ホラー/オカルト小説・【2つの魔女】2

2017.05.09(05:49)

「まあ、ね」
 確かにわたしの手元にペンは戻ってきた。
 その事実は否定しない。
「ほらぁ。最初っから『魔女』を頼れば良かったじゃない」
「下手に機嫌を損ねると、後で大変な眼に合わせられるよ?」
 このクラスメート達が本当にわたしのことを心配してくれているのは分かる。
「だけど、どうにも好きにはなれないのよねぇ」
 わたしは階段を登りながら、渋い表情になった。
「別に彼女自身のことは嫌いではないんだけど…。注目のされ方は嫌いね。『魔女』と呼ばれて嬉しがるなんて、どうかしている」
「でもさあ、『魔女』になる前の彼女なんて、エアーも同然だったじゃん」
「そうそう。いっつも怪しい本ばっか読んでてさ。でもまさかそれが特技だったなんてね」
 …占いはともかく、人を呪うのも特技のウチに入るのか。
 最近の女子高校生の考え方は、本当に面白い。
「美夜はあんまり噂とか信じない方だろうけど、本当に気を付けた方が良いよ」
「うんうん。何かあってからじゃ遅いんだから、『魔女』のご機嫌取りはしといた方が安全だよ」
「パース。それに大丈夫よ、わたしなら。そういうの、効かないこと知ってるでしょう?」
 わたしの言葉で、二人は黙ってしまった。
 思い当たることが、多過ぎるほどあるからだ。
 わたしは今まで、摩訶不思議なことに巻き込まれたことがない。
 クラスで交霊術が流行った時も、わたしがしても何も起こらなかった。
 それはコックリさんやエンジェルさん、キューピットさんなど。
 一切何も無かった。
 またクラスメート達と心霊現象の起きる場所に行っても平気だったし、写真を撮っても何も映らなかった。
 つまり、そういう現象を完璧にスルーする体質だった。
 ゆえに友達はみな、そういうことにわたしを付き合せないようになったのは言うまでもないこと。
「まあ…ね。美夜なら大丈夫かも」
「でも用心はしときなよ」
「はいはい」
 気だるく返事をしたわたしだったが、すでに巻き込まれている自信はあった。



【『魔女』の正体 】

 ゴロゴロゴロッ…

 雷の音が薄暗い街中に響きわたる。
 空には重く黒い色の雲が広がり、時折金色の稲光を走らせる。
 雷の力というものは凄まじく、あえて雷を落として何かの力に利用するという話を思い出しながら、わたしは歩いていた。
 あの日から数日が経過した。
 しかしわたしは特に何も変わってなく、そのことをクラスメート達は不思議に思っていた。
 そしてとある説を言い出す。

 ―『魔女』に逆らっても、大丈夫なんじゃないか?

 無事である証人が、わたし自身なのだから何とも言えない。
 だけど段々とその話は広まっていき、前ほど彼女の周りには人が集まらなくなった。
 そして陰口を言う者も徐々に増えてきた。
「栄枯盛衰ってね。一度は栄えても、枯れるのが世の理り。誰も何もソレには逆らえないからこそ、平等な世の中とも言える。―そう思わない?」
 人気のない広い公園に入ったところで、わたしは歩みを止めて声をかけた。
 学校からずっとつけられていることに気付いていた。
 だからここまで連れて来たのだ。
「ど…して? 何でアンタは無事なの?」
 声も表情も荒らげたのは、『魔女』こと鈴だった。
「アンタが不幸になるよう、いろんな術をかけた! なのに何一つ成功していない。今までこんなこと、なかったのに!」
 真っ白い顔色で、黒い眼をむくとヒッドイ顔になるなぁ。
 しかし今の言葉を聞くと、やっぱり彼女、自分を否定する者には呪いをかけていたのか。
「はぁ…。最近、何かうっとおしいのが来ていることは気付いていたけどね。バカ正直に受けてあげる義理もないし、返り討ちにしてたまでよ」
「返り討ち…? アンタもあたしと同じ、『魔女』なの?」
「人を呪うという意味なら、否定するわ。それにわたし、泥棒じゃないし」
「なっ!」
 彼女の目が見開かれる。
 あっ、顔色が白から青へと変わった。
 ―やっぱりそうだったか。
 わたしは深く息を吐き、彼女と正面から向き合った。
「探し物を占いで見つけるって言うの、アレは詐欺でしょう? だってあなたが盗んで、それをさも占いで見つけたように言うんだもの」
「どっどこにその証拠があるのよ!」
「ないわ。でもそんなことを続けていれば、いずれは誰かに見つかって自滅するわよ」
「勝手なこと、言わないで! じゃあテストに出る問題を当てたって言うのは? あたしが問題用紙を盗み見たとでも言うの?」
「テスト範囲なんて前もって先生達から教えられるし。過去問や担当の先生の出題傾向を考えれば、外れることの方が珍しいわよ」
 そこまで言って、わたしは肩を鳴らした。
 あんまり長く話すの、得意じゃないしな。
 しかし目の前の彼女は歯を食いしばり、わたしを鬼のような形相で睨み付けている。
 握り締めている拳も白く震えているし、激昂しているな。
「怒りを買うのを承知でもう一つ。呪いをどこで学んだか知らないけど、逆凪という言葉を知っている?」
「さか…なぎ?」
 ふと彼女の表情が緩んだ。
 はじめて聞く言葉なんだろうな。
「呪術者が呪いや術を使った後、必ず使用者に返ってくる災いのことを言うの。それは本に載っていなかった?」
「しっ知らないわよ! そんなこと!」
「あっ、そう。それでも人を不幸にする術や、また探し物を当てる術…これはまあ盗みとの半分ずつだったんでしょうけど、使用していたのよね? そろそろそのツケ、払う時なんじゃない?」
 術というものは一日にそんなに多く使えるものじゃない。
 特に人間にかけるものであれば、一日一度が限度。
 ゆえに学校内での紛失の件や、テスト問題の予想は自力でしていたんだろう。
 そこまで彼女の力は強くないから―。
「そんなこと言って脅かしているつもり? あたしにはコレがあるから大丈夫なのよ!」



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