家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」14

2012.02.01(11:17)

―十年後―

「う~ん…」
「…本当に進歩の無いヤツだな。ダメツナ」
 悩むボンゴレボスを目の前にして、リボーンは呆れと感心が入り混じったため息をついた。
 場所はイタリアボンゴレ本拠地。若き十代目・ボンゴレボスの部屋。
 スーツに身を包んだツナは、テーブルに置かれた七個のプレゼントを前にして真剣に悩んでいた。
 時は二月十四日。バレンタインデーである。
 ちなみに七個のプレゼントの中身はチョコレートで、差出人はいずれも守護者達である。
 ソファーに座り、手を組み、ツナは悩みを隠しきれない。
 向かい側に座っているリボーンは足を組んで、コーヒーを飲んだ。
「十年前からオレがうるさいくらい言っただろう? 未だにそこがちゃんとできていないのは、お前の出来が悪いからだな」
「うるさいよ、リボーン。そもそもお前が変なことを言い出さなきゃ、こう毎年毎年悩むこともなかったんだよ」
 チョコを送ってくれた守護者達は、食べた順位を気にするような者達ではない。
 食べたか食べなかったかの方が重要視している。
 なので、食べる順番を悩むことは必要ないのだが、リボーンが十年前に言った言葉のせいで、毎年悩んでしまっている。
 いつもなら貰った順番に食べているのだが、何故か今年に限って全員同じタイミングで届いた。
 わざわざイタリアまで送ってきてくれた。
 ランボにいたっては、わざわざ白バラの花束まで送ってきた。
 十年前の悪夢が、そのまま再現されたようだ。
「まっ、十年来の付き合いだし、今更食った順番を気にするようなヤツ等じゃねーんだから、気軽に食え」
「そんなの言われなくても十分に理解しているよ」
「じゃ、適当に食えよ。食わなかったことの方が、アイツ等傷付くんだからな」
「それも分かってる。だけどな、う~ん…」
 と、悩みを延々繰り返し続けている。
「優柔不断を優しさとは言えないよな」
「…だからな、リボーン。誰のせいでこんなに悩んでいるだと思うの」
 変なおどしかけのせいで、毎年うなっている。
 固まった笑顔で言うと、リボーンは肩を竦めた。
「呪いみたいな言葉吐きやがって…」
「誰がだ。小さなことにグジグジこだわり続けるお前が悪い」
「う~…」
「食わなきゃいけないチョコは他にもあるんだから、とっとと腹くくれ」
 隣の部屋では、絶えず人の出入りする音がしている。
 若きボンゴレボスに送られた、バレンタインのプレゼントが次々と運ばれているのだ。
「いっ今、体の調子が悪いから、食べないって方法は?」
「医者を連れてくるぞ。守護者達が」
「ううっ」
 胃の辺りを押さえながら青い顔をするツナを見て、リボーンは深く息を吐いた。
 そしてスーツのポケットから、小さな箱を取り出した。
 手のひらサイズの小さな四角の箱は、可愛くラッピングされている。
 リボーンは無表情にラッピングを解くと、箱の中身は一粒のトリュフチョコだった。
「ツナ」
「ん? 何だよ、リボー…んんっ!」
 口を開いた途端、何かを入れられた。
 そのまま手で口を押さえられる。
「とりあえず、それ食っとけ」
 間近で言われ、とりあえず食べてみた。
 香り高いカカオと酒の匂いが口の中に満ち、甘さが舌に広がる。
 ツナが食べたことを確認して、リボーンは手を離した。
「コレで悩まずに済むだろ?」
「んっ…。コレ、チョコレートボンボン?」
「ああ、オレの行きつけの酒屋が特別に作ったもんだ。貰いもんだが悪くはないだろ?」
「うん! 美味しかった」
 悩みを解決したおかげか、ツナは笑顔を浮かべた。
「まったく…。他のヤツのを先に食べるって考えは無かったのか?」
「ううっ~ん…。でも守護者のみんなには、いつもお世話になっているから」
「いっつもお前の面倒を見ているのは、オレのような気がするが?」
「うるさいなぁ。文句言う前に、仕事、片付けてきなよ」
「はいはい。ボスの命じるままに」
 リボーンはうやうやしく礼をすると、イヤな笑みを浮かべながら部屋を出て行った。
「ったく…。チョコはやっぱり落ち着いて食べた方が、美味しいよな」
 そう言ってツナは唇を指でぬぐい、その指を舌に乗せた。
「にがっ…!」
 カカオの苦さに、思わず顔が歪む。


 沢田綱吉、二十四歳。
 まだ贈られてくるチョコの意味を、完全には理解していなかった。


〈完〉

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家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」13

2012.02.01(11:14)

 差出人のことも忘れて、思わず手が伸びる。
「まあ食っても平気だとは思うが…ツナ」
「うん?」
「骸のチョコから食べるのか?」
「…えっ?」
 リボーンの一言に、手も思考も一瞬止まる。
「だってお前、こんなに貰っといて一気に全部食えるわけねーだろ?  どれから食べるんだって話だ」
「どっどれからって、そんなに重要?」
「あたりめーだろ。要はお前がどれを一番に食いたかったか、だからな。簡単なわけないだろ?」
「ううっ」
 そう言われると、手が出しづらい。
「特に部下から送られてきたものには、食べた順序で信頼度が分かるってもんだ。物騒なもんには手を付けたがらないのが人間ってもんだからな」
「こういう時にばっか正論言うなよっ!」
「まあとりあえず」
 そう言いつつリボーンは女子から貰った二つのチョコを手に持った。
「この二つ以外のチョコ、どれから食べるんだ?」
「やめてよ、そういう究極の選択! 選んだらお前、絶対本人達に言うだろっ!」
 怒鳴るとリボーンはあっちの方向を向き、口笛などを吹き始めた。
「でっでもさ、オレ、もう昼に京子ちゃんのお兄さんから貰ったチョコ食べたし、それにその後、ヒバリさんにもチョコ大福頂いているから、もう関係無いよな?」
「了平とヒバリが? …さすが年長組は行動が早いな」
「どういう意味だよ」
 変に感心しているリボーンからチョコを奪い返そうとするが、身軽な動きでかわされる。
「だっから、もうそんな順番関係無いだろ?」
「まぁ、今回はそうなるかな」
「じゃあチョコ返せよっ!」
「ん~どうすっかな」
「おいっ!」
 部屋の中をドタドタしていると、再び下の階から声がかかる。
「ツナー、リボーンくん。夕ご飯できたから、下りてらっしゃい」
「あっ、はーい!」
「今行く」
「って、行く前に返せよ!」
「義理チョコにそんなに躍起になるなよ」
「うるさい! ああ、もういい!」
 どんなに追かけようが、リボーンに追いつけるはずもない。
 言葉でも何をどう言おうとも、リボーンの意志は変えられない。
 いい加減、イライラもピークに達してきている。
「今日はもうチョコ食べない! 明日になれば関係無くなるから、明日にする!」
 そう言って音高くドアを閉めて、一階へ下りた。
 残されたリボーンはチョコをテーブルに置き、ため息をついた。
「分かっちゃいねーな。今日みたいなことはこれから毎年繰り返されるんだぞ? その場限りの考え無しの行動は、ボスにとっちゃ致命的な行動ミスになるんだからな」
 それを言ったら言ったで、怒り出すのは目に見えていた。
 だが今ムリに結果を出そうとしても、周囲にも混乱を招くだけかもしれない。
 それに自覚無しの行動ほど、厄介なものもない。
 リボーンはテーブルに置いてある仲間達のチョコを見回した。
「あげたヤツ等は多少は自覚あるみてーだがな。ツナのヤツ、変なところで人の気持ちに鈍いからなぁ」
 深く息を吐くと、下の階から呼びかけられた。
「リボーン! 早く来ないとランボに食われるぞ!」
「ああ、今行く」
 部屋の電気を消し、扉を閉めようとして、再び目に映ったチョコを見て、ふと考える。
「…ボスになった頃、今みたいな状態になったら、アイツはどうするんだか」
 きっと今と変わらず悩むんだろうな、と思うと笑みが浮かぶ。


家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」12

2012.01.30(20:48)

「『わたしはあなたにふさわしい』」
「…えっ?」
「…白いバラの花言葉だ」
 忌々しげに言うと、リボーンはベッドから下りた。
「何かムカツクな。燃やすか」
 そう言うとレオンを火炎放射器に変え、花束に狙いを付けた。
「わーっ! 待った待った! 花に罪はない! 花は悪くないから!」
 必死に叫び、訴えかける。
「あっ、そうだ! オレ、山本達からチョコ貰ってたんだった! リボーンにもって言ってたから、一緒に食べようよ!」
 慌てて注意を逸らすつもりで言うとリボーンの動きがぴたっと止まった。
「山本からか?」
「うん! 他にも義理だけど貰ったんだ! 山本はトリュフチョコを手作りしたんだって。感想聞きたいって言ってたから、リボーンも食べよう?」
「…そうだな」
 レオンを元に戻し、リボーンは再びベッドに座った。
「ちょっと待ってて。今、出すから」
 上手く注意が逸れたことにほっとし、荷物を漁った。
「義理だけど、結構貰えたんだ」
 義理、というよりお礼や友チョコとして貰ったのだが、深く追求されないように言葉を濁す。
「ちょっとパソコンどけるよ」
 パソコンを机の上に移動し、テーブルに貰ったチョコを置いた。
「この二つがクラスの女子から。それでコレがクロームからで、これは獄寺くん。そしてこれが山本から。あっ、あと」
 弁当箱を取り出し、中に入れていたチョコを出した。
「これは京子ちゃんのお兄さんから」
 テーブルに並べて見ると、結構立派に見えた。
 貰った理由と相手はともかく、として。
「ふぅん。お前もなかなかになってきたんだな」
 リボーンはどこか誇らしげに言った。
「なかなかって…。まあ全く貰えなかったってのよりはマシだけどさ」
 クラスの男子の中には、一つも貰えず項垂れていた人がいた。
 何気に並盛中にはアイドルも真っ青の美系の者が多く、そしてその人達の共通の知り合いに自分の名前が浮かぶことが多いのも事実だった。
「分かってねーな。こういうイベントにこそ、ボスへの忠誠心が表れるもんなんだぜ」
「忠誠心じゃないっ! 普通に友情だっ!」
 何かにつけてマフィア関連にしようとするので、油断ならない。
 全力で叫んだ為、肩で息をしていると、一階から呼ばれた。
「ツッくーん! 荷物が届いたわよ!」
「荷物?」
 リボーンと顔を合わせ、立ち上がった。
「ツナ、お前何か頼んでたか?」
「ん~。通販とかオレしないからな。何だろ?」
 首を傾げながら一階に下りると。
「ハイ、これ」
「うん…って、わっ!」
 手渡されたものの大きさと重さにビックリ。
 五十センチ四方の箱。包み紙はどこかのブランドの模様で、プレゼント用にリボンまで付いている。
「差出人は…」
 箱の上にリボーンが飛び乗り、伝票を見る。
「…骸?」
「はっはいっ?」
 以外な名前が出たことに驚いて、思わずのけぞった。
「六道骸だな。このブランドの支店から送ってきたらしいな」
「あら、そう言えばこのブランドって、チョコレートが美味しいところのじゃない。それにこの大きさ。もしかしたら今年限定のチョコの詰め合わせかしら?」
 興味津々といった表情で、母が箱を見る。
「でも一気にこんなに食べたら、ツナ、鼻血出ちゃうからね」
「一気になんて食べないよ! それよりランボに見つかるとうるさいから、二階に持ってくよ」
「分かった。母さんにも後で食べさせてね」
「…害が無かったらね」
 ぼそっと呟き、二階に再び上がった。
「ぜぇぜぇ…」
 最早体力が限界に近い。
 箱をテーブルに置くと、リボーンが箱を開け始めた。
「おっおい! 危ないんじゃないか?」
「危険な気配はねぇし、とりあえず開けて見た方が良いだろう」
 リボーンが言うなら多少は安心かもしれない。
 固唾を呑みながら、行方を見守ることにした。
 リボーンは何のためらいも無く箱を開けていき、そして中身は…。
「わぁ…! すっごーい!」
 驚きの声が出るぐらい、美しいチョコの詰め合わせだった。
 花や家の形の一口サイズのチョコは、芸術品とも言えるほど精巧な作りをしていた。
 香るチョコの匂いも、どことなく上品な感じがする。
「母さんが人気の店って言うだけあるな。すっごく綺麗なチョコ。うまそー」
「ここの店、国内で出来たんだが、確か昨年の世界のチョコレートコンテストの賞に選ばれたとかなんとか」
「へぇ。じゃあ味は確かなんだ」
「だと言う評判だ。獄寺のチョコのブランドとタメはるぐらいはな」
「それってかなり凄いじゃん! うわー、食べたい」


家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」11

2012.01.29(17:36)

 こういう訳の分からなさは、間違いなく子供ランボだ。
「ああなるまで、十年か…」
 ふとバラに口付けしていた大人ランボを思い出し、その過程は長そうだと思った。
 ぎゃあぎゃあ喚きたてるランボを無視し、花を花瓶に入れて、部屋に持って行くと、皆が帰ってきたようだった。
 一階が騒がしくなったので、カバンを置いて階段を下りた。
「あら、ツナくん。帰ってたのね」
「随分遅かったんだな」
「これでも待っていたのよ」
 母に次いで、リボーンやビアンキも一緒だったようだ。
 イーピンはすでにランボと駆け回りはじめている。
「ゴメン、ちょっといろいろあってさ。それよりランボ一人残して買い物に行くなよ。家の鍵も開けっ放しだったよ」
「あらあら、ごめんなさいね。ツナ、すぐに帰ってくるだろうと思って…。ちょっとの間だったから」
「無用心だよ」
 文句を言いながら、買い物袋をダイニングへ持っていく。
「仕方ねーだろ? あのバカウシ、何をやっても起きねーし」
「待ってても時間が過ぎていくだけだったのよ。無駄でしょ?」
「…あっさり切り捨てるなよ、ビアンキ」
 その切れ味に、思わず背筋が寒くなった。
「ホントにごめんなさい。お詫びに今日の夕ご飯、豪華にするから。バレンタインだしね」
 無邪気な母の笑みに、怒りもしぼんでいく。
「はあ…。これからは気をつけてね」
「はいはい。それじゃあできたら呼ぶから」
「うん。部屋にいるね」
「オレも行くぞ」
 そう言ってリボーンが肩に飛び乗ってきた。
「それじゃあアタシはお風呂先に入るわね」
 ビアンキは洗面所へ入っていった。
「じゃあ夕食、楽しみにしてるから」
「は~い」 



 リボーンを肩に乗せたまま部屋に上がり、扉を閉めると深くため息をついた。
「ふぅ…。つっかれたぁ」
「今日は散々だったな、ツナ」
「…どこからどう見ていた?」
 今日は学校でリボーンの姿は見かけなかった。
 そんな余裕は無かったとは言え、見かければすぐに気付いたはずだ。
「さすがのオレも、校舎の中は危険だったからな。校舎の中に付けてあるカメラで観察してた」
 リボーンがそう言って指さした先には、テーブルにノートパソコンが置かれてあった。
 もちろん、自分のではない。
「お前…こういうのって、何て言うのか知っているか?」
 あえて優しく問いかけると、リボーンは布団の上に飛び移った。
「ああ、観察だろう?」
「盗撮の間違いだっ! あるいは覗きっ! どっちも犯罪です!」
「何を今更。犯罪なんて言葉、マフィアの中じゃ無いんだぞ?」
「勝手に抹消するなっ! つーか常識を考えろっ!」
 思わず力の限りツッこんでしまった為、一気に目の前が暗くなった。
「うっ…」
 壁に背を付け、ずるずると座り込んでしまった。
「…さすがに今日は応えたみてーだな。まっ、今日ぐらいは宿題は無しにしといてやろう」
「えっ、ホント?」
「ああ、女性のパワーの凄まじさを知っただけでも、十分に社会勉強になるからな。ただ、学校から出された宿題はやるぞ」
「うん、それは頼む」
 リボーンの勉強のやり方はキツイが、教え方は上手い。
 それにさすがに今日という日のせいか、先生達もあまり宿題は多く出さなかった。
 早めに休めることに、ほっとした。
「ところで、この花束は何だ?」
「ああ」
 リボーンが言っているのが、ランボから貰った花のことをさしていることがすぐに分かって、顔を上げた。
「大人ランボに貰ったんだ。ランボのヤツ、寝惚けてまた十年バズーカ打ったらしくてさ。バレンタインだし、いつも世話になっているからって」
「ふぅん…。それで白いバラか。アイツ…」
 軽くリボーンが殺気立った事に気付き、部屋の奥に移動した。
「えっ、白いバラって縁起が悪いの?」
「ちげーよ。お前、白いバラの花言葉知らねーのか?」
「うん。あっ、でも大人ランボ、リボーンに聞くといいって言ってたっけ。リボーンも同じ気持ちだからって」
 そこまで言って、まさか花言葉がダークなものかと一瞬考えた。
 しかしバラという花はそんな暗いものじゃないと考え直すも、不安は消えない。
「…アイツ、そんなこと言いやがったのか」
「うっうん。でも暗い言葉じゃない、よね?」
 恐る恐る聞くと、リボーンは再び花に眼を向けた。
「白いバラの花言葉は、『心からの尊敬』と『約束を守る』」               
「へっへぇ~。良い言葉だね」
 それで何故リボーンが殺気立つのかが分からない。
 頭に疑問符が浮かぶ中、リボーンは重々しく口を開いた。


家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」10

2012.01.28(18:31)

 きっと女子だったら彼に惹かれて、今日のファンの女の子達のようになっていたかもしれない。
 が、そんなふうに考え事をして油断していたせいで、ふと山本の眼に鋭さが宿ったことに気付くのが遅れた。
 不意に引き寄せられ、頭が山本の肩に当たる。
「やっ山本?」
「チョコレート」
 耳元で山本の声が響き、思わず身が竦んだ。
「えっ?」
「今度はツナ一人分だけ特別に作るよ」
 低い声で囁かれ、背筋に痺れが走る。
「ちょっ…! 声、近いっ」
 腕の中でか弱くバタバタと暴れる自分を見て、山本は苦笑した。
 そしてすぐに表情をいつもの爽やかな笑みに戻し、パッと手を離して一歩後ろに下がった。
「まっ、ツナが気に入ってくれたらの話だけど」
「なっななっ!」
 開放されたのはいいが、なけなしの体力を使ったせいでくたびれてしまった。
「そんじゃ、また明日な!」
 山本は手を振り、笑顔でそのまま店の中に入ってしまった。
 残された自分はしばし呆然としていたものの、人が多くなってきたのに気付き、慌ててその場を離れた。



 そして家に着く頃には周囲も暗くなり、疲れも重く体にのしかかっていた。
「ただいまぁ~」
 くたびれた声で扉を開け、玄関に入ると。
「おかえりなさい。若きボンゴレ」
「…あれ?」
 出迎えてくれたのは、大人ランボだった。
「みんなは? というか、また…」
 いつものことにツッコミを入れようとして、もうそんな体力が残っていないことに気付いた。
「ええ。よりにもよって、今日と言う日にまでですよ」
 苦笑するランボを見て、思わずこちらも苦笑。
「あと、みなさんは買い物に出ています。どうやら昼寝でもしていたらしく、オレはおいていかれたみたいです」
「それで寝惚けてタイムスリップか。こんなにバズーカ連射して、そっちのボスに怒られなかった?」
「今更ですね。五歳児にあんなものを預けた時点で、あちらもある程度予測はしていたでしょうから」
 肩を竦めるランボは、ふと思い付いたように手を打った。
「あっ、そうそう」
「んっ? なに?」
 靴を脱いで上がると、目の前に白いバラの花束があった。
「えっ、何、コレっ!」
「いつも十年前のオレがお世話になっているお礼です。今は日本を離れていたので、外国流ですが」
「がっ外国流って…」
「向こうの国ではチョコレートではなく、花束やプレゼントを贈る習慣なんですよ。なので、コレは若きボンゴレに差し上げます」
 にっこり笑顔で言われ、条件反射的に花束を受け取った。
「あっありがとう。嬉しいよ」
 花束は両手に持っても、溢れんばかりの量だった。
「あっ、ちゃんと十年後の貴方にもプレゼントは贈ってあります。遠い異国の土地でも、オレの心からの気持ちをこめて、ね」
 そう言って意味ありげに微笑み、一輪のバラの花に口付けした。
 外国の映画のワンシーンさながらの仕種に、思わず体が熱くなる。
 何だかんだ言っても、十年後のランボはちゃんと成長している。
 …少々ヘタレなところもあるが、それでも結構頼りになる。
 ………今よりは。
「そう言えば、若きボンゴレは花言葉はご存知ですか?」
「いや、全然」
 素直に否定すると、ランボは困ったようなほっとしたような戸惑いの笑みを浮かべた。
「そうですか。十年後の貴方にも、同じ花束をプレゼントしたんですけど、彼もご存知ないですかね」
「えっと、じゃあ今教えてよ。ちゃんと十年後まで覚えているからさ」
 ランボの表情に少しの罪悪感を感じて、あえて明るく言った。
 しかし当のランボは顎に手をやり、少し考えた。
「ふむ…。いえ、オレからは言えません」
「えっ、どうして?」
「十年前のオレの気持ちではないからです」
「はあ?」
 分からず首を捻るも、ランボは意味ありげに笑うだけ。
「それでも知りたいのなら、リボーンに聞くといいですよ。アイツも同じ気持ちだと思いますから」
 そう言うと、ランボから煙が立ち上った。
「わっ! あっ、五分経ったんだ…」
 何故だか少し名残惜しく感じてしまった。
 しかし煙の中から、きょとんとした五歳のランボを見て、その気持ちも吹っ飛んだ。
「あっ、ツナだ。ああっ、そうだ! ツナ、オレっちの牛乳飲んだだろう!」
「牛乳?」
 言われて少し考え、今朝、リボーンに出会った時に驚いてパンがノドに詰まって、牛乳を飲んだことを思い出した。
「ああ、でもまだ牛乳あっただろ?」
「違うもんね! アレはランボさんの牛乳だったもんね!」


家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」

  1. 家庭教師ヒットマン リボーン!・「バレンタインは大騒動!?」14(02/01)
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