Girls Kiss・「お嬢様とのキス」

「わたし、あなたのことが好きですわ」
「ありがと!」
 にこーとお互いに微笑み合う。
 彼女とはいつもこうだった。
「さっ、お弁当食べよ!」
「はい」
 彼女のお手製のお弁当を昼休み、二人っきりで中庭のベンチで食べる。
 これもいつものこと。
 うちの学校は私立で、小学校から大学までのエスカレータ式。
 彼女とは小学2年生の時に知り合って、もう8年の付き合いになる。
 うちの学校でもトップを競うほどの資産家のお嬢様で、成績も優秀で、美人。
 そんな彼女と友達なのが、あたしの自慢。
「うん! 今日もお弁当、美味しいよ」
「ありがとうございます。あなたにそう言っていただけるのが、一番嬉しいですわ」
 中学に入ると、彼女がお弁当を作ってきてくれるようになった。
 なのでありがたく、頂いています。
「でもさ、毎朝大変じゃない?」
「そんなことございませんわ。あなたに喜んでいただけることを考えて作っているので、とても楽しいんですの」
「そお?」
 ちなみにお茶も彼女特製。美味しい♪
 でも…ふと考える。
 彼女はモてるし、いずれはあたしのこの場所も、どこかの男の子に取られてしまう。
 そう考えると…ちょっとさみしい。
「ねっねぇ」
「はい? 何でしょう?」
「その…あたしが邪魔になったら、いつでも言ってね!」
「えっ?」
 あたしはさみしさを隠して、明るく振る舞った。
「ホラ、キミはモてるでしょう? いつか彼氏が出来たら、遠慮無く言ってね! あたしはちゃんと引くからさ」
 明るく言ったつもりだったけど…彼女の表情が暗くなる。
「それは…ありませんわ」
 あっ、許婚とかいるのかな?
「ごっゴメンね。何かあたし、空回っちゃったかな?」
「いえ、そうではなく…」
 彼女は頬に手を当て、少し首を傾げた。
 ううっ…。可愛いなぁ。絵になるよ~。
「…わたしがあなた以外を選ぶことなんて、ありえないという意味ですわ」
「………はい?」
「ですから、殿方なんて選びません。わたしはあなたが好きだと、以前から言っていますでしょう?」
 ほっ本気だったの!?
 てっきり社交辞令かとばかりっ…!
 それとも天然?
「すっ好きって、そおいう好き?」
「はい、恋愛感情の好きですわ。ずっとあなたが好きでしたの。気付きませんでした?」
 満開の花のような笑みで言われても…。
「でっでもどのぐらいの好きなの?」
 高鳴る胸を押さえつつ、聞いてみた。
 …本当は期待していたのかもしれない。
 彼女はにっこり笑って、あたしの頬に触れて…優しくキスした。
 甘くて、柔らかくて、あたたかな彼女の唇。
 頭の中がぽやっとする。
「…ご確認できて?」
「できました。しっかり」
 顔が真っ赤になっていることだろう。
 彼女は微笑みながら、あたしの顔を優しく手で包んだ。
「今度のお休みに、わたしの家に来てくださいな」
「良いケド…遊ぶの?」
「いえ、ご紹介したいんです。両親に、あなたのことを」
 ………それって、もしかしなくても………。

<終わり>

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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

クリスマスのキス・<Girls Kiss>

「クリスマスだ、クリスマスだ!」
 そう言いながら、リビングルームをクリスマスパーティー用に飾り付けるのは、まだ小学4年生の私の従姉妹。
 高校2年生の私の眼には、彼女は眩しく映る。
 純粋で素直で、可愛い。
 見ていると顔がニヤけてしまう。
 お互い一人っこで、家が隣同士のせいか、私達はまるで実の姉妹のように接してきた。
 クリスマスである今日、お互いの両親は仕事で夕方まで帰って来ない。
 その間に、私と彼女の二人で、リビングルームをクリスマスパーティー用に飾り付けることにした。
「お父さんとお母さん、おっきなケーキ、買ってきてくれるかなぁ?」
「そうね。それにウチの父さんと母さんも買ってくるでしょうから、いっぱいケーキが食べれるわね」
「わーい! 嬉しいな♪」
 そう言って満面の笑みを浮かべる彼女は、本当に可愛い。
 私が男の子だったら、絶対に放っておかないだろう。
 …まあ実際、彼女に声をかけてくる男の子はいるみたいだけど。
「ねぇ、おねえちゃんの欲しい物ってなに?」
 クリスマスツリーに飾りつけながら、ふと真剣な声で尋ねられて、ちょっとビックリ。
「んっん~。まあ何でもいっかな?」
 本音を言えば、最新型の携帯電話とかパソコンとか欲しいけど、小学生に言うには現実味がありすぎる。
「アンタこそ、何が欲しいの?」
 逆に私が尋ねると、くるっと振り返ってきた。
 その顔はあまり見たことのない真剣な表情で、何か高い物でも言われるのかと思った。
 けれど彼女は飾り付ける手を止め、私の元へやって来た。
 だからいつものように、しゃがんで両手を広げて、抱き締めてあげる。
 このコが近付いて来た時には、こうやって抱き締めるのがクセみたいになっていた。
 彼女は私の首に手を回して、ぎゅっとしがみついてくる。
「あたし、ずっと欲しい物があるんだ」
「うっうん…。それ、おじさんとおばさんに言ったの?」
「ううん。だってお父さんとお母さんじゃ、ムリだから」
 稼いでいる二人がダメとなると…何だろう?
 まさか二次元の物とか?
 いやいや、今時のコはそこまで夢見がちではないだろう。
 それに彼女だってほんわかしているけれど、世の中の厳しさは分かっている。
 時々、私よりも大人びたことを言うし…。
「あたし、ね」
 顔を上げた彼女の顔は、僅かに赤く染まっていた。
「おねえちゃんが欲しい」
「…えっと、流石にそれは厳しいわね」
 彼女は先に産まれてしまっているから、後から産まれるのは弟か妹しかない。
「やっぱり、ダメ?」
「ダメってことじゃないけど…。えっと、ホラ。年上の血の繋がった女性なら、私がいるから、それで我慢してくれない?」
 妥協案を口にしてみると、彼女は首をかくっと横にする。
 …まあ安い妥協案だよね。
 言っている私でさえ、そう思う。
「ん~。それって、どういう意味?」
「えっ? だからホラ、姉が欲しくても、あなたが先に産まれちゃっているから…」
「ああ、そういう意味だったんだ」
 えっ? 違ったんだろうか?
「あたしが欲しいのは、姉じゃなくて、おねえちゃん自身なの」
 そう言って、彼女は小さな唇を私の唇と合わせた。
「~~~っ!?」
 ちゅっと軽く音を立てて、彼女の唇は離れる。
 けれど私は自分の頭の中で、何かがボンッ!と破裂する音が聞こえた。
「あたし、おねえちゃんが大好きなの。だから将来、お嫁さんになりたい」
「えええっとね。あの、ね。女の子同士じゃ、結婚できないのよ」
 混乱している私が言えたのは、そんな常識的でつまらない返答だった。
「それ知ってる。けどあたしが結婚したいと思えるのは、おねえちゃんだけなの」
 そんな大きな瞳をうるうるさせながら言わないで!
 彼女が生まれた時、妹が生まれたと思うぐらい嬉しかった。
 だからめいっぱい可愛がって育ててきたけど…まさかこんな思いをもたれていたなんて!
 どうする?
 ここでハッキリ断ると、絶対に彼女を傷付ける。
 …それだけはイヤだ。
 彼女の悲しむ顔は、見たくない。
「おねえちゃんはあたしのこと、嫌い?」
「そんなワケないでしょ!」
「じゃあ好きなんだよね? 嬉しい! あたし達、両想いなんだ!」
 嬉しそうに抱き着いてきた彼女を受け止めながらも、私の混乱は更に酷くなる。
 なっ何かこのコ、計算していない?
 私が否定することなんてしないと分かっていて、強引に話を進めている気がする!
 だとしたら……天性の小悪魔だ。
 何せ可愛いし。
 自分がモテることも、自覚しているだろう。
 その魅力を使って迫ってくるなんて…末恐ろしいコ。
「ねぇ、ダメ?」
 舌足らずの甘ったれた声で、耳元に囁かれる。
「だっダメって言うか…。そんな関係にならなくても、私達は従姉妹でずっと一緒にいられる関係じゃない?」
「ヤダ!」
 しかし彼女は愛らしく拗ねる。
 ああもう…本当に可愛いんだから。
「おねえちゃんの一番じゃなきゃ、ヤダ! 他の人なんて好きになっちゃダメ!」
 …しかも女王様タイプでもあった。
「おねえちゃんにはあたしだけを見て、思っててほしいの! それがいけない?」
「いけなくはないけど…」
 どんなに逃げようとしても、彼女は必死に追い縋ってくる。
 ならまあ、今だけなら良いかもしれない。
 今の私はフリーだし、彼女ほど夢中になっている人もいない。
 まあ彼女だってもう少し大人になれば、男の子に目が向くかもしれないし。
 今だけのことだと思って、彼女に付き合っても良いか。
 …何せ可愛いコだし。
 メロメロになっちゃうしな。
「…はぁ。分かったわ。それじゃああなたが飽きるまで、付き合ってあげる」
「あたし、絶対に飽きないもん! …でも嬉しい! あたしが大きくなったら、二人でお揃いのウエディングドレスを着ようね!」
「ははっ…。そうね」
 最早乾いた笑いしか出てこない。
 ウエディングドレスかぁ。
 確かに彼女は大人になったら美人になるだろうし、着ている姿は見てみたい。
 けれど私は…7歳の年の差って、成長するにつれて、大きくなるんだよね。
 思わず遠い目をしてしまう。
「あっ、そうだ。あたし、おねえちゃんにあげる物があったんだ」
 そう言ってスカートのポケットから2つのリボンを取り出し、ツインテールにつける。
「へへっ。おねえちゃんには、あたしをプレゼントしてあげる」
 んがっ!?
 それって私の両親が若い頃に流行ったフレーズ…一体どこで知ったんだか。
 呆然としている姿を見て、彼女が不安そうに表情を曇らせる。
「おねえちゃん…嬉しくない?」
「…ハッ! うっううん! 嬉しいわよ! ありがとう」
 正気に戻った私は、微笑んでみせる。
「えへへ。…ねぇ、おねえちゃん」
 再び顔を近付けてきた彼女の仕草で、何を望まれているのか、気付いてしまう。
 …ああ、本当に小悪魔な女の子だ。
 成長するのが怖いようで、楽しみ。
 複雑な思いを抱きながら、今度は私の方から彼女にキスをした。


<終わり>
☆ステキなクリスマスをお過ごしください!

バレンタインのキス

「う~む…。何が良いんだろうな」
 わたしはお菓子の本を見ながら、思わず眉をしかめる。
 わたしには恋人がいる。
 その…同性の、女の子の恋人だが。
 家が隣同士の幼馴染で、告白は彼女の方からだった。
 わたしのように引っ込み思案で固い性格とは違い、彼女は明るく奔放だった。
 彼女のおかげで、わたしは一人にならずに済んだ。
 だから彼女から告白された時も、嬉しかった。
 男女問わず人気がある彼女が、わたしのことを1番好きだって言ってくれたことが…。
 恋人になって最初のバレンタイン。
 毎年、何かしらチョコレート菓子を作ってあげてはいたけれど、恋人ともなればまた話は別!
 本屋でバレンタイン特集のお菓子の本を買って、家に帰って熟読するも…何にしたらいいか、迷いっぱなしだ。
 …いっそ本人に直接聞いてみようか?
「いや、それじゃあサプライズというものがなくて、アイツはイヤがるだろうな…」
 何事もハデ好きだし。
 とは言え、長い付き合いのせいか、ほとんどのお菓子は作ってしまった。
 クッキー、マシュマロ、ケーキ、プリン…チョコが付くお菓子はほとんど作り尽くしてしまったのがイタイ。
「いっそ和がからんだのが良いかな」
 最近の流行だし、アイツは甘い物なら何でも好きだしなぁ。
 ああ、とっとと決めて材料を早く買いに行かなくちゃ。
 それにラッピングも。
 …手間隙かかるけど、心が躍る。
 素直に楽しいと思える。
 しかし、悩みもある。
 それは…。
「いやー、まいったねぇ。こんなに貰っちゃった♪」
 …コイツは本当にモテる。
 だからバレンタインも、たくさんチョコを貰うんだ、毎年。
 せっかくわたしの部屋に呼び出したのに、彼女の持ってきた荷物は他の人から貰ったチョコがたくさん。
「あっ相変わらずスゴイな。食べ過ぎるなよ?」
「分かってるって。でも呼び出されて貰うのはめんどくさいけどさ、送りつけてくるってのも厄介だよねぇ。荷物受け取るのに、家にいなきゃなんないしさ」
「…あっ、そ。じゃ、もう帰ったら?」
「わあっ! ウソウソ! 家には家族がいるから、大丈夫! ねっ、それよりさ」
 スススッとわたしにすり寄って来る。
「アンタからのチョコは?」
「コレだけあるんだから、いらないんじゃないか?」
「わぁん! イジワル言わないでよぉ。今日、アンタのチョコを1番最初に食べようと思って、何にも食べてないんだから」
「…それって朝食抜いてきたってことか?」
「うん、そう」
 涙目で訴えかけてくる彼女を見て、思わずため息がもれた。
「分かった。ちょっと待ってろ」
「うん♪ 待ってる」
 彼女を部屋に残し、わたしは台所へ向かった。
 …いざ作ってみると、結構難しかった今年のチョコ。
 それでも食わせないワケにはいかないだろう。
 深呼吸をして、お盆に乗せて部屋に戻った。
「おっお待たせ」
「うん! 今年のバレンタインは何?」
 キラキラと輝く笑顔の彼女の前に、わたしは置いた。
「今年はチョコ大福に挑戦してみたんだ。大福も好きだろう?」
「うっれしー! もちろん、アタシはアンタの作るものなら何だって好きだって」
 満面の笑顔でそう言うと、彼女はとっとと食べはじめていた。
 3つも作ったのに、あっという間に食べて、食後の抹茶ミルクを美味しそうにすすっている。
 相変わらず良い食べっぷりだ。
「今年も美味しいバレンタイン、ありがとね」
「はいはい。…そう言えば、お前からは?」
「あっ、ちゃんと用意してあるよ」
 そう言ってバックの中から、小さな包みを取り出した。
「はい、コレ。美味しいって評判の店から買ったの」
「ありがとな」
 ラッピングが小さいながらもキレイで可愛い。
 彼女は流行に敏感だから、きっと美味しいところのをわざわざ買って来てくれたんだろう。
 彼女はあんまり料理が得意じゃないから。
「ねっねっ、開けて見てよ」
「分かった分かった」
 ラッピングを傷付けないように、そっと丁寧に開けた。
 5個入りのチョコレートだ。
「わあ、可愛い!」
 バラの花を模したチョコは、真っ白から黒いチョコが色を変えて並んでいる。
「コレ、味によって色が変わってるんだ。白いのがホワイトチョコ、黒いのがビターチョコ」
「じゃあ真ん中がミルクかな?」
 茶色のバラを掴んで食べてみると、甘くも舌触りの良いチョコが溶けた。
 カカオの良い匂いが、口の中いっぱいに広がる。
「うん、美味しい! ありがとな」
 笑顔で言うと、彼女は照れた笑みを浮かべた。
「えへへ。アタシはアンタと違って、手先器用じゃないからさ。美味しい店探すの、苦労したよ」
「こっちだって作るの苦労したさ。和の洋菓子なんて、はじめて作ったし」
「でもスッゴイ美味しかった。やっぱり愛情がたっぷりだからかな?」
「なっ! …しっ知るか! そんなの」
 そっぽを向くけど、顔が赤くなるのは隠せない。
 わたしは箱に手を伸ばし、ホワイトチョコを取った。
 そして口に入れると。
「…ねぇ」
「ん?」
 思わず顔を上げると、彼女の顔が…間近にあった。
「なっ…んっ!」
 避けるヒマなく、唇が重なった。
 口の中のチョコが、溶けて彼女の口に移る。
「んんっ!」
 …甘い。溶けそうなほど、熱くて甘い。
 ホワイトチョコって、こんなに甘かったっけ?
 ぼ~っとした頭でそんなことを考えていると、彼女の唇が離れた。
「…うん。やっぱり甘くて美味しい♪」
「なっなっなななっ!」
 口をパクパクさせていると、彼女はぎゅっと抱き着いてきた!
「くふ♪ 大好きだよ!」
「そっそれを早く言えっ!」
 と言うか、言葉が先だろう! フツー!
「いやぁ、あんまり美味しそうにチョコ食べるからさ。それに何か誘われているっぽかったし?」
「わたしは普通に食べてただけだ! お前、バカだろ!」
「うん。アンタにメロメロなんだもん♪」
 そう言ってまた抱き着いてくる。
 わたしは恐る恐る彼女の背に腕を回した。
「…わたしだって…」
「うん?」
「わたしだって、お前のこと…」
 ガシッと頭を掴み、間近で見つめた。
「大好きだ! バカっ!」
「んむっ!」
 わたしをこんなにも積極的にさせるのは、お前だけなんだからな!



<終わり>

スケベなキス

 ウチの高校は女子校。
 まあそれはあたし自身が望んで選んだのだから、文句なんてあるはずがない。
 昼休み、中庭で昼食を食べながら、キャッキャとはしゃぐ生徒達をじっと見る。
「女の子って良いよねぇ。柔らかいし、良い匂いするし。甘やかしてくれるし、優しいし」
 ぼんやり呟くけれど、隣に座る女の子の目がピクッと動いた。
「…アンタ、そのスケベ発言、いい加減にしたら?」
「あたしは素直な性格だから。思ったことを口に出しているだけ。あなたは聞きたくないなら、離れたら?」
「なっ!? どっどこでお昼を食べようと、自由でしょうがっ!」
「まあ確かにね」
 もそもそとサンドイッチを食べながら、再び女の子達に視線を向ける。
「あっアンタってさぁ」
「ん?」
「その…女の子が、好きなの?」
「…ん~、そうだねぇ。女の子も、好きだよ」
 男の子も別に嫌いなワケじゃない。
 ただやっぱり、女の子の方が良いな~って思っちゃうだけ。
「れっ恋愛対象はどっちなのよ?」
「どっちも。別にこだわっていないもの」
「…むっつりスケベ」
「別に隠してないよ」
 そう言いつつ、イチゴミルクをズズーっとすする。
「あたしは甘えたい人には甘える主義だから。そこに男女の壁がないだけ」
「そういうの、見ていると節操ないって感じだけど?」
「かもね~」
 気に入る人は一人とは限らない。
 あたしは本当に甘える時に、甘える。
 体にぺったりくっついたり、手を握ったり、背中に抱き着いたり。
 過剰なスキンシップが好き。
 流石に中学生になると、男の子にするのは躊躇うようになった。
 けれど女の子同士なら、別に何も言われないし思われない。
 …少なくとも、隣の彼女以外には。
「…でもアンタ、アタシにはその…スキンシップ、してこないわよね」
 箸を持ちながらも、彼女は何も食べようとしない。
 じっとお弁当に視線を向けているだけ。
「別に深い意味はないよ? ただ、あなたがそういうの、嫌いみたいだからしないだけ」
「べっ別に嫌いとは言っていないじゃない!」
「でもあたしが他の女の子にべったりくっついていると、すっごくイヤ~そうな顔するじゃん」
「そそそそそっそれはっ…!」
 彼女は真っ赤な顔で、あたしの顔を睨んでくる。
「けどこうやって一緒にお昼、食べることもあるよね。ああ、一緒に帰ることも。何でだろうねぇ?」
 あたしはニヤッと笑って見せる。
「くっ…! アンタって絶対性格悪いわよ!」
「自覚している」
 平然と答えると、彼女は静かに俯き、呟いた。
「…でも、そんなアンタのことが好きなアタシは、趣味が悪いわね」
「…ヒドイ言い方だね。まあ趣味が悪いってことは、賛同するよ」
「あっアンタねぇ!」
 再び怒鳴る為にこっちを向いた彼女に、あたしはキスをした。
「…えっ? えええっ!?」
 彼女はお弁当を抱え、後退る。
「でもあたしも好きな人の趣味、悪いかも? やきもち焼きのツンデレ女の子が好きだなんて、流行に流されているかもね?」
「なっなっ…!?」
「でもまあ案外、相性は良いかもよ?」
 彼女はさっきも言った通り、やきもち焼きのツンデレ。
 あたしは少し無気力的な甘えん坊。
 プラスとマイナスが合うことなんて、小学生でも知っていることだ。
「…ほっ本気でアタシのことが好きなの?」
「うん、割と」
「そういう言い方されたら、信じられないって!」
「でもキスしたのはあなたがはじめて。あたし、スキンシップは激しい方だけど、キスはしないもの」
「うっ…」
「それに他のコとイチャつくと、あなたが面白い顔になるから、つい」
「そう言うところも性格が悪いって言うの! あっアタシのことが本気で好きなら、もう…他のコに必要以上のスキンシップはやめてよ」
 と、泣きそうな顔で言われると、ぐらっと来てしまう…。
 人肌に触るのは好きだし、触れるのも好きなんだけどなぁ。
「ああ、じゃあこうしようよ」
「なに?」
「これからはあなた専門でスキンシップをする。他のコにはしない分、あなたにいっぱい触るけど、それでも良い?」
「触るって…どれぐらい?」
「今まであなたが見てきたぐらい?」
「かなり疲れそうなんだけど…」
「じゃあ他のコに…」
「わああっ! 分かった! アタシに触れても良いからっ…ちゃんと約束は守ってよ?」
「分かった。それじゃあ、はい」
 あたしは笑顔で彼女に両腕を広げて見せる。
「えっ?」
「あたしの腕の中においで~」
「ええっ!?」
 彼女は真っ赤になるけれど、少しの間考えて、ため息をついた。
「…分かったわよ」
 そして渋々、あたしの腕の中に来た。
 あたしは後ろから彼女を抱きしめる。
 いわゆるラッコ抱っこ。
「…こうなると、アンタがゴハン、食べにくいんじゃないの?」
「あたしはもう食べ終えちゃった。ん~。やっぱり女の子は良いねぇ」
 髪の毛はサラサラで、良い匂いがする。
 体も柔らかくて、あったかい。
「ちょっと…。あんまり引っ付くと、ゴハン食べれないって」
 ちょっと困った顔で言われるけれど、本気では嫌がっていないことは分かる。
「ゴメン」
 そうしてあたしは腕の力を抜いた。
「んもう…。こんなんじゃ、先が思いやられるわ」
「好きな子には余計にくっついていたいタイプなのかも」
「よく言うわ。ただスケベなだけじゃないの?」
「好きな子相手には、誰だってそうならない?」
「ぐっ…! ふっ普通は黙っているもんなの!」
「じゃあ黙って、くっついてる」
 そう言って彼女に、ぎゅっとくっつく。
「そう言う…意味でもないんだけど。まあ、良いわ。もう」
 あたしの腕の中でご飯を食べる彼女を見て、何か幸せな気分になれる。 
 最初はただ、彼女の反応が面白かっただけ。
 でも今では…一人占めしたいと思うようになった。
 彼女にしか触れたいと思わなくなるのも、時間の問題かもしれない。
 けれど目線はついつい、他の女の子達に向かってしまう。
「あっ、あのコ。色白でちょっとぽっちゃりしているね。触ったら、気持ち良さ…」

 ドコッ!

 と腹に肘鉄が入れられ、続きは言えなかった。
「このどスケベ! アンタはアタシだけを見て、触っていれば良いのよ!」
 涙を浮かべながら振り返った彼女に、キスをされてしまった。
 …うん。やっぱり彼女に夢中になるのは、そう遠くはないな。



<終わり>

タラシとのキス

「アタシ、アンタのこと、大っキライよ」
 アタシはいつも笑顔を浮かべ、彼女に真逆の気持ちを言う。
 けれど言われた彼女は笑みを浮かべ、
「ありがとう。嬉しいよ」
 と言ってくれる。
 彼女は通っている女子校で有名な人。
 どういう風に有名かと言うと、とても美人で頭が良く、また家柄も良い。
 …とここまではまあ良いだろう。
 問題はその次、くしくも4という不吉な数字に当てはまる言葉。

『女ったらし』。

 ……そう。ウチの高校は女子校なのに、彼女は女ったらしで有名だった。
 いっつも周囲にはファンの女の子達がいて、彼女はそれを笑顔で対応する。
 なのでウチの高校では、彼女のファンか、あるいは嫌っているコのどちらかとなっている。
 何せ彼女はいろんな意味で、目立つしなぁ。
 同級生にはおさまらず、上級生や下級生、あるいは女教師にまで関係を持ったとのウワサ。
 なので賛否両論に別れても、これは仕方がないというもの。
 そして非常に残念なことに…アタシまで彼女のトリコとなっていた。
 これでも最初はただの女友達だった。
 入学して教室に入って、たまたま席が隣同士だったので、一番最初に仲良くなった。
 …彼女が女ったらしとしての姿を現すまで、そう時間はかからなかったな。
 だけど不思議と嫌悪感は無かった。
 それどころか、ウワサになった女の子達を羨ましくも思ってしまった。
 けれど…彼女は一度付き合った女の子達とは、長く続かない。
 飽きたらすぐに捨ててしまうからだ。
 それでも彼女は、毎日絶えず愛の告白をされる。
 弄ばれて、最後は捨てられると分かっていても、抑えきれない気持ちがあるんだろう。
 そういうコ達を羨ましくも思う。
 だってアタシは勇気がない。
 一時、良い夢を彼女は見せてくれるだろう。
 けれど突然終わりを告げられたら、きっと壊れてしまう。
 そしたらもう、友達にも戻れない。
 そう思ったアタシは、毎日おかしなことを言い始めた。
 彼女のことが好きで好きでたまならないのに、『大キライ』と言ってしまうこと。
 それこそ『好き』って言いたい時ほど、『大キライ』と言ってしまう。
 しかも満面の笑顔で。
 でも彼女は何も言わない。
 突然おかしな行動をしてきたアタシに、何の疑問も抱かないみたいに、受け入れている。
 普通、キライって言われて、喜ぶ人なんていないんだけどなぁ。
 それでもアタシ達はいつも一緒にいる。
 …何なんだろう、この関係は。
 彼女はアタシの奇行を受け入れ、それでも一緒にいてくれる。
 アタシも…どんなに苦しくても離れようとしない。
「…ねぇ、キライって言われて、本当に嬉しい?」
 だから思いきって聞いてみる。
「そうだね。好きって言われるよりは、刺激的かな?」
 …余裕の笑みで、返されてしまいました。
 分かっていたけど、精神的にも彼女の方が上だ。
「でもアンタなら、好きも嫌いも同じ回数、言われていると思うんだけど…」
「まあね。でもキミにキライって言われるのは、そうイヤじゃないんだ」
「…何でよ?」
 アタシだったら、彼女にキライって言われたら落ち込むほどショックを受けるのに。
「さて…。マゾなのかな? キミに対しては」
 それは冗談なのか、本気なのか。
 お綺麗な顔で言われると、本気っぽく聞こえてしまうから厄介だ。
「…やっぱり大っキライ。そうやって誤魔化してばかり」
「いいや? 珍しく本音だよ。キミには好きだと言われるよりも、キライと言われる方が良いんだ」
「だから何で?」
「うん。つまり、こういうことかな」
 突然、彼女の顔がどアップになったと思ったら……キス、された。
 触れるだけで、すぐ離れるような一瞬のキスを。
「……え?」
 思わず自分の唇に触れる。
 けれど段々お腹のそこからフツフツと怒りがわいてきた!

 バシンッ!

 怒りに突き動かされたまま、アタシは彼女の頬を平手で叩いていた。
「ふざけないでって言ったでしょう?」
 思わず涙まで出てきてしまう。
 なのに彼女は笑うだけ。
「うん、やっぱりこっちの方が良い」
「はあっ!?」
「愛だの恋だのぬるい感情よりも、強く感じる負の言葉や態度の方が良いと言っているんだよ」
「アンタって…本当にマゾなの?」
「キミだけに、ね」
 肩を竦め、彼女は微笑む。
 …片方の頬が、痛々しく腫れてきた。
 ジンジンと痛むのは、アタシの手も同じ。
 アタシは彼女を叩いた方の手で、今度は優しく赤くなった頬に触れた。
「…アンタのことはキライだけど、顔は好きよ」
「それはどうも」
 彼女はまるで猫がすり寄るように、手に頬を付けてくる。
「アンタは…いろんなコと付き合っているけど、本気で好きになったことはあるの?」
「さぁね、忘れてしまったよ。ああ、でも今は自分を嫌っているコが身近にいてくれるから、何だか安心するんだ」
「何で安心なんかするのよ?」
「好きもキライも一瞬のウチに終わってしまったら、つまらないだろう? その点キミは、しぶとそうだし」
「終わらせているのはアンタの方じゃない!」
「ん~。でも近くにいれば、相手の気持ちも何となく分かるじゃない? わたしは終止符を打っているだけに過ぎないよ」
 それはつまり…彼女に近付いてきているコたちは、あまり本気ではないってこと?
「でも…本気で好きになってくれたコだって、いたんじゃないの?」
「まあね。でも長くは決して続かないだろうよ。彼女たちはわたしを通して、良い夢を見ているに過ぎないんだから」
 それは何となく、理解できる。
「じゃあアンタは自分を犠牲にして、女の子達の夢を叶えているってワケ?」
「そこまで善人じゃないよ。わたしはわたしで、楽しんでいるからね」
 …悪魔め。
 イヤらしい笑みを浮かべやがって。
「だから良いところで終わらせる。お互い、一番良い方法だろう?」
「なら何でアタシには嫌われていたいのよ?」
「愛情よりも、負の感情の方が強いって言っただろう? それに長続きもする。できれば一生、キミには嫌われていたいと思うよ」
 彼女は……怖がっているんだ。
 アタシの秘めたる気持ちを知っていて、それを受け入れたら、いつか終わりを迎えてしまうと思っている。
 それを怖がってて、なら逆の言葉を言われた方がいいだなんて…。
 アタシ達は気付かなかったけれど、本当は似た者同士だったのかもしれない。
 深くため息をつき、アタシは真っ直ぐに彼女のを見上げた。
「強くなりましょう」
「えっ?」
「アタシもアンタも、本当の気持ちのままに生きられるように、強くなるの」
 このままじゃいけない。
 逃げてばかりでは、何も解決しない。
「少しずつ…ちょっとずつでも良い。強くなって、真っ直ぐに生きてみましょうよ」
「でも…」
 彼女の目が、不安そうに揺れる。
 彼女の生き方は決して褒められるものじゃないけど、周囲が押し付けてきたというのもある。
 だから今度は、アタシが彼女を引っ張らなければならない。
「アンタだけじゃない。アタシも一緒に頑張るから」
「キミもかい?」
「ええ。…アタシも弱いから。逃げてばかりいるのにも、ちょっと飽きてきたわ」
 苦笑を浮かべると、彼女は弱々しく笑う。
「…そうだね。じゃあ強くなったら、キミは何してくれる?」
「ご褒美を要求するの?」
「そりゃあそうだろう。引っ張り込んだのはキミの方だし」
「そうねぇ…」
 アタシは腕を組んで考えた後、思い付いて顔を上げた。
「―分かったわ。アンタが強くなって、アタシも強くなったら、ご褒美をあげる」
「二人一緒にか。それなら頑張れそうだな。で、ご褒美の内容は?」
 イタズラっぽく笑う彼女。
 アタシは顔を真っ赤に染めながら、言う。
「今度はアタシから…キスしてあげる」
「アハハ、それは嬉しいねぇ。じゃあその時、わたしへの本当の気持ちも一緒に伝えてくれるかい?」
 やっぱりコイツ、知っていたな!
「分かったわよっ! その代わり、本気で頑張りなさいっ!」



<終わり>
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Author:sakura
 現在はフリーシナリオライターとして活動しています。活動記録を掲載していきたいと思っています。「久遠桜」の名前でツイッターもしていますので、よければそちらもご覧ください。仕事の依頼に関しては、メールフォールでお尋ねください。

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