フリーのシナリオライターとして活動しています
「クリスマスだ、クリスマスだ!」
 そう言いながら、リビングルームをクリスマスパーティー用に飾り付けるのは、まだ小学4年生の私の従姉妹。
 高校2年生の私の眼には、彼女は眩しく映る。
 純粋で素直で、可愛い。
 見ていると顔がニヤけてしまう。
 お互い一人っこで、家が隣同士のせいか、私達はまるで実の姉妹のように接してきた。
 クリスマスである今日、お互いの両親は仕事で夕方まで帰って来ない。
 その間に、私と彼女の二人で、リビングルームをクリスマスパーティー用に飾り付けることにした。
「お父さんとお母さん、おっきなケーキ、買ってきてくれるかなぁ?」
「そうね。それにウチの父さんと母さんも買ってくるでしょうから、いっぱいケーキが食べれるわね」
「わーい! 嬉しいな♪」
 そう言って満面の笑みを浮かべる彼女は、本当に可愛い。
 私が男の子だったら、絶対に放っておかないだろう。
 …まあ実際、彼女に声をかけてくる男の子はいるみたいだけど。
「ねぇ、おねえちゃんの欲しい物ってなに?」
 クリスマスツリーに飾りつけながら、ふと真剣な声で尋ねられて、ちょっとビックリ。
「んっん~。まあ何でもいっかな?」
 本音を言えば、最新型の携帯電話とかパソコンとか欲しいけど、小学生に言うには現実味がありすぎる。
「アンタこそ、何が欲しいの?」
 逆に私が尋ねると、くるっと振り返ってきた。
 その顔はあまり見たことのない真剣な表情で、何か高い物でも言われるのかと思った。
 けれど彼女は飾り付ける手を止め、私の元へやって来た。
 だからいつものように、しゃがんで両手を広げて、抱き締めてあげる。
 このコが近付いて来た時には、こうやって抱き締めるのがクセみたいになっていた。
 彼女は私の首に手を回して、ぎゅっとしがみついてくる。
「あたし、ずっと欲しい物があるんだ」
「うっうん…。それ、おじさんとおばさんに言ったの?」
「ううん。だってお父さんとお母さんじゃ、ムリだから」
 稼いでいる二人がダメとなると…何だろう?
 まさか二次元の物とか?
 いやいや、今時のコはそこまで夢見がちではないだろう。
 それに彼女だってほんわかしているけれど、世の中の厳しさは分かっている。
 時々、私よりも大人びたことを言うし…。
「あたし、ね」
 顔を上げた彼女の顔は、僅かに赤く染まっていた。
「おねえちゃんが欲しい」
「…えっと、流石にそれは厳しいわね」
 彼女は先に産まれてしまっているから、後から産まれるのは弟か妹しかない。
「やっぱり、ダメ?」
「ダメってことじゃないけど…。えっと、ホラ。年上の血の繋がった女性なら、私がいるから、それで我慢してくれない?」
 妥協案を口にしてみると、彼女は首をかくっと横にする。
 …まあ安い妥協案だよね。
 言っている私でさえ、そう思う。
「ん~。それって、どういう意味?」
「えっ? だからホラ、姉が欲しくても、あなたが先に産まれちゃっているから…」
「ああ、そういう意味だったんだ」
 えっ? 違ったんだろうか?
「あたしが欲しいのは、姉じゃなくて、おねえちゃん自身なの」
 そう言って、彼女は小さな唇を私の唇と合わせた。
「~~~っ!?」
 ちゅっと軽く音を立てて、彼女の唇は離れる。
 けれど私は自分の頭の中で、何かがボンッ!と破裂する音が聞こえた。
「あたし、おねえちゃんが大好きなの。だから将来、お嫁さんになりたい」
「えええっとね。あの、ね。女の子同士じゃ、結婚できないのよ」
 混乱している私が言えたのは、そんな常識的でつまらない返答だった。
「それ知ってる。けどあたしが結婚したいと思えるのは、おねえちゃんだけなの」
 そんな大きな瞳をうるうるさせながら言わないで!
 彼女が生まれた時、妹が生まれたと思うぐらい嬉しかった。
 だからめいっぱい可愛がって育ててきたけど…まさかこんな思いをもたれていたなんて!
 どうする?
 ここでハッキリ断ると、絶対に彼女を傷付ける。
 …それだけはイヤだ。
 彼女の悲しむ顔は、見たくない。
「おねえちゃんはあたしのこと、嫌い?」
「そんなワケないでしょ!」
「じゃあ好きなんだよね? 嬉しい! あたし達、両想いなんだ!」
 嬉しそうに抱き着いてきた彼女を受け止めながらも、私の混乱は更に酷くなる。
 なっ何かこのコ、計算していない?
 私が否定することなんてしないと分かっていて、強引に話を進めている気がする!
 だとしたら……天性の小悪魔だ。
 何せ可愛いし。
 自分がモテることも、自覚しているだろう。
 その魅力を使って迫ってくるなんて…末恐ろしいコ。
「ねぇ、ダメ?」
 舌足らずの甘ったれた声で、耳元に囁かれる。
「だっダメって言うか…。そんな関係にならなくても、私達は従姉妹でずっと一緒にいられる関係じゃない?」
「ヤダ!」
 しかし彼女は愛らしく拗ねる。
 ああもう…本当に可愛いんだから。
「おねえちゃんの一番じゃなきゃ、ヤダ! 他の人なんて好きになっちゃダメ!」
 …しかも女王様タイプでもあった。
「おねえちゃんにはあたしだけを見て、思っててほしいの! それがいけない?」
「いけなくはないけど…」
 どんなに逃げようとしても、彼女は必死に追い縋ってくる。
 ならまあ、今だけなら良いかもしれない。
 今の私はフリーだし、彼女ほど夢中になっている人もいない。
 まあ彼女だってもう少し大人になれば、男の子に目が向くかもしれないし。
 今だけのことだと思って、彼女に付き合っても良いか。
 …何せ可愛いコだし。
 メロメロになっちゃうしな。
「…はぁ。分かったわ。それじゃああなたが飽きるまで、付き合ってあげる」
「あたし、絶対に飽きないもん! …でも嬉しい! あたしが大きくなったら、二人でお揃いのウエディングドレスを着ようね!」
「ははっ…。そうね」
 最早乾いた笑いしか出てこない。
 ウエディングドレスかぁ。
 確かに彼女は大人になったら美人になるだろうし、着ている姿は見てみたい。
 けれど私は…7歳の年の差って、成長するにつれて、大きくなるんだよね。
 思わず遠い目をしてしまう。
「あっ、そうだ。あたし、おねえちゃんにあげる物があったんだ」
 そう言ってスカートのポケットから2つのリボンを取り出し、ツインテールにつける。
「へへっ。おねえちゃんには、あたしをプレゼントしてあげる」
 んがっ!?
 それって私の両親が若い頃に流行ったフレーズ…一体どこで知ったんだか。
 呆然としている姿を見て、彼女が不安そうに表情を曇らせる。
「おねえちゃん…嬉しくない?」
「…ハッ! うっううん! 嬉しいわよ! ありがとう」
 正気に戻った私は、微笑んでみせる。
「えへへ。…ねぇ、おねえちゃん」
 再び顔を近付けてきた彼女の仕草で、何を望まれているのか、気付いてしまう。
 …ああ、本当に小悪魔な女の子だ。
 成長するのが怖いようで、楽しみ。
 複雑な思いを抱きながら、今度は私の方から彼女にキスをした。


<終わり>
☆ステキなクリスマスをお過ごしください!
スポンサーサイト

【2011/12/24 14:06】 | <Girls Kiss>シリーズ
トラックバック(0) |
「う~む…。何が良いんだろうな」
 わたしはお菓子の本を見ながら、思わず眉をしかめる。
 わたしには恋人がいる。
 その…同性の、女の子の恋人だが。
 家が隣同士の幼馴染で、告白は彼女の方からだった。
 わたしのように引っ込み思案で固い性格とは違い、彼女は明るく奔放だった。
 彼女のおかげで、わたしは一人にならずに済んだ。
 だから彼女から告白された時も、嬉しかった。
 男女問わず人気がある彼女が、わたしのことを1番好きだって言ってくれたことが…。
 恋人になって最初のバレンタイン。
 毎年、何かしらチョコレート菓子を作ってあげてはいたけれど、恋人ともなればまた話は別!
 本屋でバレンタイン特集のお菓子の本を買って、家に帰って熟読するも…何にしたらいいか、迷いっぱなしだ。
 …いっそ本人に直接聞いてみようか?
「いや、それじゃあサプライズというものがなくて、アイツはイヤがるだろうな…」
 何事もハデ好きだし。
 とは言え、長い付き合いのせいか、ほとんどのお菓子は作ってしまった。
 クッキー、マシュマロ、ケーキ、プリン…チョコが付くお菓子はほとんど作り尽くしてしまったのがイタイ。
「いっそ和がからんだのが良いかな」
 最近の流行だし、アイツは甘い物なら何でも好きだしなぁ。
 ああ、とっとと決めて材料を早く買いに行かなくちゃ。
 それにラッピングも。
 …手間隙かかるけど、心が躍る。
 素直に楽しいと思える。
 しかし、悩みもある。
 それは…。
「いやー、まいったねぇ。こんなに貰っちゃった♪」
 …コイツは本当にモテる。
 だからバレンタインも、たくさんチョコを貰うんだ、毎年。
 せっかくわたしの部屋に呼び出したのに、彼女の持ってきた荷物は他の人から貰ったチョコがたくさん。
「あっ相変わらずスゴイな。食べ過ぎるなよ?」
「分かってるって。でも呼び出されて貰うのはめんどくさいけどさ、送りつけてくるってのも厄介だよねぇ。荷物受け取るのに、家にいなきゃなんないしさ」
「…あっ、そ。じゃ、もう帰ったら?」
「わあっ! ウソウソ! 家には家族がいるから、大丈夫! ねっ、それよりさ」
 スススッとわたしにすり寄って来る。
「アンタからのチョコは?」
「コレだけあるんだから、いらないんじゃないか?」
「わぁん! イジワル言わないでよぉ。今日、アンタのチョコを1番最初に食べようと思って、何にも食べてないんだから」
「…それって朝食抜いてきたってことか?」
「うん、そう」
 涙目で訴えかけてくる彼女を見て、思わずため息がもれた。
「分かった。ちょっと待ってろ」
「うん♪ 待ってる」
 彼女を部屋に残し、わたしは台所へ向かった。
 …いざ作ってみると、結構難しかった今年のチョコ。
 それでも食わせないワケにはいかないだろう。
 深呼吸をして、お盆に乗せて部屋に戻った。
「おっお待たせ」
「うん! 今年のバレンタインは何?」
 キラキラと輝く笑顔の彼女の前に、わたしは置いた。
「今年はチョコ大福に挑戦してみたんだ。大福も好きだろう?」
「うっれしー! もちろん、アタシはアンタの作るものなら何だって好きだって」
 満面の笑顔でそう言うと、彼女はとっとと食べはじめていた。
 3つも作ったのに、あっという間に食べて、食後の抹茶ミルクを美味しそうにすすっている。
 相変わらず良い食べっぷりだ。
「今年も美味しいバレンタイン、ありがとね」
「はいはい。…そう言えば、お前からは?」
「あっ、ちゃんと用意してあるよ」
 そう言ってバックの中から、小さな包みを取り出した。
「はい、コレ。美味しいって評判の店から買ったの」
「ありがとな」
 ラッピングが小さいながらもキレイで可愛い。
 彼女は流行に敏感だから、きっと美味しいところのをわざわざ買って来てくれたんだろう。
 彼女はあんまり料理が得意じゃないから。
「ねっねっ、開けて見てよ」
「分かった分かった」
 ラッピングを傷付けないように、そっと丁寧に開けた。
 5個入りのチョコレートだ。
「わあ、可愛い!」
 バラの花を模したチョコは、真っ白から黒いチョコが色を変えて並んでいる。
「コレ、味によって色が変わってるんだ。白いのがホワイトチョコ、黒いのがビターチョコ」
「じゃあ真ん中がミルクかな?」
 茶色のバラを掴んで食べてみると、甘くも舌触りの良いチョコが溶けた。
 カカオの良い匂いが、口の中いっぱいに広がる。
「うん、美味しい! ありがとな」
 笑顔で言うと、彼女は照れた笑みを浮かべた。
「えへへ。アタシはアンタと違って、手先器用じゃないからさ。美味しい店探すの、苦労したよ」
「こっちだって作るの苦労したさ。和の洋菓子なんて、はじめて作ったし」
「でもスッゴイ美味しかった。やっぱり愛情がたっぷりだからかな?」
「なっ! …しっ知るか! そんなの」
 そっぽを向くけど、顔が赤くなるのは隠せない。
 わたしは箱に手を伸ばし、ホワイトチョコを取った。
 そして口に入れると。
「…ねぇ」
「ん?」
 思わず顔を上げると、彼女の顔が…間近にあった。
「なっ…んっ!」
 避けるヒマなく、唇が重なった。
 口の中のチョコが、溶けて彼女の口に移る。
「んんっ!」
 …甘い。溶けそうなほど、熱くて甘い。
 ホワイトチョコって、こんなに甘かったっけ?
 ぼ~っとした頭でそんなことを考えていると、彼女の唇が離れた。
「…うん。やっぱり甘くて美味しい♪」
「なっなっなななっ!」
 口をパクパクさせていると、彼女はぎゅっと抱き着いてきた!
「くふ♪ 大好きだよ!」
「そっそれを早く言えっ!」
 と言うか、言葉が先だろう! フツー!
「いやぁ、あんまり美味しそうにチョコ食べるからさ。それに何か誘われているっぽかったし?」
「わたしは普通に食べてただけだ! お前、バカだろ!」
「うん。アンタにメロメロなんだもん♪」
 そう言ってまた抱き着いてくる。
 わたしは恐る恐る彼女の背に腕を回した。
「…わたしだって…」
「うん?」
「わたしだって、お前のこと…」
 ガシッと頭を掴み、間近で見つめた。
「大好きだ! バカっ!」
「んむっ!」
 わたしをこんなにも積極的にさせるのは、お前だけなんだからな!



<終わり>

【2011/10/25 01:13】 | <Girls Kiss>シリーズ
トラックバック(0) |
 ウチの高校は女子校。
 まあそれはあたし自身が望んで選んだのだから、文句なんてあるはずがない。
 昼休み、中庭で昼食を食べながら、キャッキャとはしゃぐ生徒達をじっと見る。
「女の子って良いよねぇ。柔らかいし、良い匂いするし。甘やかしてくれるし、優しいし」
 ぼんやり呟くけれど、隣に座る女の子の目がピクッと動いた。
「…アンタ、そのスケベ発言、いい加減にしたら?」
「あたしは素直な性格だから。思ったことを口に出しているだけ。あなたは聞きたくないなら、離れたら?」
「なっ!? どっどこでお昼を食べようと、自由でしょうがっ!」
「まあ確かにね」
 もそもそとサンドイッチを食べながら、再び女の子達に視線を向ける。
「あっアンタってさぁ」
「ん?」
「その…女の子が、好きなの?」
「…ん~、そうだねぇ。女の子も、好きだよ」
 男の子も別に嫌いなワケじゃない。
 ただやっぱり、女の子の方が良いな~って思っちゃうだけ。
「れっ恋愛対象はどっちなのよ?」
「どっちも。別にこだわっていないもの」
「…むっつりスケベ」
「別に隠してないよ」
 そう言いつつ、イチゴミルクをズズーっとすする。
「あたしは甘えたい人には甘える主義だから。そこに男女の壁がないだけ」
「そういうの、見ていると節操ないって感じだけど?」
「かもね~」
 気に入る人は一人とは限らない。
 あたしは本当に甘える時に、甘える。
 体にぺったりくっついたり、手を握ったり、背中に抱き着いたり。
 過剰なスキンシップが好き。
 流石に中学生になると、男の子にするのは躊躇うようになった。
 けれど女の子同士なら、別に何も言われないし思われない。
 …少なくとも、隣の彼女以外には。
「…でもアンタ、アタシにはその…スキンシップ、してこないわよね」
 箸を持ちながらも、彼女は何も食べようとしない。
 じっとお弁当に視線を向けているだけ。
「別に深い意味はないよ? ただ、あなたがそういうの、嫌いみたいだからしないだけ」
「べっ別に嫌いとは言っていないじゃない!」
「でもあたしが他の女の子にべったりくっついていると、すっごくイヤ~そうな顔するじゃん」
「そそそそそっそれはっ…!」
 彼女は真っ赤な顔で、あたしの顔を睨んでくる。
「けどこうやって一緒にお昼、食べることもあるよね。ああ、一緒に帰ることも。何でだろうねぇ?」
 あたしはニヤッと笑って見せる。
「くっ…! アンタって絶対性格悪いわよ!」
「自覚している」
 平然と答えると、彼女は静かに俯き、呟いた。
「…でも、そんなアンタのことが好きなアタシは、趣味が悪いわね」
「…ヒドイ言い方だね。まあ趣味が悪いってことは、賛同するよ」
「あっアンタねぇ!」
 再び怒鳴る為にこっちを向いた彼女に、あたしはキスをした。
「…えっ? えええっ!?」
 彼女はお弁当を抱え、後退る。
「でもあたしも好きな人の趣味、悪いかも? やきもち焼きのツンデレ女の子が好きだなんて、流行に流されているかもね?」
「なっなっ…!?」
「でもまあ案外、相性は良いかもよ?」
 彼女はさっきも言った通り、やきもち焼きのツンデレ。
 あたしは少し無気力的な甘えん坊。
 プラスとマイナスが合うことなんて、小学生でも知っていることだ。
「…ほっ本気でアタシのことが好きなの?」
「うん、割と」
「そういう言い方されたら、信じられないって!」
「でもキスしたのはあなたがはじめて。あたし、スキンシップは激しい方だけど、キスはしないもの」
「うっ…」
「それに他のコとイチャつくと、あなたが面白い顔になるから、つい」
「そう言うところも性格が悪いって言うの! あっアタシのことが本気で好きなら、もう…他のコに必要以上のスキンシップはやめてよ」
 と、泣きそうな顔で言われると、ぐらっと来てしまう…。
 人肌に触るのは好きだし、触れるのも好きなんだけどなぁ。
「ああ、じゃあこうしようよ」
「なに?」
「これからはあなた専門でスキンシップをする。他のコにはしない分、あなたにいっぱい触るけど、それでも良い?」
「触るって…どれぐらい?」
「今まであなたが見てきたぐらい?」
「かなり疲れそうなんだけど…」
「じゃあ他のコに…」
「わああっ! 分かった! アタシに触れても良いからっ…ちゃんと約束は守ってよ?」
「分かった。それじゃあ、はい」
 あたしは笑顔で彼女に両腕を広げて見せる。
「えっ?」
「あたしの腕の中においで~」
「ええっ!?」
 彼女は真っ赤になるけれど、少しの間考えて、ため息をついた。
「…分かったわよ」
 そして渋々、あたしの腕の中に来た。
 あたしは後ろから彼女を抱きしめる。
 いわゆるラッコ抱っこ。
「…こうなると、アンタがゴハン、食べにくいんじゃないの?」
「あたしはもう食べ終えちゃった。ん~。やっぱり女の子は良いねぇ」
 髪の毛はサラサラで、良い匂いがする。
 体も柔らかくて、あったかい。
「ちょっと…。あんまり引っ付くと、ゴハン食べれないって」
 ちょっと困った顔で言われるけれど、本気では嫌がっていないことは分かる。
「ゴメン」
 そうしてあたしは腕の力を抜いた。
「んもう…。こんなんじゃ、先が思いやられるわ」
「好きな子には余計にくっついていたいタイプなのかも」
「よく言うわ。ただスケベなだけじゃないの?」
「好きな子相手には、誰だってそうならない?」
「ぐっ…! ふっ普通は黙っているもんなの!」
「じゃあ黙って、くっついてる」
 そう言って彼女に、ぎゅっとくっつく。
「そう言う…意味でもないんだけど。まあ、良いわ。もう」
 あたしの腕の中でご飯を食べる彼女を見て、何か幸せな気分になれる。 
 最初はただ、彼女の反応が面白かっただけ。
 でも今では…一人占めしたいと思うようになった。
 彼女にしか触れたいと思わなくなるのも、時間の問題かもしれない。
 けれど目線はついつい、他の女の子達に向かってしまう。
「あっ、あのコ。色白でちょっとぽっちゃりしているね。触ったら、気持ち良さ…」

 ドコッ!

 と腹に肘鉄が入れられ、続きは言えなかった。
「このどスケベ! アンタはアタシだけを見て、触っていれば良いのよ!」
 涙を浮かべながら振り返った彼女に、キスをされてしまった。
 …うん。やっぱり彼女に夢中になるのは、そう遠くはないな。



<終わり>

【2011/10/24 20:18】 | <Girls Kiss>シリーズ
トラックバック(0) |
「アタシ、アンタのこと、大っキライよ」
 アタシはいつも笑顔を浮かべ、彼女に真逆の気持ちを言う。
 けれど言われた彼女は笑みを浮かべ、
「ありがとう。嬉しいよ」
 と言ってくれる。
 彼女は通っている女子校で有名な人。
 どういう風に有名かと言うと、とても美人で頭が良く、また家柄も良い。
 …とここまではまあ良いだろう。
 問題はその次、くしくも4という不吉な数字に当てはまる言葉。

『女ったらし』。

 ……そう。ウチの高校は女子校なのに、彼女は女ったらしで有名だった。
 いっつも周囲にはファンの女の子達がいて、彼女はそれを笑顔で対応する。
 なのでウチの高校では、彼女のファンか、あるいは嫌っているコのどちらかとなっている。
 何せ彼女はいろんな意味で、目立つしなぁ。
 同級生にはおさまらず、上級生や下級生、あるいは女教師にまで関係を持ったとのウワサ。
 なので賛否両論に別れても、これは仕方がないというもの。
 そして非常に残念なことに…アタシまで彼女のトリコとなっていた。
 これでも最初はただの女友達だった。
 入学して教室に入って、たまたま席が隣同士だったので、一番最初に仲良くなった。
 …彼女が女ったらしとしての姿を現すまで、そう時間はかからなかったな。
 だけど不思議と嫌悪感は無かった。
 それどころか、ウワサになった女の子達を羨ましくも思ってしまった。
 けれど…彼女は一度付き合った女の子達とは、長く続かない。
 飽きたらすぐに捨ててしまうからだ。
 それでも彼女は、毎日絶えず愛の告白をされる。
 弄ばれて、最後は捨てられると分かっていても、抑えきれない気持ちがあるんだろう。
 そういうコ達を羨ましくも思う。
 だってアタシは勇気がない。
 一時、良い夢を彼女は見せてくれるだろう。
 けれど突然終わりを告げられたら、きっと壊れてしまう。
 そしたらもう、友達にも戻れない。
 そう思ったアタシは、毎日おかしなことを言い始めた。
 彼女のことが好きで好きでたまならないのに、『大キライ』と言ってしまうこと。
 それこそ『好き』って言いたい時ほど、『大キライ』と言ってしまう。
 しかも満面の笑顔で。
 でも彼女は何も言わない。
 突然おかしな行動をしてきたアタシに、何の疑問も抱かないみたいに、受け入れている。
 普通、キライって言われて、喜ぶ人なんていないんだけどなぁ。
 それでもアタシ達はいつも一緒にいる。
 …何なんだろう、この関係は。
 彼女はアタシの奇行を受け入れ、それでも一緒にいてくれる。
 アタシも…どんなに苦しくても離れようとしない。
「…ねぇ、キライって言われて、本当に嬉しい?」
 だから思いきって聞いてみる。
「そうだね。好きって言われるよりは、刺激的かな?」
 …余裕の笑みで、返されてしまいました。
 分かっていたけど、精神的にも彼女の方が上だ。
「でもアンタなら、好きも嫌いも同じ回数、言われていると思うんだけど…」
「まあね。でもキミにキライって言われるのは、そうイヤじゃないんだ」
「…何でよ?」
 アタシだったら、彼女にキライって言われたら落ち込むほどショックを受けるのに。
「さて…。マゾなのかな? キミに対しては」
 それは冗談なのか、本気なのか。
 お綺麗な顔で言われると、本気っぽく聞こえてしまうから厄介だ。
「…やっぱり大っキライ。そうやって誤魔化してばかり」
「いいや? 珍しく本音だよ。キミには好きだと言われるよりも、キライと言われる方が良いんだ」
「だから何で?」
「うん。つまり、こういうことかな」
 突然、彼女の顔がどアップになったと思ったら……キス、された。
 触れるだけで、すぐ離れるような一瞬のキスを。
「……え?」
 思わず自分の唇に触れる。
 けれど段々お腹のそこからフツフツと怒りがわいてきた!

 バシンッ!

 怒りに突き動かされたまま、アタシは彼女の頬を平手で叩いていた。
「ふざけないでって言ったでしょう?」
 思わず涙まで出てきてしまう。
 なのに彼女は笑うだけ。
「うん、やっぱりこっちの方が良い」
「はあっ!?」
「愛だの恋だのぬるい感情よりも、強く感じる負の言葉や態度の方が良いと言っているんだよ」
「アンタって…本当にマゾなの?」
「キミだけに、ね」
 肩を竦め、彼女は微笑む。
 …片方の頬が、痛々しく腫れてきた。
 ジンジンと痛むのは、アタシの手も同じ。
 アタシは彼女を叩いた方の手で、今度は優しく赤くなった頬に触れた。
「…アンタのことはキライだけど、顔は好きよ」
「それはどうも」
 彼女はまるで猫がすり寄るように、手に頬を付けてくる。
「アンタは…いろんなコと付き合っているけど、本気で好きになったことはあるの?」
「さぁね、忘れてしまったよ。ああ、でも今は自分を嫌っているコが身近にいてくれるから、何だか安心するんだ」
「何で安心なんかするのよ?」
「好きもキライも一瞬のウチに終わってしまったら、つまらないだろう? その点キミは、しぶとそうだし」
「終わらせているのはアンタの方じゃない!」
「ん~。でも近くにいれば、相手の気持ちも何となく分かるじゃない? わたしは終止符を打っているだけに過ぎないよ」
 それはつまり…彼女に近付いてきているコたちは、あまり本気ではないってこと?
「でも…本気で好きになってくれたコだって、いたんじゃないの?」
「まあね。でも長くは決して続かないだろうよ。彼女たちはわたしを通して、良い夢を見ているに過ぎないんだから」
 それは何となく、理解できる。
「じゃあアンタは自分を犠牲にして、女の子達の夢を叶えているってワケ?」
「そこまで善人じゃないよ。わたしはわたしで、楽しんでいるからね」
 …悪魔め。
 イヤらしい笑みを浮かべやがって。
「だから良いところで終わらせる。お互い、一番良い方法だろう?」
「なら何でアタシには嫌われていたいのよ?」
「愛情よりも、負の感情の方が強いって言っただろう? それに長続きもする。できれば一生、キミには嫌われていたいと思うよ」
 彼女は……怖がっているんだ。
 アタシの秘めたる気持ちを知っていて、それを受け入れたら、いつか終わりを迎えてしまうと思っている。
 それを怖がってて、なら逆の言葉を言われた方がいいだなんて…。
 アタシ達は気付かなかったけれど、本当は似た者同士だったのかもしれない。
 深くため息をつき、アタシは真っ直ぐに彼女のを見上げた。
「強くなりましょう」
「えっ?」
「アタシもアンタも、本当の気持ちのままに生きられるように、強くなるの」
 このままじゃいけない。
 逃げてばかりでは、何も解決しない。
「少しずつ…ちょっとずつでも良い。強くなって、真っ直ぐに生きてみましょうよ」
「でも…」
 彼女の目が、不安そうに揺れる。
 彼女の生き方は決して褒められるものじゃないけど、周囲が押し付けてきたというのもある。
 だから今度は、アタシが彼女を引っ張らなければならない。
「アンタだけじゃない。アタシも一緒に頑張るから」
「キミもかい?」
「ええ。…アタシも弱いから。逃げてばかりいるのにも、ちょっと飽きてきたわ」
 苦笑を浮かべると、彼女は弱々しく笑う。
「…そうだね。じゃあ強くなったら、キミは何してくれる?」
「ご褒美を要求するの?」
「そりゃあそうだろう。引っ張り込んだのはキミの方だし」
「そうねぇ…」
 アタシは腕を組んで考えた後、思い付いて顔を上げた。
「―分かったわ。アンタが強くなって、アタシも強くなったら、ご褒美をあげる」
「二人一緒にか。それなら頑張れそうだな。で、ご褒美の内容は?」
 イタズラっぽく笑う彼女。
 アタシは顔を真っ赤に染めながら、言う。
「今度はアタシから…キスしてあげる」
「アハハ、それは嬉しいねぇ。じゃあその時、わたしへの本当の気持ちも一緒に伝えてくれるかい?」
 やっぱりコイツ、知っていたな!
「分かったわよっ! その代わり、本気で頑張りなさいっ!」



<終わり>

【2011/10/23 16:47】 | <Girls Kiss>シリーズ
トラックバック(0) |
「おっそーい!」
「はぁ…」
「アタシが呼んだらすぐ来てよ! じゃなきゃ、アンタにお給料払っている意味ないじゃない!」
 別にアナタから貰っているワケじゃないんですけどね。
「すみません。以後気を付けます」
「そうしてちょーだい。…お茶」
「はい」
 私は言われた通り、彼女の好きな緑茶を淹れる。
 美しく賢い彼女は、ウチの高校の『お姫さま』。
 有名私立校と名高いウチの学校の理事長の血縁者で、自身もすでに会社を経営している。
 そんな彼女に仕えるのが私の仕事。
 1年生の私が、2年生の彼女に仕えるのは中々難しい。
 何せ教室が遠い。
 彼女は特別教室がある棟の一室を占領していて、私の教室はその棟の真向かいにある。
 ケータイで呼び出されても、どんなに急いでも5分はかかってしまうのだが…もう、慣れた。
「どうぞ」
「ありがと」
 長く細い足を組み変え、彼女は緑茶を飲む。
「…うん、相変わらず良い味」
「ありがとうございます」
 彼女に雇われている理由は、実は良く分かっていない。
 元々奨学金を受けて入学してきた私は一般民。
 美しい彼女を見ながら、はじめて出会った時のことを思い出す。
 確か入学式が終わって帰ろうと、校庭を歩いていたら彼女に声をかけられた。
 一般民が入学してきたのが珍しいらしく、見に来たと言っていたな。
 そこで10秒ほどじっと顔を見つめられて、仕える仕事をしないかと誘われた。
 破格の給料の良さに、すぐさまOKした。
 仕事内容は、彼女が呼び出したらすぐに駆けつけること。
 まあ…結構タイヘンだ。
 いきなり休日とか家に帰った後に呼び出されることもあるから。
 でもそういう時は車で(高級車で)迎えに来てくれるしな(送ってもくれる)。
「ちょっと! 何ジロジロ見てんの? アタシの美しさに見惚れた?」
 自信ありげに微笑む彼女は、本当にキレイ。
「はい、お美しいです」
「なっ…!」
 すると彼女は顔を真っ赤にした。
「アンタって子は…。何でそう真顔で言えるのよ?」
「本当のことですから」
「だからぁ」
 彼女はオタオタする。
 その可愛い仕種に、思わず笑みが浮かぶ。
「今度は何笑ってるのよ!」
「あんまり可愛らしいので、つい」
「なーっ!」
 周りの評判では、彼女は『キレイ』で『賢く』て『傲慢』。
 でも可愛い一面もあるのだが、それは私だけの秘密。
「~~~もうっ! アンタってヘンな子ね。アタシがどんだけワガママ言ってもヒかないし」
「はあ…。まあ別に今に始まったことではありませんし」
 実は今、授業中。
 言わば二人とも、サボりだ。
「…どんなワガママもきけるってぇの?」
「はい、ご命令とあらば」
 不思議と彼女に命令されるのはキライじゃない。
 それにワガママそうに見えて、ムリなことは決してさせない。
「じゃあ…命令よ」
「はい」
「アタシにキスしなさい」
 そう言って艶やかに輝く唇を、指でさす。
「…はい?」
「アタシの命令なら利けるんでしょ? キスしてよ。もちろん唇にね」
「はあ…」
 …まあこんな具合に、気まぐれなこともやる。
 でもまあ…イヤ、ではないな。
「じゃあ失礼します」
「へっ?」
 彼女の驚いた顔が間近に見えた。
 顔を寄せれば当たり前、か。
 そのままキスをする。
 甘く柔らかい感触。
 彼女の可愛さが、唇の感触に表れているようだ。
 一瞬だけで、すぐに離れた。
「…これでよろしいですか?」
「~~~っ!」
 彼女は耳まで真っ赤になって、口を手で覆った。
 私は唇に付いたグロスを指で擦った。
「グロス、落ちちゃいましたね。今、拭くものを…」
「ちょっ…待ちなさい!」
 ぐいっと腕を引かれ、私は顔だけ振り返った。
「はい?」
「何でっ、キスしたの?」
「…命令でしたし」
「命令なら何だってきくの?」
「アナタならば、何だってききます」
「ならっ…!」
 彼女はそこで言葉を止めた。
 彼女には珍しく、言うことを躊躇っているようだった。
「…どんなお願いだってきいてくれるのよね?」
「ええ」
「それなら、アタシを愛しなさい」
 顔を真っ赤にしながらも、真剣な表情で命令をしてきた。
 ああ…美しい。
 大輪の赤いバラのような彼女の命令ならば。
 私は彼女の手を取り、膝をついた。
「はい、姫さま。永久に愛を誓います」



<終わり>

【2011/10/22 06:10】 | <Girls Kiss>シリーズ
トラックバック(0) |