短編恋愛小説・『小春と日和』

2017.05.03(15:23)

あらすじ
 川原で昼寝をしていたアタシ。起きた時に側にいたのは…っ!?
 春の日差しによって誘われた眠気に耐え切れず、アタシは川原で昼寝をした。
 目が覚めた時、そこにはイケメンの青年がいつの間にかいて!?


『眠りの姫』

「ふわ~あ」
 季節は春。今日はいわゆる春暖で、暖かい日。
 眠気は最高潮☆
 新学期が始まったとは言え、学年が一つ上がっただけで、そんなに緊張感も無かった。
 中学生活も2年目にもなれば、慣れが出てくる。
 1年の時はまだ、新入生ということで緊張感があった。
 来年は受験生だ。今までで1番緊張することは、目に見えている。
 だから2年の今が、1番気が緩みやすい。
 アタシは桜並木を歩きながら、欠伸を連発していた。
「あっ、ダメだ…」
 くらっ…と一瞬、気が遠くなった。
 毎日6時間寝てても、この春の暖かさには勝てない。
 アタシは家に着くまでガマンできなくなって、方向転換した。
 向かった場所は川原の土手。
 ここは土手沿いに桜の木が植えられていて、今は満開で見応えがある。
 広い土手には広場が作られていて、街から離れているせいか人の姿はあまりない。
 草原は整備されていて、昼寝をするにはうってつけだった。
 近くに交番があるので、変な人はうろつかないし。
 アタシは人から離れ、草原に寝転んだ。
「ふあああ…」
 もうそろそろ限界…。
 このポカポカとあたたかい陽差しに、優しい風、青空と白い雲が、日常からアタシを切り離す。
「おやすみ…」
 誰に言うでもなく、アタシはそのまま瞼を閉じた。
 優しく撫でる風に、身を任せながら…。


「…んっ」
 近くに人の気配を感じて、眼を覚ました。
「あっ、起きた?」
「えっ…?」
 一気に頭の中の霧が晴れた。
 眼をパッチリ開き、起き上がると、
「わっ!?」
「おはよう。良く眠ってたね」
 いっいつの間にか、隣に見知らぬ青年がいた!
 だっ誰だ?
 じぃ~っと見ても、見覚えがない。
 …つまり、知らない人だ。
 知らない人に、多分長時間、寝顔を見られていたワケで…。

カァー カァー

 …頭上では、夕日に向かって飛んでいるカラスが鳴いていた。
 カラスが鳴いたのなら…帰ろう!
「しっ失礼します!」
 カバンを引っ掴み、駆け出したアタシ。
「あっ、ちょっと!」
 寝起きとは思えない動きで、アタシはそのまま家の中まで走った。
「ぜぇーぜぇー…」
 自分の部屋に着くと、床にバッタリ倒れた。
 はっ恥ずかしい…。
 見知らぬ青年に、寝顔を見られ続けていたなんて…。
 …思い出してみると、青年は結構美形だったな。
 多分20歳そこそこ。見た目は遊んでいそうなカンジもしたけど、好青年っぽい。
 そんな人に寝顔を見られていたなんて…。
 赤っ恥もいいところだ。
 しかしあの人も、大人しく座っているだけじゃなくて、せめて声をかけてくれたらよかったのにっ!
 …声をかけるのを躊躇うほど、爆睡しているように見えたんだろうか?
「まっまあ、どうせもう会わないだろうし!」
 そう自分に言いきかせ、アタシは復活した。
 今度から外の昼寝は控えるようにしようと、心に決めて。


 それからと言うのも、どんなに眠くてもガマンした。
 だけどっ! この春の眠気は強いっ!
 あの日から10日が過ぎていた。
 あの場所へ向かい、キョロキョロと辺りを見回す。
 だけど誰もいない。
 …でもこの『誰もいない』という環境がマズイのかもしれない。
 遊具のある所では、子連れのグループがいる。
 それに他にも草原で寝ている人もチラホラ。
 だけど人の多い所の方が、安全かもしれない。
 …その方が、あの青年に会わないだろう。
 人のいる所はちょっと気恥ずかしいけれど、赤っ恥をかくよりはマシ。
 同じように昼寝している人がいるし。
 アタシはフラフラしながら寝転んだ。
「ふわっ…。おやすみ」
 そしてまた、夢の世界へ飛び立った。

カァー カァー

「んんっ…」
 またカラスが鳴いている。
 カラスが鳴いているのならば、もう夕暮れなんだろう。
 そろそろ家に帰らなきゃ…。
 うっすらと眼を開ける。夕暮れの空が、眼に映った。
 何度が瞬きをしながら起き上がると、
「やっ」
 …どこかで聞いたことのある声が、隣から聞こえてきた。
 深呼吸して隣を見ると、やっぱりあの青年がいた。
「…ども」
 もう二度目ともなると、ただの偶然とは言いづらい。
「アタシの寝顔に、何か?」
 こうなれば開き直るだけだ。
「ん? いや、良く寝ているなぁと思って。可愛い寝顔だし」
 …よく『口を開かなければ、美少女』と言われるアタシだ。
 寝顔はさぞ可愛かったんだろうな。
「はい、コレ」
 青年は紅茶のミニペットボトルを差し出してきた。
「寝てるとノド渇くだろう?」
「…ども」
 開けて一口飲んで、ため息が出る。
 青年は隣でニコニコしている。
「アタシに何か用?」
「用…と言うか、可愛いなぁと思って」
「アナタ、歳いくつ?」
「オレ? 大学2年生、19歳。名前は日和(ひより)。キミは?」
「…中学2年生、13歳。名前は小春(こはる)よ」
「6歳差かぁ…。今だと、犯罪になっちゃうかな?」
「何が?」
「オレとキミの恋愛」
「ぶっー!」
 紅茶をふき出すも、青年はにこにことしていた。
「ろっロリコン?」
「そう言うけど、オレ、キミにしか興味ないし」
 アハハと笑いながら、言うけど…それでも犯罪と言えるのではないだろうか?
 ハンカチで口元をふきながら、じっと青年を見る。
 アタシを見る眼はとても優しくてあたたかい。
 まるで春の陽差しのような…。
「…アタシのどこが良いの? 何にも知らないじゃない」
「知らないなら、知れば良い。これからがある」
 まあ、一理ある。
「それに良いところは、今のところは寝顔かな」
 アタシの頬を軽くつねり、笑っている。
「寝ている姿はまるでお人形のように可愛い。起きている姿も魅力的だけどね」
「そりゃどうも」
「でも今度から外で寝る時には、オレを側に置いてほしいなぁ。やっぱり若い女の子1人じゃ危ないし」
「アナタみたいなのがいるし?」
「そうだね」
「笑うところじゃないと思うんだけど」
「まっ、オレは寝ているキミに一目惚れだったワケだし? 本当はオレ以外に寝顔を見せたくないってのが本音だし」
「…それって付き合うことが前提で言ってない?」
「えっ? ダメ? オレ、自分で言うのもなんだけど、損させない自信あるよ?」
 心底意外そうな顔をする青年に、アタシは思いっきり深くため息をついて見せた。
「まあ…良いケド」
「マジ?」
「自分で聞いといて、何、その顔?」
「いっいやぁ、本当にOKしてくれるとは思わなかったからさ」
 気恥ずかしそうに頭をかく青年。
 …アタシばかり恥ずかしい思いをしているので、ちょっと優越感。
「でもさ、ちょっと立ってみてよ」
「あっ、うん」
 青年は立つと、かなり身長が高かった。
 細身なのに、長身。
 アタシは女子中学生としては、ちょっと小柄だ。
 立ち上がると、青年の胸ぐらいしかない。
「…身長、高いのね」
「まっ、ね」
 肩を竦める青年に、思いきって抱きついてみた。
「わっ! どっどうかした?」
 …この身長さでは、兄妹に見られるだろうな。
「今日から毎日牛乳飲んで、ストレッチして…」
「何で?」
 アタシを抱き締めてくれながら、不思議そうな青年の声が上から降ってくる。
「アナタにつりあう女になる為よ!」
 顔を真っ赤にして怒鳴るアタシを見て、青年は笑った。
「ははっ。じっくり待つよ。待つのはキライじゃないし」
 そう言って抱き上げてくれた青年に、力いっぱい抱きついた。
 このあたたなぬくもりを離さぬよう…。
 春の陽射しのような彼に、心惹かれている自分に気付いた。


<終わり>


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