【宵闇の者としての覚醒と責任】・4

2017.05.14(17:44)

『新たな人生と手に入れた自由』

「うん。流石はタイガ警備保障心霊対策課、良いマンションを紹介してくれたな」
「…慧花、お前本気で言ってんのか?」
 8階建ての高級マンションは、大河家が所有している。
 心霊対策課に雇われた宵闇の者や業魂は、ここに無料で住むことを許されていた。
「学院近くで良いじゃないか。彩斗も御門のじじいが後見人となってくれたおかげで、私と同じ高校2年生になるんだから、ちゃんとしてくれ」
「まあ別に高校生になるのは構わない。だが…アイツらの手先になるのが、なぁ」
(芹沢さんのこと、か)
 慧花は『あの後』のことを思い出す。


 ―戦闘後、彩斗は実家とタイガ警備保障に連絡をしてくれた。
 すぐにタイガは来てくれ、慧花は病院へ運ばれた。
 宵闇の者となった慧花は数日で完治して退院したが、向かったのは実家ではなく、華羅皇神社だった。
 そこで神主の御門重信と、彩斗の三人で話をした。
 慧花はタイガ警備保障心霊対策課に所属することを望んだ。
 危険な任務もあるだろうが、実家を出て生活するには充分な報酬を貰えることを知っていたからだった。
 家族は難色を示したものの、重信の説得を受け、渋々慧花を実家から手放すことを決めた。
 早速タイガ警備保障へ向かい、大河アカリと芹沢千雨に出会った。
 ―が、彩斗は芹沢を見て顔をしかめた。
 何となくイヤな感じがする―と言うのが彩斗の意見だ。
(確かに何かイヤ~な感じがしたな)
 アカリの方が気持ちが分かりやすく、気が合いそうだった。
 ゆえに今後の付き合いはアカリの方を中心にしようと、彩斗と決めたところだった。


 しかし納得していない部分があるらしく、引っ越してからもブツブツ言っている。
「でもワンフロア、全て使えるなんて贅沢だよな。二人だけじゃ使い切れないかも」
「自由で良いだろう? こういうのも悪くはない」
「自由か…。それと引き換えに戦いの日々を送るのも、悪くないだろう?」
「お前、言うようになったな」
「誰の影響だろうな?」
 お互いの顔を見つめ合い、二人は同時に笑う。
 ようやく手に入れた自由が、楽しくてならない。
「まっ、何はともあれ。全てが初めてづくしだ。いろいろと大変だろうが、2人で力を合わせて頑張ろう」
「だな。しばらくは学生生活と戦いの日々を楽しもうぜ?」
「前半は良いが、後半は物騒だな」
「けど戦うの、嫌いじゃないだろう?」
 彩斗の挑発的な視線を受け、慧花は唇を上げて笑う。
「―そう、だな。なかなかクセになりそうな、刺激的な行為だった。しかし自分の力不足を実感したというのもある。次に備えて、しばらくは修行を頑張ろう」
「かったるいな。どうせなら実践で頑張ろうぜ?」
「そういうのはダメだ。やっぱり積み重ねは大事だぞ」
「ったく…。そういうところは死んでも治らないんだな」
「当然。宵闇の者になったからと言って、性格までは変わらないさ」
 自信たっぷりに微笑む慧花を、彩斗はまぶしげに見つめた。
 長年求め続けた自由を手に入れた慧花は、本当に活き活きとしていて美しい。
「これからよろしくな、慧花」
 彩斗は慧花に左手を伸ばした。
 慧花の利き手は右手だったが、紋章があるのは左手の方。
 その意味を悟り、慧花は頷きながら左手で握手をした。
「よろしく、相棒」


【終わり】



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