「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・15

2011.04.21(20:19)

「うっ」
 それを言われると、アレだけど…。
「永河はオレが選んだヤツなんだから」
「ずっと不思議に思ってたんだけど…いつから僕のことを?」
「ん? そうだなぁ…。まずは入学式で一目見てから、何か気になってたんだよな。そしたら体力測定やテストで、見た目よりスゴイ成績出しただろう? それで一気に興味を持ったんだ」
 見た目よりって、かなりいらない言葉だと思うけど…。
 確かにクラスで上位に入るぐらいの成績は残した。…けれど彼はその上をはるかにいったものだから、自分の成績なんてあまり頭に残っていなかった。
「正直なことを言うと、マンションに招待した時点では抱こうと思っていなかった。でも話をしているうちに、もっと気に入った。だから抱きたくなったんだ」
「それって…いわゆる一目惚れってこと?」
「まあそうだな。生まれて始めてのことで、自覚するまで時間がかかったけど。永河、お前だってそうだろう?」
 自信ありげに微笑む彼に、反論ができない。
「まあ、ね」
 入学式が行われた講堂で、新入生代表として挨拶をする彼を見て、一目で心を奪われた。
 けれどそれは僕に限らなかっただろうし、まさか紗神も僕と同じ気持ちになっていることなんて、今まで知らなかった。
「だから信じろよ。オレの愛と、お前のことを」
「うん…、信じるよ」
 僕は彼の眼を真っ直ぐに見て、誓った。
「ああ、それで良い」
 紗神は満足そうに微笑み、二度目のキスをした。
 誓いのキスを。
「…あっ、そうだ。急だったから指輪にしたんだが」
「うん?」
 結婚式と言えば、指輪だろう。
 しかし彼は次の瞬間、輝く笑顔で言った。
「首輪の方が良かったな」
「…はい?」
「オレのデザインで、特注で作らせるか。世界に一つしかない、豪華で立派なヤツ」
 …やっぱり彼は、どこまでいっても彼だった。
 そして僕も…。
「うん…そうだね」
 どこまでいっても僕だった。



【END】


★今まで読んでいただき、ありがとうございました!
 感想などいただけると、励みになります♪
スポンサーサイト

「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・14

2011.04.20(17:44)

 天気が良ければ、海が凪いでいれば、最高の結婚式が挙げられると言われていた。
 確かに実際来て見て、ここで結婚する人は幸せになれるだろうなと思った。
 …そう、他人事ならば良い。
 しかし彼が笑顔で神父と会話をしている。英語だけど、時々『結婚』と言う単語が聞こえるたびに、寒気がするのは何故だろう?
 初老の優しそうな神父は、にこにこしている。
 でも…この教会には僕と紗神、そして神父の三人しかいないようだった。
 物凄く、イヤ~な予感がする。今すぐ海に飛び込んで、泳いで逃げ出したいぐらいの悪寒も感じる。
「永河、話ついたよ」
 満面の笑顔の彼に声をかけられると、びくっと体が震えた。
「話って…何の?」
「結婚式」
「…一応、聞いておくけどさ」
「うん」
「誰か身近な人が、結婚するの?」
「うん。オレと永河」
 やっぱりっ!
「遠慮させていただきますっ!」
 海に向かって走り出すも、彼の方が足が速かった。すぐに捕らえられて、ズルズルと教会の中に引きずり込まれた。
 神父が笑顔で手を振って、見送ってくれる。どうやら外で待っているらしい…。
「そう照れるなって。日本じゃ恥ずかしいだろうから、せっかく外国にしたのに」
「日本でやったら、悶絶するって!」
「アハハ。だからここにしたんだって」
 紗神は楽しそうに言って、大きなステンドグラスの前で立ち止まった。美しい天使を描いたステンドグラスの迫力に、目を見開いてしまった。
「キレイだね」
「うん、キレイだ。ここで誓えば、信じるだろう?」
「…何を誓うって?」
「だから、永河への愛だよ」
 ぞわっ! 全身に一気に鳥肌が立った!
「なっ、どっ、どうしたの? あまりの暑さに、頭やられた?」
「…お前、本当に言うようになったよな。そもそもオレが好きでもないヤツを、側に置くと思っていたのか?」
「だって…僕は僕に自信がないし。そもそも紗神に愛を言われたことなんて、今まで一度もなかったじゃん」
「でも好きだとは言っただろう?」
「…言ったっけ?」
「言った。はじめてセックスした時」
「言ってない! 僕に好きかと聞いただけ!」
「アレ? そうだったっけ?」
 くぅっ! …あの時せめて好きって言ってくれれば、こんなに思い悩むこともなかったのに。
「でも好きかと聞いて、『両想い』って言っただろう?」
「『好き』にはいろんな意味があるの、知らない?」
 嫌味たっぷりに言うも、紗神は肩を竦めただけ。
「何だ。オレはあれから素直になっているし、てっきり両想いだって通じているのかと思ってた」
 …わぁ。分かっていたことだけど、この人、信じられないぐらい自意識過剰だぁ。
「それじゃあ改めて言うよ」
 彼の手には、いつのまにか金の指輪があった。それを素早く僕の左手の薬指にはめた。
「なっ、ちょっと!」
「愛しているよ、永河」
 信じられないぐらい甘い言葉を囁くと、キスしてきた。触れるだけの、軽いキス。だけど…今までで一番優しいキスだった。
「永河は? オレのこと愛しているよな?」
 僕は自分の顔が赤くなるのを感じた。
 答えなんて、一つしかない。
「…うん。愛してるよ、紗神」
 僕はぎゅっと紗神に抱きついた。
「んっ。知ってた」
 どこまでも自信家の人。でもこの人がこうでなきゃ、僕はこんなに強く惹かれなかっただろう。
「あっ、僕も指輪買った方が良いよね?」
「いや、オレはもう自分のあるから」
 そう言う彼の左手の薬指には、すでに金の指輪があった。
「でも…」
「良いんだって。そもそも指輪を買う為にバイトをはじめて、オレの側にいる時間が短くなったらイヤだしな」
 …どこまで先読みする人なんだろう? 
 僕が数秒前まで考えていたことは、全部お見通しってわけか。
「なあ、永河。お前、自分のことを自信なさそうに言うのやめろ」
「それは…」
「謙虚なのは悪いことじゃない。でもオレが選んだお前でも、そう言うのか?」

「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・13

2011.04.19(17:07)

 その後、担任が戻って来て、通知表を渡された。そして少し話しをして、終了。
 クラスのみんなが帰る中、僕は通知表を見た。紗神が勉強を見てくれるおかげで、かなり成績が上がった。
 けれど彼が通おうとしている大学の偏差値には、まだまだ届かない。
 努力はするけれど…滑り止めを本命にしようと決意した。とりあえず、七月いっぱいは日本にいるから、その間に大学を探してと…。
「ふぅん。まあまあ上がったんじゃない?」
「っ! うわぁっ!」
 いつの間にか背後に紗神がいた。僕の通知表を覗き込んでいる。
「まあオレが勉強を見ていれば、当たり前か」
 僕の手から通知表を奪い取り、じっくり見た。
「ちょっ、返してよ!」
「あっ、オレのはコレ」
 彼は視線を外さないまま、自分の通知表を僕の目の前に出した。
 別に見たくはなかった。どうせ予想通りだから。
 でも一応受け取り、中を見る。…やっぱりオール五、生活態度についても非の打ち所が何一つ無いと書かれていた。
「永河、やっぱり生活態度について、『引っ込み思案なのが少々勿体無い気がする』って書かれているぞ? 『もっと自信を持って行動すると良い』って」
「…だから何?」
「だからもっと自信を持てって。地味派手な存在って貴重だが、過ぎると重いぞ?」
 派手派手なキミに言われても…。
「僕は昔からこういう性格なの。今更変えようがないんだよ」
「小さいことにこだわらなきゃいいのに」
「器も小さいもんでね」
 僕はふてくされながら、彼の手から通知表を取り返した。
 そして彼の通知表を差し出す。
「はい、キミは相変わらず素晴らしいことは分かったよ」
「まあな。他に評価のしようもないんだろう」
 彼は自信ありげに笑う。…いろんな意味で、彼の担任は命懸けだろうな。
 遠い目をした時、ふと耳に何か機械的な音が聞こえた。
「ん?」
 思わず上を向くと、その音はヘリコプターの音だと分かる。それがだんだん近付いてくる。
「えっ? 何でウチの高校の近くにヘリが?」
「ああ、来たな」
 彼は通知表をカバンに入れた。
「ホラ、行くぞ」
「どこへ?」
「第二校庭にヘリを停める。とっとと乗り込むぞ」
「はっ? どこへ行くんだよ?」
 僕もカバンに通信票を入れ、窓に視線を向ける。
 すると新真家の家紋が刻まれているヘリが、この校舎の上を通過した。第二校庭は校舎の裏にあって、いつもは運動部が使っている。でも今日は終業式だから、部活は無いワケで…。
「移動しながら話してやる」
 そう言って僕の手を掴み、歩き出す。
「こっ今年は七月いっぱいは日本にいる予定じゃなかったの?」
「そのつもりだったが、この間のお前の言葉を聞いて止めた。このままヘリに乗って、空港へ行く」
「どこに行くの?」
「それは到着してからのお楽しみだ。自家用ジェット機で行くぞ」
 …相変わらず彼の行動にはいろんな意味でついていけない。
 けれど彼に引っ張られては、ついていくしかない。
 多くの人の視線を感じながら、僕はヘリに押し込まれた。
「ちなみに何でヘリ? 車でも良かったんじゃないの?」
「空は渋滞がないからいいだろう?」
 はあ…そうですか。
 呆れるべきか感心するべきか分からないうちに、ヘリは動き出した。
 そして空港へ行き、そのまま自家用ジェット機に乗り込む。
 その間、会話はほぼなかった。
 彼は機嫌の良さそうに鼻歌を歌っていたけれど、話しかけられたくない雰囲気を出していた。
 目的地に到着してから、きっと上機嫌で話してくれるだろう。
 僕は深く息を吐きながら、早く目的地に着くことを願った…けれど。
 何故、教会の前にいるんだろう? 
 本日、快晴。無限に広がる青い空に、白い入道雲。輝く太陽がとても眩しい…。
 そして教会の周囲には透き通るような海が広がっている。今日は凪いでいるおかげで、海からふきつける風がとても気持ちがいい。白い砂浜も、濁りの無い海の中も、テレビで良く見る景色だ。
 そう、前に彼とテレビを見ていた時、ここを紹介する番組を目にしていた。確か海外で結婚式を挙げるのならば、ここがオススメとかいう内容だった。
 彼が気まぐれに見ていたので、僕も隣でぼんやり見ていた。
 ここは一位に選ばれた場所。
 穏やかな気候、そして美しい海を周囲で囲まれた、真っ白で美しく立派な教会。

「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・12

2011.04.18(17:38)

 体の節々が痛んだ。丸一日ベッドから出ず、彼に翻弄されまくった。
「明日は学校なのに…」
 彼の寝顔は無防備で、幸せそうだった。
 …そりゃ満足しただろう。人のことをさんざん大人のオモチャで弄んだんだから…。
 おかげで明日は最低限の動きしかできないだろう。
 まっ、一学期の終業式だし、講堂にはイスがあるから座っていればいいだけだけど…それがまた辛いというのが泣ける。
「はぁ…」
 ため息は幸せが逃げると、誰かが言っていた。
 けれどモヤモヤした気持ちを吐き出せる方法を、僕は他に知らない。
 特に趣味があるわけでも、特技があるわけでもない。
 つまらない人間だ。彼が言うような、謙遜しているワケじゃない。
 確かに運動も勉強もそこそこはできる。だけど自分の器の大きさを分かってしまっている。
 だから…だからこそ、彼の側にいる自信がない。
 本当にずっと一緒にいられるのなら、何をされたって良い。
 僕にしか見せない顔を見せてくれるのなら、ずっとここに閉じ込められても構わない。
 …でもそんな生活が、本当にずっと続くとは思えない。
 自分より魅力的な人間なんて、周囲を見回せばいくらでもいる。だから余計に自信が無くなるんだ。
「高校を卒業して、大学も卒業したら…どうなるんだろう?」
 彼の髪をそっと撫でる。
 大学まではいてくれるかもしれない。
 でも社会に出る時はどうなる? 延長してくれるのだろうか? それとも…社会人ともなれば常識を重要視して、今度こそ捨ててくれるだろうか?
 そして僕は…本当はどっちを望んでいるんだろう?



「ふわぁあ…」
 終業式はほとんど寝てた。
 紗神と別のクラスで良かったと、この時ほど思ったことは無い。座る席が離れているおかげで、安眠できた。
「さて、後は担任の話で解散か」
 えっと七月いっぱいは日本にいて、八月は紗神のワガママ…いや希望で海外を巡る旅に出る。
 …ちなみに高校に入学してから、一度も実家に帰れていない。
 両親には紗神が騙し…いやいや、説得しているので、帰れとは言われない。
 まっ、お土産に高い物を贈っているので、両親はそれで満足・安心しているみたいだ。
 昨年はカジノ巡りをさせられ、しばらく金銭感覚がおかしくなった。
 今年はせめて観光地巡りとか、おだやかな所に行って見たい。ムダだと思うけれど、一応言ってみるかな?
 考え事をしながら歩いていたせいで、教室に入る時に女子生徒にぶつかった。
「あっ、ゴメン」
「ううん、こっちこそゴメンね。大祇くん」
 バサバサッと床に本が落ちる。
「スゴイ本の量だね」
「夏休み前に返すのが多くて…」
 散らばった本を拾い集めて、彼女に渡した。
「はい、どうぞ」
 その時、控え目ながらも笑って見せる。このぐらいは社交辞令。
「あっありがとう!」
 彼女は本を受け取ると、すぐに教室を出て行った。しかも早足で。何か顔が赤かった気がするけど、今は夏だからなぁ。
 それに急がないと、先生も戻って来るし。
 ぼんやりそんなことを思いながら自分の席に向かおうとしたところで、物凄い強い視線を感じた。
「うっ…!」
 恐る恐る振り返ると、彼が…いた。廊下の壁に背を付け、こっちを見てニッコリ微笑んだ。
 でも僕には分かる! スッゴク機嫌が悪い笑顔だっ!
 血の気がサーッと下がるも、紗神は背を浮かせてこっちに歩いて来た。
「モてるねぇ、永河。微笑み一つで女の子をオとすとは流石っ!」
 わざとらしい嫌味な言葉に、カッと頭に血が上った。
「なっ…バカなこと言わないでよ! あんなの普通だろう?」
「どの辺が普通なのかオレには理解できないが…。まあお前も理解できないのなら良いか」
 そう言って肩を竦めた。
 …何を言っているんだ? 彼は。そもそも微笑み一つで女の子をオとすなんてワザは、彼の特技だろう。
 しかし言いたいことを言った紗神は、僕に背を向け、自分の教室に戻って行った。
「う~ん…。やっぱり早く動いた方が良いのか。モタモタしているとアレだよなぁ…」
 …何か嫌な感じのする言葉をブツブツ言いながら。
 どっどうしよう…。まだ体がフラつくのに、帰ったら…!
 目の前が真っ暗になりながら、僕は自分の席に座った。

「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・11

2011.04.17(21:14)

「ああっ?」
 うわっ、今まで聞いたことのないぐらいの不機嫌な声。
「なに、永河。お前、出て行くつもりなのか?」
 しかも不機嫌なオーラまで…可視できるところが、また怖い。
「いやっ、僕が出て行くのは、キミが僕を捨てる時だって分かっているさ」
 だから慌てて両手を振って、否定する。
「だからその…高校を卒業を機に、とか言ってくれると、動きやすいというか何と言うか…」
 しどろもどろに言うと、紗神は頬杖をついた。
「小遣いが足りないか?」
「どこが?」
 思わず言い返してしまった。
 彼と暮らすようになってから、僕は一切金に不自由しなくなった。
 それもそのはず。紗神からブラックカードを渡され、リビングに置いてある箱には万札が入れてあり、いつでも好きなだけ持っていけと言われた。どれだけお札を持っていっても、すぐに足された。
 贅沢な暮らしに慣れてしまった自分が怖いぐらいだ。
「それじゃあ家事のこと?」
「それはほとんどキミがしているじゃないか」
 食事や洗濯、掃除などは紗神が進んでしてくれる。僕は手伝う程度だ。
 何でも仕事の合間にやる家事が楽しいらしく、家庭的なのが驚きだ。
「じゃあ何?」
「何って…だからキミが将来、本当に好きな人ができたら、僕なんて邪魔になるだろう? その前に縁を切った方が良いんじゃないかって思ったんだ」
 紗神は呆れたようにため息をついた。
「はあ…。ここまで一緒に居て、何でそういう考えになるのか、不思議なんだけど?」
 ここまでって、まだ一年しか一緒に暮らしていないんだけど…。
「オレはお前を手放す気はないよ。しかもずっとな」
「それもいつまでか分からないじゃないか」
「じゃあ何か? お前はいつ来るか分からない『いつか』の為に、別れると?」
「それがお互いの為だと思うけど…」
「違うだろう? それはお前が怖いから、逃げたいだけだろう?」
「うっ…!」
 ズバリ本音を言われて、言葉に詰まる。
「オレにお前の他に興味を持つヤツができて、いきなり突然捨てられるのが怖い。だから今の内にって、勝手過ぎないか?」
「その言葉、キミにだけは言われたくないんだけど」
「…言うようになったな」
「キミのおかげだよ」
 一年前までの僕なら、こうして彼と言い合うこともできなかっただろう。
 でもこの一年で身も心も彼に鍛えられた。
「はあ~。…大体、お前の体はすでにオレのモンだ。他のヤツじゃ、満足できないだろう?」
「そっそっちの話はいいだろう?」
「よくないだろう? お前のはじめての男だぞ? オレは」
「わ~っわぁあ! 朝っぱらから止めてよ! と言うか、問題をすり変えないで!」
「ちっ」
 あっ危なかった…。危うく彼の策にはまるところだった。
「とにかく、オレはお前を手放すつもりはない。出て行くことも許さない。それで問題は解決だ」
 そう言い切ると、彼は立ち上がった。
「ちょっと待ってよ! それじゃあ話になっていない」
「なってる。後はお前が納得すればいいだけだ」
「なっ…!」
 分かってたことだけど、一方的で強引過ぎる。
「逃げ出そうなんて思うなよ? どこに逃げても必ず探し出してやるからな」
 ニッと笑う彼を見ると、それはあるなと思う。
 彼の持つ力があれば、どこに逃げても見つけ出されるだろう。そして紗神の前に引きずり出されることが、容易に想像ができてしまう。
「…逃げないけどさ」
 それでも離れたい気持ちもある。
 実らない気持ちを抱き続けるには、強い気持ちが必要だ。そしてその強さを…僕は持っていなかった。
「すぐに仕事は終わらせる。オレの部屋で待ってろ。新しいオモチャを買ったんだ。遊んでやるからな」
「うん…分かった」
 それでも彼の言葉には逆らえない。
 ちなみに彼の言うオモチャとは、いわゆる大人のオモチャ。
 僕はもうクセになっているため息をついて、階段を上った。
 


「んんっ…」
 喉の渇きで目が覚めた。
 そして体にかかるずっしりとした重みは…紗神の体か。
 僕は彼を起こさないようにゆっくりと動き、ベッドサイドに置いてあるミネラルウォーターのビンを手に取り、開けて飲んだ。

BL・<ハデな彼に、躾けられた、地味な僕>

  1. 「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・15(04/21)
  2. 「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・14(04/20)
  3. 「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・13(04/19)
  4. 「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・12(04/18)
  5. 「ハデな彼に、躾けられた、地味な僕」・11(04/17)
次のページ