧に、頑張りますか」
 渋々といった様子で、車から降りて歩き出す。
 …ったく。手間のかかるシスコンめ。
「ねぇ、一応聞いておくけど、麗華さんとはうまくいっているのよね?」
「まあな。アイツ、オレにベタ惚れだし」
 そう言って得意げに笑う兄。
 しかし自意識過剰とは言えない。
 何故なら、本当に彼女は兄にベタ惚れだからだ。
 校門を通って校舎への道を歩いていると、行き交う生徒達がわたしと兄の姿を見つけると立ち止まり、頭を下げてくる。
「おはようございます、櫻美さん、魅桜さん」
 ちなみにこの学校では、年上を『先輩』とは呼ばない。
 下の名前で『さん』を付けるのが常識となっていた。
「みんな、おはようさん」
「おはようございます、みなさん」
 すかさず笑みを浮かべ、兄とわたしは挨拶を返す。
 何せ兄は前期生徒会長、わたしは今期生徒会長だからだ。
 学校では知らぬ者がいないと言われるぐらいの、有名兄妹なのだ。
 しかしもう一人、有名人がいる。
「おはよう、櫻美。そして魅桜さん」
 この学校で唯一、兄を呼び捨てにできる人。
 それが兄の彼女の麗華さんなのだ。
 艶のある黒髪は腰まで伸びていて、品のあるお嬢様をそのまま現実化したような女性。
「おう、麗華。おはよう」
「おはようございます、麗華さん」
 麗華さんは兄と同じクラスで、前期生徒会副会長を務めていた。
 大和撫子という言葉を思い出させる雰囲気を持つ彼女が、何故兄を選んだのか、未だに謎だ。
「魅桜さん、生徒会長のお仕事には慣れて?」
「ええ、まあ。いろいろ難しいところもありますが、周囲の人がフォローしてくれますので、何とか…」
「そう。何かお困りのことがあれば、いつでも相談してね?」
「はい」
 優しく穏やかな女性。
 わたしとは正反対のタイプだな。
「それじゃあ2年の校舎に向かいますので」
「ああ、じゃあな」
「お勉強、頑張ってくださいね」
 二人と別れて、わたしは2年の校舎に向かった。
 ウチの学校は特殊な授業が多い為、学年ごとに校舎が違うのだ。


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