「空に月が輝く時」・18

2011.09.19(01:14)

 さすがは医者の住居…と感心している間もなく、彼の性格が爆発した。
 薄々とは感じてたが、彼はとっても執着心が強い。
 そして一度決めると、絶対に覆さない。
 だから今みたいに予告なく帰宅時間が遅くなると、とんでもないことをする。
 彼の職場はマンションから近いので、定時で帰ってくる彼にはどうしても追い付かない。
 それでもなるべく急いで帰ろうとした。
 しかし、…扉の前で、俺は止まった。
 防音壁なので、音は一切聞こえない。
 でも部屋から漏れ出る異様なオーラが、可視できるのが恐ろしい。
「ううっ…!」
 先に帰ってきているであろう、彼の怒気を感じられる。
 勇気を振り絞り、ドアノブに手をかけた。
「たっただいま帰り…ひぃっ!」
 部屋の中は、惨劇が起こっていた。
 ありとあらゆる物が床に散らばり、そして壁に投げつけられていた。
 朝見たモデルルームのような綺麗な部屋の光景は、すでに過去のものになってしまった。
「…おかえり」
 そして惨劇の場の中心に、彼が笑顔で立っていた。
 …冷気をまといながら。
「すっすみません! 急に仕事が入って、遅くなったんです!」
 カバンを胸に抱えながら、必死に謝る。
 …彼は少しでも予告していた帰宅時間が遅れると、キれて暴れる。
 その後の俺の身に降りかかることは、恐ろしくて誰にも相談できない。
「ふぅん?」
「本当ですって! 兄貴に聞けば、分かりますから」
 足元に気をつけながら、彼に近付く。
 …本当は逃げ出したい。
 けれど逃げて捕まった後は、言葉にできないことをされた経験があるので、絶対に逃げられない。
「…空耶くんの仕事ってさ、結構忙しい上に不規則だよね?」
「まっまあそうですね」
 いつ急な仕事が入るとか、前以って分からないのが辛い仕事ではある。
「もう辞めちゃえば?」
「うっ…!」
 いつかは言い出されるとは覚悟していたものの、実際言われるとキツイ。
「平日は会社終わった後でも連絡来る上に、残業も多い。休みはなかなか取れないから、二人で一緒にいる時間も少ないし」
 …それも言われそうだったから、彼の元に引っ越してくることにしたのに。
「キミ一人ぐらい、僕が養ってあげるからさ。ねっ?」
 彼は俺の頬を両手で包み込み、間近で微笑んだ。
 こっ怖いっ! 
 悪魔どころか、魔王レベルの恐ろしさだっ…!
「でっでも、会社は俺がいなくちゃ成り立たない部分もありまして…かっ改善しますので、勘弁してもらえないでしょうか?」
 動揺のし過ぎで、敬語がおかしくなっている。
 でも直そうと思って、できることじゃない。
「ダメ」
 …彼の気迫が怖過ぎるから。
「八雲には僕から言っておくから。キミは大人しくここで僕を待ってて?」
「えっ…ええぇ~?」
 血の気が引く顔で、笑っても変に見えるだろう。
「うん、そうしな。専業主夫になりなよ、空耶くん」
 …俺も常々自分で自分のことを、執念深いと思っていた。
 自分をフッた男のことを、ずっと思い続けていたからだ。
 でもその相手は、自分以上の執念深さを持っていた。
 八年間、離れていた分だけ、溜まっているのかもしれないが…コレは少々どころか、かなりヤリ過ぎな気がする。
「…櫂都さん、自分で自分の行動、精神科のお医者さんとして見て、どういうふうに思いますか?」
「イかれているよね」
 精一杯の嫌味も、彼は笑顔で応える。
「でもそれってしょうがないんじゃないかな?」
「しょうがない?」
「そっ。だって」
 彼はゆっくりとキスをしてきた。
「恋って人を狂わせる力があるんだから」
「…それって、卑怯な言い方に聞こえますが」
 少しムッとしてしまう。
 愛の告白は、こういう時に言われると異様な力を持つから。
「ふふっ、ゴメンね? 僕もまさかこんなにキミに夢中になるなんて思わなかった」
 そう言って美しい狂人は、優しく抱き締めてくる。
「愛しているんだ、空耶くん。全部、僕の物になって?」
「…本当にズルいですね、櫂都さん」
 愛しい人にそんなことを言われたら、逆らえない。
「―良いですよ。俺の全てをあなたに差し上げます。代わりに、あなたを俺にください」
「良いよ。僕はすでにキミの物だ」
 この言葉は…本気? 
 それとも誤魔化し?
 …いや、どちらでも良い。
 今はただ、目の前に彼がいれば、それで良い。



【終わり】

★最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪

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「空に月が輝く時」・17

2011.09.18(00:08)

「櫂都さん、櫂都…!」
「空耶くん…!」
 彼は一旦動きを止めたが、すぐに奥まで激しく突いてきた。
 先端を残しては、一気に貫かれる行為を何度も繰り返す。
 何度も腰が浮き、その衝撃に眼が眩む。
 そして彼の手の中で、俺の熱が爆ぜた。
「うぁあっ!」
 再び腹の上に飛び散る白い液体。
 俺は二度目の射精に、堪らず腹に力を入れてしまった。
「うくっ…」
 彼の顔が一瞬苦痛で歪んだ。
 すると彼の熱が一番奥で、爆ぜた。
「あっ熱いっ…!」
 中に注ぎ込まれた熱はとても熱くて、腹の中が焼けるかと思うぐらいだった。
 彼は出している間にも腰を動かし、俺の中に注ぎ込んでいく。
「あっ、はぁはっ…ふぅ…」
 全てを出し終えた後、彼はゆっくり眼を開いた。
「だっ大丈夫ですか?」
「それ、僕のセリフだよ」
 彼は薄く笑うと、キスをしてきた。
「んっ…」
「無理させちゃって、ゴメンね? あんまり空耶くんが可愛いものだから、我慢できなくなった」
「櫂都さん、あんまりその…『可愛い』って言われたくないんですけど」
 そもそも男が男に言う言葉ではないと思うし。
「ん~。でもキミには偽らないって誓ったしね」
 …つまり本心から言っているのか。
 本当に厄介な人だ。
「ねぇ、八雲から聞いたんだけど、引っ越すんだって?」
「正確には決まっていませんよ。ただ引っ越したいと思っているだけです」
「なら僕のマンションにおいでよ」
「はっ?」
「僕のマンション、キミ達の職場からそう遠くないし、ここより近いよ。それに部屋も余っているし、ちょうど良いだろう?」
「えっと…」
 話が急展開過ぎて、ちょっとついていけないところが…。
「それにさ」
「なっ何です?」
 イタズラっぽく微笑む彼は、どこか不気味だ。
「好きな人の側には、ずっといたいでしょう?」
「うっ…!」
 そっそれを言われると、何も言えなくなってしまう。
「よし、じゃあ決まり。来週の土曜にでも、引っ越しておいでよ」
「きゅっ急過ぎますよ! 引っ越しの準備期間ぐらいください!」
「そのぐらい、有給取りなよ。今まで使っていない分、貯まっているって八雲が言ってたよ?」
 兄貴、殺す! 
 何でこうもベラベラしゃべっているかなぁ! 
「…って言うか、よく兄貴から俺のことを聞いているんですね」
「うん、やっぱり気にはなっていたからね」
 まあ兄貴からこの人のことを聞いていた俺も俺だから…とは納得できないな、うん。
「はあ…。分かりました。来週は有給を取って、あなたの家に引っ越します」
「本当に良いの?」
「ええ」
 俺はにっこり笑った。
 兄貴のヤツを、仕事に追い込みたいという下心があった。
 俺が会社を休む時、仕事は兄貴に回る。
 今は仕事が忙しい時期、苦労するといい。
 バカ兄貴。
「良かった。あっ、僕は職場変わるから、来週はちょっとバタバタするね」
「あっ、やっぱり辞めさせられたんですか?」
 病院の医院長の娘との婚約がダメになったのだ。
 どんな理由であれ、彼も居辛いだろう。
「いや、自分で辞めたんだ。今のところ、あんまり良くなかったしね。他の病院の知り合いに声をかけられたこともあって、移動することにしたんだ。今度の職場は、空耶くんの会社から近いんだよ」
 …相変わらず世渡り上手な人だ。
「早速明日にでもウチにおいでよ。下見も兼ねて、泊まりに来るといい」
「そう、ですね」
 そして自分のペースに巻き込む人。
 ―それでも良い。
 彼が心から幸せそうに笑うから、俺はそう思ってしまう。
 惚れた弱みというのは、結構苦労するかもしれない。



「ヤバイ、マズイ。マズイ、ヤバイ」
 呪文のようにブツブツ呟きながら、足早に歩く。
 腕時計を見ると、すでに約束の帰宅の時刻から三十分が経過している。
 仕事を終えて、定時で帰れると連絡した直後、取り引き先から急遽連絡が入った。
 しかも内容は急な仕事が入ったとのことで、慌てて人を派遣しなければならなくなり、今まで手間取ってしまった。
 それこそ彼に連絡する暇もないぐらいに…。
「怒ってる…絶対に怒ってる」
 都心に建つ高級高層マンションが、今の俺達の住居だった。
 マンションなのに二階と庭があったことに、俺は呆気に取られた。

「空に月が輝く時」・16

2011.09.17(00:37)

 眼をぎゅっと閉じていると、感覚が研ぎ澄まされてしまう。
 何度も窪みを舐められ、徐々に解れていくのが分かる。
 下半身に力が入らなくなってきているからだ。
 やがて彼の尖った舌先が、ズッ…と中へ入ってきた。
「やっ…!」
 びくっと腰を揺らすも、すぐに掴まれてベッドに押し付けられる。
 僅かに苛立った雰囲気の彼と、眼が合った。
「動かないで」
「だっだって…!」
「動くと酷いよ?」
 いや、あなたの言葉の方が酷いです。
 …とは言えない。
 この状況で言えば、それこそ絶叫を上げることをされてしまう。
 仕方なく、体の力を抜こうと試みる。
 その様子を見て、彼はまた動き出す。
 濡れた窪みに、彼の中指が入っていく。
「ううっ…」
 痛くはないが、慣れない異物感に体に力が入ってしまう。
 指は全てを入れ終えると、ゆるゆると内壁をかき出した。
「あっ、やっ」
 浮かび上がりそうに腰を何とか抑えるも、声が飛び出てしまう。
 やがてもう一本指が増やされ、また一本と、合計三本の指が根元まで入れられた。
「んぐぅ…はっ、あぁっ」
 それまでゆっくりだった指の動きが、だんだんと小刻みに動き出す。
「あっ、そっそれっ…!」
「うん、平気そうだね」
 三本の指の挿入が激しくなり、また角度を変えて入れられても、痛みは感じなかった。
「こんなものかな?」
 …いや、さっき銜えてたのはこんなものではなかったが…余計な言葉は彼を怒らせるだけだと、俺は学んでいた。
 指が一気にズルっと抜かれる。
 そして代わりに窪みに当てられたのは、熱い欲望の塊。
 濡れた窪みと、先走りが出ている先端が触れて、ぐちゅぐちゅと音が生まれる。
 そして窪みが解れると、先端がゆっくりと入ってきた。
「はっ…あああぁ!」
 力が入らない下半身では強く拒絶することも出来ず、そのままズズズッ…と奥へ奥へと侵入してくる。
「ちょっと、櫂都っさん! もう少しっ…ゆっくり…!」
「してあげたいのは山々なんだけど、実はちょっと限界が近かったりして」
 彼は眉を寄せながら苦笑する。
 …もしかしなくても、もう泣き言も哀願も聞き入れられない状況?
 サァーッと音が聞こえるぐらい、血の気が下がる。
 入ってくる熱は、指とは比べ物にならないほどの太さがある。
 それが今、ほとんど無理やり入ってくるのだから、肉体的にもきつかった。
「うっ、ううっ…あっやぁっ…!」
 眼にじんわりと涙が浮かぶ。
 辛く、苦しいからじゃない。
 今まで感じたことのない体感と、そして彼の熱を受け入れているという喜びから、溢れ出している。
 そう、俺は嬉しいんだ。
 彼も夢中になってくれることが…。
 彼は俺の片方の足を掴み上げ、ベッドに付けた。
 そしていきなり腰を動かし、ズンッと奥まで入ってきた。
「あっやぁっ、あーっ!」
 体を捻るも、根元まで差し込まれては逃げようがなかった。
「ゴメン、空耶くん」
 彼の体が下りてくる。
 俺は両手を広げ、受け止めた。
 彼は何度か小刻みに動いた後、体が拒否しないことを感じ取ると、激しく動き出した。
「あっあっ、そんなっ、激しくっ…!」
「ゴメン。我慢できないんだ」
 動きは早急かと思いきや、いきなりズルっと茎の部分が引き抜かれ、くびれの部分だけが残った。
「あっ…?」
 けれどすぐに最奥まで貫かれ、声にならない声が出た。
「…っ!」
 ぎゅっと閉じた眼から、涙の雫が頬を伝った。
 彼はそれを舌で舐め取ると、慰めるように頬に口づける。
 彼と深く繋がったまま激しく揺すられ、思わず背中に回した手を外しそうになる。
 けれど一生懸命にしがみ付いた。
 ―もう二度と、この人と離れたくないから。
「櫂都…さん、好き、です。大好きです…!」
「空耶くん…ありがとう」
 彼は優しく笑い、唇に深くキスをしてくれた。
 キスをしながら、ベッドがギシギシと軋むほど攻め立てられ、もう何も考えられなくなっていた。
 萎えていた俺の熱も、二人の腹の間で再び興奮し始めていた。
「イく時は一緒に、ね?」
 彼の手が再び熱を握り、こすり始める。
「ああっ…櫂都さん!」
 挿入するスピードと同じ速さで愛撫され、頭の中が真っ白になる。
 彼の手の中で、すぐに水音が鳴り始めた。
 彼の熱が俺の中で膨れ上がっていく。
 さっきよりも動きが早くなったのは、彼の先端から溢れ出した蜜のせいだ。
 息もできないほど激しく揺す振られ、俺はただひたすら彼の名前を呼び続けた。

「空に月が輝く時」・15

2011.09.16(00:13)

「ふふっ。濃いのがいっぱい出たね」
 彼は笑いながら、腹に飛び散った白い液体を指ですくい、擦る。
「なぁっ!」
「じゃあ次は僕の番だね」
 いきなり両腕を掴まれ、上半身を起こされた。
「えっ、えっ?」
 訳が分からず眼を丸くする俺の前で、彼は膝を立てて腰を浮かした。
 すると彼の欲望が目の前にっ!
「かっ櫂都さんっ?」
 整った顔立ちと反して、こっちはあまりに男として立派だった。
 …別の意味で顔が熱くなる。
「銜えて」
「…へっ?」
 突然の言葉に、今度は頭の中が白くなった。
「空耶くんの口で、銜えて」
「………」
 返す言葉が、見つからなかった。
 彼は笑みを浮かべているものの、まとう空気から本気ということは読み取れる。
 つまり、目の前の、コレを、銜えろと…。
 …しかも拒否したら、無理やり口の中にねじ込んできそうだ。
 自分の意思があるか・ないかの違いで、やることは避けられないだろう。
 それならまだ、自分の意思がある方が良い。
 俺は半勃ちの彼の熱を両手で掴んだ。
 ずしっと重みを感じ、少し顔が歪んでしまう。
「あの、先に言っておきたいんですが…」
「ん? なに?」
「…全部は入りませんからね」
「やってみなくちゃ分からないだろう?」
「ひっ…!」
 喉の奥から短い悲鳴が出てしまった。
 この人…絶対に入れる気だ。
「どっ努力はします…」
「頑張って」
 いきなり突っ込まれないように、もたついている暇はない。
 口を開き、喉の奥を開くように舌を出した。
「んっむ…」
 裏筋に舌を這わせ、ゆっくりと口の中に入れていく。
 はじめて感じる自分以外のオスの匂いと食感に、軽く目眩を覚える。
 半分ほどで一旦止まり、口の中の唾液を欲望に塗り込める。
 そして喉の奥を閉じないように、少しずつ根元まで銜えた。
「ああ…良い眺めだ」
 彼はうっとりした声で、俺の頭を撫でた。
 それがとても気持ち良くて、喉を開いて更に銜え込む。
「やればできるんじゃないか。良いコ良いコ」
「んんっ、ぐっ」
 舌を伸ばしているせいで、唾液が口の端から流れ落ちる。
 顎も口も痛くなるほど、彼の欲望は膨れ上がっていた。
「後は口の中に出し入れして、僕を気持ち良くさせて」
「ふぁい…」
 とりあえず半分ほどまで抜くと、口の中が楽になった。
 …完全に主導権を握られている。
 でも逆らえない。
 彼が好きだから。
 ようやく体ごと、俺の方を向いてくれているのだから、彼の機嫌を損なうことはしたくない。
 ……というか、できない。
 恐ろしくて。
 深く息を吐くと、俺は頭を動かしはじめた。
「んっんっ。ふっ、んふぅっ…!」
 口を窄め、口の中全体で彼を愛撫する。
 時には喉の奥まで銜え込み、舌を絡ませ、彼の熱を味わった。
「はじめてにしては上手だね」
 彼は俺の髪の間に指を入れ、熱っぽい眼で見下ろしている。
「それだけ僕のこと、求めていると思って良いのかな?」
 口の中は彼の熱でいっぱいだったから、言葉では返事ができない。
 代わりに行為を激しくすることで、答えた。
「…ふふっ、そうなんだ。そんなに僕が好きなんだ」
 彼の声に、喜びと淫靡な色が滲む。
 彼の欲望もしっかりと熱を持ち、勃ち上がっているのが嬉しかった。
 俺のしていることで彼が気持ちよくなってくれるのならと、一心不乱に愛撫を続けた。
「はぁ…。もうそろそろいいよ」
 でもまだイかないまま、彼は腰を引いて欲望を出させた。
「えっ、でも…」
 俺の口からは唾液と、彼の先走りの蜜が流れる。
「イく時は下の方の口で、ね?」
 それってやっぱり…そう、なんだろうな。
 途方に暮れている間に肩を掴まれ、ベッドに押し倒された。
 そして足を大きく開かされ、膝をまげられる。
 下半身が丸見えだが、もう後には引けない。
 彼は太ももに手を添えると、そのまま顔を下げてきた。
 何をするつもりなんだろうと見ていた俺の眼に映ったのは、彼が窪みに舌を這わせているところだった。
「かっ櫂都さんっ? 何をっ…」
「だってココ濡らさなかったら、痛い目見るよ?」
 …彼が言うと、何でこうも現実味があるんだろう?
「だから、大人しくしててね?」
 にっこりと微笑みを浮かべる彼を見て、俺は硬直し、そのまま枕に頭を落とした。
 …逆らえない。
 彼は唾液に濡れた舌を、再び窪みに当てる。
 ぴちゃっ…という水音に、耳を塞ぎたくなってしまう。

「空に月が輝く時」・14

2011.09.15(00:11)

「うん。僕はキミを襲いたくなるほど、求めていたんだね。八年間も離れていたのに、ずっと僕のことを思い続けてくれたキミが欲しかった」
 そう言って俺の指をぺろっと舐める。
「―ダメ?」
「だっダメって…」
 …この人、俺が絶対に拒絶しないことを分かってて誘うのだから、本当に厄介な人だ。
「はっ早過ぎませんか?」
「もう充分だと思うよ?」
 確かに俺の彼への思いは、充分過ぎるほど長い。
「でっでも」
「優しくするから。ね?」
 …目の前で、悪魔が微笑んだ。
 魅了されっぱなしの俺は、頷くしかなかった。



「…やっぱり、シャワーを浴びてからの方が」
「良いよ、このままで。早く空耶くんを味わいたいし」
 そう言って耳を舐められた。
「うっ…」
 すでにお互い服は脱いで、ベッドの上にいる。
 恥ずかしくて仕方ない俺とは違い、彼はここでも余裕たっぷりだ。
「長い間、待たせてゴメンね?」
 優しく微笑む顔が近付いてくる。
 俺は眼を閉じ、唇を薄く開いた。
 ゆっくりと重なる唇は、八年前のキスより甘くて熱い。
 微かに漂うワインの匂いに、改めて酔いそうだ。
 口付けは深くなり、彼の舌が開いた唇の隙間から入り込んでくる。
「んんっ…」
 舌先で上顎や頬の裏側を舐められると、欲望が火を持つように熱くなった。
「ふふっ。可愛いのは相変わらずだね」
「…二十六の男に言うセリフじゃないですよ」
 十代の頃ならまだしも。
 それに俺は童顔じゃないし。
「僕のすることに、いちいち反応してくれるところが可愛いって言ってるの」
 そう言って顔にキスの雨を降らせる。
「僕に夢中なのが、本当によく分かるよ」
 言わなくても通じているのなら、待たせないでほしかった。
 でも…この人には時間が必要なんだ。
 自分の心と、そして自分という存在を向き合う為には。
 俺は彼の背中に腕を回した。
「なら、もっと夢中にさせてください」
「…最上級の誘い文句だね」
 彼はニッと笑うと、俺の下半身に手を伸ばした。
 すんなりと伸びた綺麗な手が、俺の欲望に絡みつく。
「うっ…」
「キスだけでこうなっちゃうなんて、本当に空耶くんは僕のことが好きなんだね」
「何を今更…!」
「ふふっ。嬉しいよ」
 彼は本当に嬉しそうに笑うから、こんなことも許してしまう。
 彼の手が、上下に動き出した。
「ああっ…」
 彼の首筋に顔を埋めながら、足を開く。
「うん、良いコだ」
 その行動に気を良くしたのか、淫らな手の動きが早くなる。
「んんっ…はぁはっ、あっ…!」
 切ない声が喉の奥から漏れ出てしまう。
 中心がしっかりした硬さを持ち始め、上を向く。
 そしてくちゅくちゅという水音が耳に届くと、顔が一気に熱くなった。
「うぐぅ…!」
「可愛いねぇ。―たまらないな」
 ふと彼の声が、欲情する。
 顔を上げると彼と眼が合い、そのまま貪るようにキスをされた。
「ぅんむっ」
「んっ…ふぅ、んっ」
 お互いの甘い吐息が混じり合う。
 彼はもう片方の手で、胸の突起をいじりはじめた。
「んあっ、ちょっ、櫂都さん!」
「ここも可愛いね。食べたくなっちゃう」
 彼の眼が情欲の色を浮かべていた。
 顔がそのまま下りて、突起を口に含んでしまう。
「あっ、やあっ」
 はじめて感じる刺激に、頭の中がクラクラする。
 彼は唇で吸い上げたり、舌で転がしたりとしている間にも、俺の欲望を絶えず愛撫し続けた。
 すでに先端からは先走りが出ていて、彼はそれを手で欲望に塗り付けていく。
 おかげで滑りはよくなり、動きも早くなった。
「あっ、ああぁっ! 櫂都っさん、もう…!」
 先端が腹に付くぐらい、すでにいっぱいいっぱいになっている。
「いいよ、出して」
 彼の手が欲望のくびれで止まり、指の腹で先端の割れ目を強く擦られると、眼がチカチカした。
「あっ、ダメっ。出るっ…!」
 刺激が欲しくて、腰を無意識に振ってしまう。
 彼はスッと眼を細め、親指の爪を割れ目に強くくいこませた。
「やああっ!」
 高まった快感が、一気に外に放出される。
 二人の腹の間に飛び散る白い液体、そして濃いオスの匂いに顔が真っ赤に染まる。
「あっ、ああ…!」
 急激に頭の中が冷えていくのに、体は火照ったまま。
 羞恥心で頭の中まで真っ赤に染まりそうだ。

BL・<空に月が輝く時>

  1. 「空に月が輝く時」・18(09/19)
  2. 「空に月が輝く時」・17(09/18)
  3. 「空に月が輝く時」・16(09/17)
  4. 「空に月が輝く時」・15(09/16)
  5. 「空に月が輝く時」・14(09/15)
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