フリーのシナリオライターとして活動しています
あらすじ
 エイプリルフールに僕は彼から言ってほしい言葉がある。それは…。
 僕には好きな人がいる。
 その人は同性で、僕の思いを知っていた。
 そして―拒絶された。
 だけど4月1日に、彼に言ってほしい言葉がある。
 うそでも良いから、彼に…。
 ★BLです。


『望むうそ』
「一つ、お願いを聞いてもらっていいですか?」
「何だ?」
「4月1日、エイプリルフールに言ってほしい言葉があるんです」
「…お前、いい加減にしろよ」
 目の前にいる彼は、うんざりした表情でため息をつく。
「俺、お前のこと、好きじゃない」
「知っていますよ?」
 あなたが僕のことを嫌っていることぐらい、分かっている。
 それだけ近くにいるから。
「なら諦めろ」
「…別にまだ、何も言ってないじゃないですか」
「予想がつくんだよ。俺はお前のことが好きじゃない。ならわざわざウソをついて良い日に言ってほしい言葉なんて、一つしかないだろう」
 相変わらず妙なところで勘が働く。
「いいじゃないですか。たった一言なんですから」
「イ・ヤ・だ」
「一瞬ですよ?」
「断る」
 頑固だなぁ。
 でもまあそんなところも…。
「おいっ! 今、変なこと考えなかったか?」
 …思うことぐらい、許してほしい。
「いえ、別に」
「答えるのが一瞬遅れたな?」
「気のせいですよ。それより一応、考えておいてくださいね。エイプリルフールのこと」
「お前な…。…そもそもその言葉を俺がお前に言ったら、どうなるんだ?」
「ウソでも良いんです。あなたの口から言ってほしい言葉ですから。その一言さえあれば、もう何もいりません」
 …と言うのは、半分ウソだった。
 愛おしい人が近くにいるのに、何も望まないということはできない。
 でもその一言はとても重くて、大事だ。
 だからその言葉さえあれば、これから気持ちを抑えることができそうだと思った。
「…もう二度と、俺に好きだと言わないつもりか?」
「どうでしょうね? 実際言われてみないと、次の行動がどう出るか、自分でも分かりません」
「あのなぁ~。…あ~! もう良い! 俺は帰る!」
「はい、お疲れ様でした。また明日」
「じゃな!」
 彼は足音高く、部屋から出て行った。
 …ヤレヤレ。
 僕のことが嫌いならば、わざわざ2人っきりになることもないのに。
 時は夕暮れ。
 場所は都内にある高校。偏差値が高いことで有名だ。
 その高校の生徒会室が、今、僕と彼がいた場所だった。
 彼は生徒会長、僕は副会長だった。
 彼は僕の世界を変えた人。
 僕は成績は良かったものの、人付き合いが苦手だった。
 だから仲の良い友達が1人もいなかった。
 でも別にイジメられていたワケではない。
 一定の距離を保って、友人関係は築いていた。
 しかしある日、そんな平和な日常を彼が壊した。
 彼は生徒会長の座を狙っていた。
 そこで成績優秀者である僕に声をかけてきた。
「一緒に頂点、登らないか?」
 と。
 そして半ば強引に、彼の選挙活動を手伝うようになった。
 彼は見事に会長の座についた。
 そして僕は副会長に。
 その頃にはもう、自覚していた。
 彼に惹かれていく自分に。
 だからある日の放課後、思いきって彼に思いを伝えた。
 だけど彼は思いっきり顔をしかめ、一言。
「―俺はお前のこと、そういうふうには思えない。いや、一人の人間としては尊敬できるヤツだし、俺の片腕としては信用もしている。だけど恋愛感情としては…好きじゃない」
 困ったように、泣きそうな顔で言われた。
 だから僕は苦笑し、
「分かりました」
 と、彼の返答を受け入れた。
 だからその後、自分の思いを口に出すことはなかった。
 それから数ヶ月の時が過ぎ、春休み、生徒会の集会の後で、言い出したことだった。
「ウソでも良いんだけどな…」
 もうすぐエイプリルフール。
 ウソをついても良い日というのは、僕にとっては好都合だった。
 彼にとっても都合がいいと思ったんだが…やっぱり難しいか。



 なので4月1日は、1人で出かけることにした。
 大学受験も始まるので、電車に乗って塾の下見に行った。
 3つの塾を回ったところで、すでに昼過ぎになっていた。
 コンビニで昼食を買って、公園で食べようとした時、ケータイが鳴った。
 表示を見ると…彼からだった。
「はい、どうしました?」
『どうした?じゃないだろう! どこにいるんだ! お前!』
「えっ? どこって、外です。外出しています」
『地元にいないのか?』
「ええ、塾の下見に街中まで来ましたから」
 彼の興奮した声に、少し驚いた。
 あまり動じない性格だと思っていたから。
「それでどうしたんです? 生徒会の仕事のことですか?」
 彼と僕の共通点は、そのことぐらいしかない。
 あの告白後から、彼からは一定の距離を置かれているから。
『…ああ、まあな。今から帰って来れるか?』
「用事は全部済ませましたので戻れますが…。時間がかかりますよ? 急用なら、今伝えてもらえれば」
『いいからとっとと帰って来い!』

 ブチっ!

「っ!?」
 いきなり電話を切られた。
 なっ何があったか分からないが、とりあえず急いで戻ろう!
 …と思っても電車の都合があり、学校へ着いた時には1時間が経過していた。
 怒っているだろうか?
 あの電話の調子では…怒っているな、確実に!
 何はともあれ、生徒会室へ向かった。
 春休みでも部活動は行っており、しかし私服は目立った。
「会長? 遅くなってすみません。どうかしましたか?」
 生徒会室の扉を恐る恐る開けると、予想に反して、落ち込み気味の彼が、制服姿で座っていた。
「…遅い」
「すみません。電車の時間が上手く合わなくて…。ところで何があったんです? 今日は生徒会の用事は無い日だと思っていたんですけど…」
 もしかして、春休みだからと生徒達が問題でも起こしたのだろうか?
 落ち着かない気持ちで、彼の側へ寄った。
 すると彼はいきなり立ち上がった。
「うわっ!?」
 驚いて後ろに下がるも、腕を引っ張られ、顔を近付けてきた。
 そして彼の薄く開いた唇からこぼれた言葉は…。
「好きだ」
「…えっ?」
 眼を見開いた。
 今…あの言葉が聞こえた。
 彼の口から、ハッキリと。

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【2012/03/31 19:34】 | BL・<うそでも良いから欲しい言葉>
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