【かわいそうに…】・1

2011.06.30(23:57)

「えっ…? うそっ…」
それは一本の電話から始まりました。
まだ夕飯を食べている時、電話が鳴り、出たのはわたしの母でした。
母は電話の内容を聞き、真っ青な顔色でわたし達を見ました。
そして…
「殺された…殺されてしまった…」
壊れたテープレコーダーのように母は繰り返しました。
「どっどうしたの? お母さん!」
わたしは母に駆け寄り、その肩を掴みました。
「あのコがっ…殺されてしまった!」
―母が次に言葉を紡いだ声の意味は、わたしの血縁者の女の子の名前でした。
「うそっ…!?」
その場にいた父に兄、そして弟も言葉をなくしました。
そしてわたしも。



血縁者達が、女の子の家に集まりました。
一戸建ての家はまだ新しく、住人が亡くなると言うのはまだ早過ぎる気がします。
「どうなるんだろうねぇ」
「どうなるって、そりゃあ…」
「やめろよ。今言うことじゃないだろ?」
十数人の血縁者達は、複雑な表情でボソボソと話し合っています。
女の子の両親は今、警察の人に呼ばれていません。
母が部屋に入って来た時、一気に静かになりました。
すでに黒い着物に身を包んだ母は、険しい表情で血縁者達の顔を見回しました。
「…警察の方から、事情は聞きました」
そして重い語りが始まりました。
女の子はまだ高校2年の17歳でした。
優しく温和なコで、性格は可愛かったけれど、見掛けは美人という、ちょっと変わった女の子だったんです。
でも…そんな女の子だから、多くの人に、強く好かれもしました。
女の子には1年前からストーカーがいました。
何でも女の子が前に、そのストーカーがケガしているのを手当てしたことから、不幸が始まったようです。
ストーカーは女の子が女神に見えたんでしょう。
そうしてほぼ毎日、何かしら女の子に好意を見せるも、ストーカー扱いされ、逆上し、女の子を殺してしまったんです。
「幸いにもその青年はすぐに警察に捕まったそうですけど…」
「どこが幸いだよ」
兄が重々しい口調で、母の言葉を遮りました。
「犯人は女の子を『殺した』んだろ? ただで済むワケねーだろ」
「兄さん!」
あんまりな言葉に、わたしは兄の腕を引っ張りました。
しかし兄は強い目で、わたしをにらみ返します。
「…こっちだって、被害者だっ!」
忌々しそうに呟く兄は、腕を振り解き、そっぽを向いてしまいました。
「…とりあえず、お葬式は明日にでもすぐ行います。マスコミなどは警察の方が抑えてくれるそうですから、みなさんもくれぐれも…」
「分かっているよ」
「身内のことだからな」
血縁者達は心得たように頷き合います。



そして翌日。
小雨が降る中、近所のお寺でお葬式は始まりました。
女の子のご両親は泣きながら、訪問者達に頭を下げます。
わたしも親族席に座りながら、女の子の遺影を見つめます。
明るく、わたしにも懐いていた可愛いコです。
いなくなったことが…今でも信じられません。
…ストーカーのことは、何となく感じていました。
けれど警察の人がいるし、学校のみんなもいるから、と明るく振る舞っていました。
その本心を、見抜けなかった自分が情けないです。
女の子は殺される時、どんなに怖かったでしょう?
どんなにさびしかったでしょう?
最期に何を思い描き、何を感じたのか…もう聞く手段はありません。
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2011年06月

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