フリーのシナリオライターとして活動しています
 普通、恋人キスと言うのは唇にするはず…よね?
 なのにたった一ヶ月前から付き合い始めた彼は、アタシにキスする場所は唇以外の場所。
「なあ、キスして良いか?」
「えっ? …うん、まあ良いけど」
 今はアタシの部屋で、彼と二人っきり。
 まったりのんびりした雰囲気を出していた。
 けれど彼はアタシを後ろから抱きしめていて、その唇が触れているのは首筋。
「ヤダ、ちょっと。くすぐったい」
「ん~。じゃあここは?」
 次にアタシの手首を掴んで、何故か甘噛み。
 …確かにくすぐったくはないんだけどね。
 そして頬、耳、また首といくけれど、唇には触れてこない。
 何でだろう?
「ねっねえ」
「何だ?」
「何でその…唇にキス、してくれないの?」
 ううっ…! 女の子から言うと、恥ずかしい。
 まるで誘っているみたいに、聞こえるだろうな。
 すると後ろの彼は、ニヤっと意地悪な笑みを浮かべる。
「唇にしてほしいのか?」
「と言うより、何で唇以外なのか知りたいの!」
 ちょっと見た目が怖い彼は、けれどアタシをとても優しくしてくれる。
 あんまり口数も多くないけれど、一緒にいて安らぐ人。
 彼がアタシに好意を抱いていることに気付いたアタシは、何となく彼を意識するようになった。
 そしてそれとなーく、付き合わないかと言ってみたら、やっぱりOKだった。
 それは素直に嬉しいんだけど…。
 恋人となってから、彼が言うキスとはずっと唇以外の体の場所。
 いや、別に良いんだけどね。
 キスされるたびに、彼に大事にされているのを感じるし。
 周囲にいる友達は、恋人ができるとあまり間もなく深い仲になってしまうらしい。
 キスなんて、恋人になってすぐにしてしまうコも多い。
 だからこそ、彼のキスはとても大切なものには思えるんだけど…。
「お前さ、キスと言えば唇だけだと思ってる?」
「そんなことはないわよ。頬でも手でも、キスはキスでしょ?」
 彼の唇が体に触れるたびに、くすぐったいけれど甘いしびれを感じる。
 それはきっと、唇だろうが体だろうが同じ。
 だってキスしているのは、アタシの大好きな彼なんだもん。
 まっまあだから、彼が唇にキスするのが嫌ならば、別にそれでも構わないんだけど…。
「キスする場所に意味があるの、知っているか?」
「へっ? …あっ、何となくは」
 確か22ヶ所ぐらい、キスの意味がある体の場所があるみたい。
 日本ではあまり馴染みがないけれど、外国では結構知られているみたいで…。
「って言うか、あなたは知っているの?」
「昔通っていた幼稚園が、そういうのを教えてくれたからな」
 …まず日本系ではないだろう。
「首筋は執着、手首は欲望、頬は厚意、耳は誘惑ってな」
 彼は言いながら、同じ場所に口付けていく。
 なっ何かとんでもない言葉ばかり飛び出てくるけれど…。
 もしかしたら、コレが彼のアタシへのメッセージなんだろうか?
 口数少ない彼が自分の気持ちを伝える方法として、キスを選んだのならば…理解できる。
 でもやっぱり理解できないことが、一つあった。
「…じゃあ、唇にするキスの意味は?」
 顔だけ振り返って彼の顔を真っ直ぐに見ると、今度はあたたかな笑みを浮かべる。
 そして静かにゆっくりと、唇にキスをされた。
「唇はもちろん、愛情だ」
「じゃあ何で今までしなかったの?」
「そりゃあもちろん…」
 そこで彼は言いつまった。
 眼をウロウロと泳がせて、顔色が僅かに赤くなる。
 アレ? これってもしかして…。
「恥ずかしかった、の?」
 アタシが先に言うと、一気に彼の顔色は真っ赤になった。
 …ああ、図星だったのね。
 彼は言葉よりも、態度で分かりやすいタイプみたい。
「…何でお前はいつも、俺より先に言うんだ?」
 それって告白のことも言っているんだろうな。
「だって…何かじれったいもん」
「んなっ!?」
 彼とは実は、中学時代からの知り合いだった。
 付き合い始めたのは、知り合って三年目になってから。
 随分と間があった。
 いい加減、アタシが耐え切れなくなったというのもある。
 お互い気になっていたのに、全然進展がないんだもん。
「あなたの言葉を待ってたら、おばあちゃんになっちゃうわ。だけどキスであなたの気持ちを伝えてくれるのならば、教えて?」
「…ああ、だが覚悟しろよ? キスする場所は、まだまだあるんだからな」
 ぎゅっと抱き締める力が強くなった。
「ふふっ。それは楽しみね。でも一番してほしい場所には、できるだけ多くしてね」
 アタシはニッコリ笑って、彼の唇に指で触れる。
「指先のキスは賞賛、だそうだ」
「じゃあ上手くキスできたことを、褒めているってわけね」
「調子に乗るな!」
 少しむくれた彼が、今度は強引に唇にキスしてきた。
 …こんなふうに彼の愛情に触れられるのならば、どこにキスされても良いと思っていることは、彼には内緒。

<終わり>
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【2017/07/30 15:12】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  短編  キスシリーズ  キス  恋愛  甘々  恋人  告白  学生  
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 それともコレが年上の余裕さなのだろうか?
キス…してほしいです」
 そしていつも負けてしまうのは、アタシが年下だから?
「―良いですよ」
「んんっ…!」
 けれどアタシのワガママを何でも聞いてくれるから、甘えてしまう。
 情熱的なキスに、頭の中まで熱くなる。
 気付けばあの人の膝の上に座っている格好になっていた。
 けれど気にせず、アタシの頬を撫でてくる。
「あなたは本当に可愛いですね。それに優秀でもある。教育のしがいがありますよ」
「…調教、の違いじゃありませんか?」
「ああ、そうとも言えますね」
 あっさりと肯定したよ…。
「もしかして他のメイドにも、アタシと同じことをしています?」
「心外ですねぇ。しませんよ、そんなこと」
 真顔で本気で言っているので、それは信用しよう。
「どうもあなたは誤解しているようですが、こんなに年下の女の子と付き合うのははじめてなんですよ? しかも職場の部下ですし」
「じゃあ何で手を出そうと思ったんです?」
「…それは『何で告白したんですか?』の間違いでしょうに…。んっ、やっぱりありがちですけど、あなたが他の男に取られるのが嫌だったからですよ」
 そう言ってアタシの手を恭しく取り、手の甲に口付けてくる。
 今度はこっちが心外。
「一体いつからアタシに眼をつけていたんです?」
「……『いつから気になっていたんです?』と言いたいんですよね? 答えは残念ながらハッキリとはしていませんが、一緒に働いている時には愛おしい気持ちに気付いていましたよ」
「友達の娘なのに?」
「一応自制はしていましたよ? ですがまさかあなたが告白を受け入れてくれるとは思わなかったので」
「そっそれは…」
 嬉しい―と素直に心から思ってしまったから。
 だから告白を受け入れた。
 恋人になって、甘い関係になって、毎日が楽しく過ごせてしまうほど、アタシもこの人のことが…。
「それは?」
 意地の悪い笑顔を浮かべながら、間近でアタシの顔を見てくる。
「…やっぱり素敵な人だなぁって、憧れの気持ちを持っていましたからね。この人がアタシの恋人になるって考えただけで、嬉しくなっちゃったんですよ」
 ちょっとぶっきらぼうに言って、今度はアタシの方からキスをする。
「ふふっ。なら両想いってことですね」
「…ですね」
 でも正直、いつまで続けられるかは分からない。
 やっぱりお互い、立場がある。
 それにここの仕事も、慣れれば楽しい。
 仕事を辞める気はお互いサラサラないだろうしなぁ。
「では明日にでも、ご主人様に報告しに行きますか」
「何か報告すること、ありましたっけ?」
 ここ最近の仕事を振り返っていると、あの人は苦笑した。
「いえ、そうではなくてですね。仕事ではなく、恋愛の報告をしようかと言っているんですよ」
「……はい?」
 それって今まさに、アタシが考えていたこと。
「でっでも良いんですか? 立場が悪くなったりとかしません?」
 確かに同僚からバラすよりも、雇い主であるご主人様に一番最初に報告した方が良い。
「ウチのご主人様は別に恋愛を禁止していませんからねぇ」
「でっでも同僚達に何と言われるか…」
「気になります?」
 アタシは素直に頷く。
 気になるからこそ、今までこういう秘密の付き合い方をしてきたから。
「―大丈夫ですよ。あなたと付き合っているからと言って、私が何か変わったわけでもありませんし」
「…悪い噂が立つかもしれませんよ?」
「言いたい人には言わせておきましょう。…ああ、でもそれならいっそ、結婚しますか?」
「はあっ!?」
 また突拍子もないことを…。
「別に夫婦で勤めることなんて、いくらでもあることです。恋人という不安定な関係よりも、しっかり夫婦という間柄になれば、悪い噂なんて立ちませんよ」
 …いや、それでも少しは流れると思うけど。
 でも確かに言われてみれば、結婚の方が落ち着くのは早いかもしれない。
「でも…」
「まだ何かありますか?」
 人が悩んでいるのに、額や頬にキスしてこないでほしい…。
 ちゃんと真面目に考えているのに、この人は…!
「ウチの父には、何て報告するんですか?」
 はっきりとした声音で尋ねると、動きがピタッと止まる。
 やっぱりこの人、仕事バカだ。
 そっちのことは考えていなかったんだろう。
「ウチの父はアナタを信用して、ここに働かせているんですよ? それが一年しか経っていないのに、結婚とか言い出したら、怒りそうなんですけど」
「…そっちの問題がありましたか」
 唸りながら、険しい表情を浮かべる姿を見ると、ちょっと可愛いって思ってしまう。
「まっ、そっちはおいおい。何せ二十歳過ぎれば、結婚は自由ですからね」
 確かにそうだけど、でもその言い方って…。
「何かアタシが二十歳過ぎるまで、待っていたって感じの言い方ですね?」
「そっそんなことはありませんよ!?」
 珍しく動揺を見せる。
 アタシは深く息を吐きながら、改めてこの人との未来を考え始めた。
 …でもまずは、ご主人様や同僚、そして両親の報告が先。

―アタシ、この人と結婚します。

 ってね?

<終わり>


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【2017/07/18 01:48】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  キスシリーズ  短編  キス  甘々  恋愛  歳の差  メイド  執事  
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 世の中は『年の差婚ブーム』、らしい。
 テレビで見たけれど、女性は年上の男性を最初の夫として、抱擁力を求める。
 そして男性は年下の女性に、最後の女としての役目を求めると言う。
 …生々しい話だけど、そういうのもアリだと思う。
 そう思ってしまうアタシ自身、年上の男性と付き合っているからかもしれない。
「でも…本当に恋愛として、成り立っているのかなぁ?」
 大きなため息を吐く。
「どうかしましたか?」
 けれど背後からあの人の声を聞いて、背筋をピンッと伸ばす。
「いっいえ、何でもありません!」
 振り返れば、愛おしい恋人がそこにいる。
 今日も執事服が良く似合っていて、思わずニヤけそうになる顔を必死に抑える。
「このお邸は広いですからねぇ。メイドのあなたが掃除するのも大変でしょう」
 四十六歳の彼は、まだ二十三歳のアタシにとても優しい。
 …でもアタシに限ったことではないんだけどね。
「いえ、これもお仕事ですから」
 けれどアタシはニッコリ笑みを浮かべて、箒を持ち上げる。
 今、アタシは一人で庭の掃除をしている最中だった。
「ところで何かご用事ですか?」
「ああ、そうでした」
 あの人は柔らかな笑みを浮かべたまま、アタシの側に来る。
 そして耳元でそっと、
「…今夜、私の部屋に十時に来てください」
「はっはい…」
 低い声で囁かれ、思わず声が裏返ってしまう。
 けれどあの人はにっこり微笑んで、邸に向かう。
「ふぅ…」
 …あの人と恋人になって数ヶ月は経つけれど、こういうのは慣れないなぁ。
「まっ、相手が上手ってことだけど」
 アタシはメイドとして、あの人は執事として、ここに住み込みで働いている。
 大学を卒業したのは良いけれど、就職浪人となってしまったアタシに声をかけてくれたのが、あの人だった。
 最初はメイドなんて…と思っていたけれど、お給料が良かったので、今では自然な作り笑みも得意になってしまった。
 元々ウチの父親とあの人が友人同士で、小さい頃からあの人とは会っていた。
 その頃はまだ、ちょっと渋い感じがするけれど、優しくて気のきく人だなぁ~って思っていただけだった。
 それがこういう関係になったのは、あの人から告白されたから…。
「でも公にはできないしな」
 執事のあの人が、メイドのアタシと付き合っていることは内緒。
 広まれば、絶対よくない噂が流れる。

執事が下っ端の使用人に手を出した―

 何て噂が広まったら、あの人もアタシもここを辞めなくちゃいけない。
 ここのご主人様は世間的にも有名な人だから、悪評がついた後、再就職するのは難しそうだ。
「まあ内緒なのは良いんだけどね」
 あの人はとても人当たりが良くて、老若男女から人気が高い。
 けれど歳が歳だから、アタックしてくる女の子はあまりいない。
 それが安心するところだけど、やっぱり…秘密って辛いかも。
 仕事を終えて、お風呂に入った後、アタシは再びメイド服を着る。
 もちろん、洗ったばかりの綺麗なの、だ。
 寝巻きで邸の中を歩くことは禁止されているし、私服であの人の私室に入るところを見られては、妙な噂が立てられてしまう。
 だからあの人がアタシの部屋に来る時も、執事服。
 …まあそれはちょっと萌えるから良いんだけど。
「何てバカなこと考えている場合じゃないわね」
 もうすぐ十時になる。
 あの人の部屋もアタシの部屋も個室だけど、やっぱり執事であるあの人の方が立派な部屋を与えられている。
「アタシも出世したら、良い部屋を貰えるのかな?」
 そうすれば…あの人も堂々と部屋に来てくれるかもしれない。
 今のままじゃ、どうしたって仕事の延長戦みたいな感じだし。
 あの人の部屋の前で軽く身だしなみを整え、扉をノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
 礼儀正しく部屋の中に入る。
「あれ? まだ着替えていなかったんですか?」
 部屋の中に他に人がいないことを確認して、口調を和らげる。
「ええ。ですが時間はピッタリなので、気にしないで良いですよ」
 執事服を脱ぎかけって…妙に色気があって、参るなぁ。
 …でもアタシがメイド服を脱ぎかけた姿って、ただたんにだらしない感じしかしない。
「さっ、こちらにおいで」
 ベッドに腰掛けて、あの人が手招きする。
 高鳴る胸を押さえながら、アタシは前に進み出る。
 そしてあの人に手を掴んで引っ張られ、思わずその体に抱き着いてしまう。
 …見た目とは反して男らしい体、何度触っても、やっぱり緊張する。
「ふふっ。可愛いですね」
 あの人が浮かべる笑みはいつも見ているもの。
 …けれどその眼に鋭い光が宿っているのを見て、思わず体が熱くなる。
「あっ…」
 あの人の指がアタシの唇に触れる。
「さて、何か言いたそうな顔をしていますね?」
 …イジワル、だ。
 ここでお預けをくらわすなんて。


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【2017/07/18 01:32】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  短編  恋愛  キスシリーズ  キス  執事  メイド  甘々  歳の差  
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「ふぅ…」
 映画を見た後、頭を冷やす意味もあって、近くの公園に来た。
 そこは海から見える夜景が綺麗で、夕暮れ時になるとカップルが多い。
 ボクとセンパイもそうだけど…でも他人の眼から見ると、違うように見えるだろうな。
「今日、疲れた? 何か途中から元気なかったけど」
 同じベンチに座るセンパイが、心配そうにボクの頬を撫でる。
「あっ、と…」
 どう答えようか迷っていると、ふと強い視線を感じる。
 その方向を見ると、男女のカップルがボク達をマジマジと見ていた。
「だっ大丈夫です! なので移動しましょう!」
「えっ、おっおい!」
 センパイの手を掴み、ボクは慌ててその場から離れる。
 ひっ人の目が辛すぎる…。
 別に何も悪いことはしていないのに…。
 …いや、やっぱりボクの格好が問題だ。
「なあ、どうしたんだ? やっぱり変だぞ?」
「すっすみません…。…でもボクといると、センパイが変な眼で見られるのが耐えられなくて…」
「変な眼?」
 ようやく人気が少ない所まで来て、ボクは立ち止まった。
「あの、ボクがこういう…女の子っぽくない格好をしているから、センパイが…その……」
「…ああ、そういうことか」
 センパイはようやく理解ができたように、頷いた。
「すみません…。今度から外で会う時はもっと女の子らしい服装をしてきます」
「別に無理して好きでもない格好をする必要はないんじゃないか? 俺は別にそのままでも良いと思うけど」
 そう言ってセンパイは優しく微笑んでくれる。
 そんなセンパイの優しさが、もっとボクをいたたまれなくさせる。
「…センパイは平気なんですか? 周囲の人から変な眼で見られること」
「う~ん。そうだなあ…」
 センパイは腕を組み、眼を閉じてしばらく考え込む。
 そして答えが出せた時、その表情には笑みが浮かんでいた。
「まあ女の子らしい格好も可愛いと思うけど、俺は普段の格好の方が見慣れているから」
 …センパイの答えを聞いて、ボクは全身から脱力した。
 そうだった…。
 センパイってちょっと天然だった。
「それにしても、そんなに人の目って気になるか?」
「センパイは全く気にしないみたいですね…」
「うん。俺、元からあんまり気にしないタイプだから」
 …だからボクの告白も受け入れてくれたんだろうか?
 思わず疑心にかられて、センパイをじっと見つめた。
 するとセンパイの顔が不意に近付いてきて……唇が、重なった。
「…えっ?」
「えっ? キスしたかったんじゃないのか?」
 間近にあるのは、センパイのきょとんとした顔。
 ボクは突然のことに、呆然する。
「いきなり見つめてくるし、人気のない所に来たから、キスしてほしいのかなって思って」
 センパイは首を傾げる。
 ああ…どこまでも天然な人。
 でもこういう人だから、ボクは惹かれたのかもしれない。
「…じゃあセンパイはずっとこういう男の子っぽい服装のままで、良いと言うんですね?」
「キミが気に入ってしている格好なら、良いと思う。どんなキミだって、可愛いことには変わりないし」
「ううっ…!」
 こういう恥ずかしいセリフも、すんなり出てくるんだから、恐ろしい人だ。
 けれどセンパイに抱きしめられると、今まで抱いていた悩みもくだらなく思えてきた。
 ボクはセンパイと恋人になって、ちょっと神経質になっていたのかもしれない。
 前までなら自分一人のことだし、何ともなかった。
 でもセンパイを巻き込んでしまうのなら…心が苦しい。
 けれど当のセンパイが気にしないと言うのならば、ボクも無理に変わることはないか。
「…ああ、でも男の子同士に見られるのが嫌なんだよな?」
 ふと顔を上げたセンパイが言い出したことに、今度はボクがキョトンとしてしまう。
「ええ、まあ…。でも…」
「ならさ、俺が女の子の格好をすれば…」
「それだけは勘弁してくださいっ!」
 ボクの心からの叫びは、公園中に響き渡った。

<終わり>


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【2017/07/18 01:12】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  キスシリーズ  短編  恋愛  キス  甘々  高校生  先輩  後輩  
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 昔っから、女の子っぽいことが苦手だった。
 女の子は早い段階から、オシャレに興味を持って、可愛く・綺麗になっていく。
 ボクはそういうのを、一歩引いたところから見ている方が楽だった。
 だから制服も女子用のを着るのにちょっと抵抗を感じて、私服の学校を選んだ。
 スカートを履かずに過ごすボクだったけど、私服だらけの学校だとそんなに目立たなかった。
 でも女の子にモテるのは正直ちょっと困ったけど…。
 普通の女の子のように生きるのに抵抗を感じていたボクだけど、何も女の子が恋愛対象だからと言うワケじゃない。
 ただ、苦手だったから。
 髪をショートカットにして、服装もどちらかと言えば男の子っぽかった。
 家族はすでに諦めていたし、ボクはこのまま生きていくことを決めていた。
 でも…こんなボクでも恋をして、受け入れてくれる人が現れた。
 その人が今のボクを良いと思ってくれているのか…本当は心配だ。
「ええっと、それじゃあオムライスとウーロン茶。キミは?」
「えっと…。じゃあサンドイッチと紅茶で」
 喫茶店で向かい合って、ウエイトレスにメニューを注文する。
 …けど何となく、ウエイトレスのボクを見る眼が熱く感じるのは気のせいだろうか?
「今日、良い天気で良かったな」
「はっはい…」
 ボクが敬語を使うのが、彼がボクの通う高校のセンパイだからだ。
 ちなみにボクが1年で、センパイが2年。
 ウチの学校は身に付けている物で学年が分かるということがない為、割と年齢差を気にせず親しく付き合う人が多い。
 ボクとセンパイもそのタイプだった。
 同じ学校の中では会うことも多くて、何度も会っているうちにボクは…センパイに恋をした。
 思いきって告白して、受け入れてもらったのは嬉しいんだけど…。
「まさにデート日和だよな」
「んなっ!?」
 ぼんやりと窓の外を見ながらセンパイは、何気なしに呟く。
 けれど注文した品を持ってきたウエイトレスの動きと表情が、音を立てて固まるのをボクは見てしまった。
 ウエイトレスはそそくさとテーブルに料理を置くと、すぐさま奥へと引っ込んだ。
 ああ……絶対に勘違いされている。
 センパイはボクのことを、ちゃんと恋人扱いしてくれる。
 それは…照れ臭いけれど、嬉しい。
 …でも周囲から見ればその…怪しい関係に見られてしまうことが多かった。
「美味しそうだね。食べようか」
「…はい」
 しかしそんなことは一切気にせず、センパイは料理を食べ始める。
 ボクは食欲が失せてしまったけれど、食べる。
 まあ、いつものことだし…。
 ボクはセンパイと付き合うようになってからも、男の子っぽい格好は止めなかった。
 センパイも特に何も言ってこないし、恋人としての関係に問題はない…とは言えないな。
 今みたいに、周囲に誤解を与えることが多いし…。
「はあ…」
 食べ終わった後、センパイとボクは映画館に向かって歩いていた。
 学校で一緒にいても、学生達はボクの本当の性別を知っているからまだ良い。
 …でも、こういう外だとな。
 ふととある洋服店から、可愛い二人組の女の子達が出てきた。
 そこの洋服店は、可愛い服を売っているので有名。
 女の子達は買ったばかりの服のことで、話が盛り上がっている。
 ボクは自分の格好を見て、ため息をつく。
「ん? どうかした?」
「あっ…と。…こういう服、可愛いなと思いまして」
 ボクはつい、洋服店のショーウインドウを指さした。
 マネキンは可愛い服を着ていて、センパイはそれを見て首を傾げる。
「確かに可愛いな。着てみたい?」
「えっ!? いや、どうせ似合わないんで、いいです。それより早く映画館に行きましょう!」
 ボクはセンパイの腕を掴んで、その場から離れた。
 けれど映画を見ている間にも、ボクの頭の中にはあの可愛い服のことが浮かんでいた。

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【2017/07/18 01:04】 | <Kiss>シリーズ
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