フリーのシナリオライターとして活動しています
「だから…と言うこともないが。お前が女として迫ってきた時は……その延長みたいなもんだと思った」
 …つまりアタシの接触は、過激なスキンシップの一つと思っていたと。
「だけどお前は若いし、未来がある。可能性な無限大だし、俺なんかに構っているのが勿体無いと思ったんだ」
「むっ…」
「外の世界に出れば、お前にふさわしい良い男がすぐに見つかるさ。だから俺ことなんて…」
「むうっ!」
 耐え切れずに叫んだアタシは突然立ち上がり、机に膝を載せて先生の両肩を掴み、くだらないことばかり言う唇を唇で塞ぐ。
「んんっ…! おっおい!」

 ガターンッ

 そのまま先生は背中から床に落ちる。
 あたしは先生が抱きしめて庇ってくれていたから、どこも痛くない。
 …やっぱり優しい。
 そんな先生の上に乗りながら、アタシは何度も先生キスをする。
 最初は抵抗していた先生だけど、途中から力が抜けたようになすがままになった。
 唇がしびれるようになって、ようやくアタシは先生から離れる。
「…お前なあ」
 困り果てた先生の顔、唇はアタシの唾液で濡れていた。
 こういうところが妙に色っぽいんだよなぁ。
「だぁって先生、くっだらないことばかり言うから。アタシはこの恋心を一生のモノにしたい。死ぬ時だって持っていきたいと思っている気持ちを、バカにされたら怒るッスよ」
「うっ…」
 少し怒ったように上から言うと、先生はますます困る。
 そんな先生に、アタシはフッ…と笑いかけた。
「先生、知ってったッスか? アタシ、実は国語が苦手だったッスよ」
「…ああ、そう言えば一年の夏までは六十点台だったな」
「そうッス。でも夏に先生に惚れて、国語の教科書を大事にしたり、何度も読み返したりしたッス。そうすると、少しでも先生に近付けたように思えたッスから」
 そうしているうちに、いつの間にか成績がトップになっていたのだ。
「思い込んだら一途! と言うのがアタシッスからね。…逃がさないッスよ」
 ぎゅうっと先生に抱きつくと、とうとう観念したようにため息を吐く先生。
「…お前には本当に負けるよ」
「じゃあお嫁さんにしてくれるッスか?」
「ちゃんと大学に行くか、就職を決めれば、な」
「うがっ!?」
 …ヒドイ、交換条件。
 本当は専業主婦になりたかったのに…。
「んっ…。じゃあ大学に通って先生の資格を取って、この学校に戻ってくるッス。もちろん、国語の先生として。それなら良いッスよね?」
「お前…俺をクビにさせたいのか?」
「そうなったら、先生は専業主夫になれば良いッス!」
 ニヤッと笑うと、先生は柔らかくあたたかく苦笑した。
「言ってろ」
 そしてゆっくりとアタシの頭を引き寄せ、キスしてくれる。

 ――やっぱり恋愛は一途で、多少強引じゃなきゃね!

<終わり>
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【2017/07/30 12:27】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  短編  キスシリーズ  キス  恋愛  高校生  先生  歳の差  学園    
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「お前、どういうつもりだ?」
「何がッスか?」
「この進路希望だ」
 生徒指導室で、アタシの目の前にいる担任の先生は思いっきり顔をしかめて、アタシが書いた進路希望の用紙をピラピラと振って見せる。
そこに書いてあるのは、

先生の奥さん』

 という心から希望している進路だ。
「ふざけないで、どこの大学でも就職でもいいから書け」
「だーからぁ、本気ッス。アタシの気持ちはずっと先生に言ってたッスよ」
「その口調も止めろ…」
 先生はただでさえくたびれた中年オヤジなのに、今は余計にくたびれ感が出ている。
 先生とアタシが出会ったのは、中学一年の時。
 ウチの学校は共学で中・高一貫、しかも寮住まい。
 かなり厳しい進学校として有名で、アタシなんかは変わり種。
 けれど運動も勉強も上位の方だから、別に文句は言われない。
 …目の前にいる先生以外は。
 先生は国語担当の教師で、中学一年の時、アタシは国語係だった。
 教科の係は各クラス男女一名ずつ。
 先生が使う資料を運んだり、宿題の提出物を回収して渡す役目をする。
 ――が、アタシのパートナーは当時、係をサボってばっかいた。
 成績が思うように伸びなかったのと、アタシを敵視していた為、係の役目を押し付けやがった…!
 でもそのことに気付いた先生が、パートナーを説得してくれたおかげで、何とか役目をこなしてくれるようになった。
 一見はボサ~とした冴えないオッサンだけど、生徒のことをよく見て知っていてくれる。
 そんな先生に惹かれたアタシは、中学一年から先生に迫っていた。
 けれど年齢差が二回りも違ったせいで、最初は子供扱いだった。
 まあ確かに十二歳の女の子に、三十六歳の男が告白されても、懐かれたとしか思えない。
 だから思いきって高校に上がってすぐ、先生の部屋に夜這いに行ったのだ。
 先生は、男先生専用の寮の一階の角部屋だったから、侵入は楽だったなぁ。
 アタシも中等部の頃は二人部屋だったけど、高等部では一人部屋だから、抜け出しても結構バレない。
 だから男子寮と女子寮が離れていても、夜中に密会する恋人は多い。
 アタシと先生のように。
「アタシ、もう先生のせいで傷モノッスよ。責任取ってください」
「真夜中に夜這いしに来た女子高校生が何を言う」
 あっ、怒った。
 まあ確かに最初はそうだったけど…。
「でもそれから三年間は受け入れてくれたじゃないッスか」
「それはお前がいつまでも窓の外にいるからだろう!」
 …おっしゃる通りで。
 でもその気になれば、寮の部屋は空きがあるんだから移動することだってできた。
 それをしなかったんだから、多少なりと脈はあるはず!
「でも先生も無用心ッスよ。窓に鍵かけないなんて」
「寮の敷地で危ないヤツが侵入するとは思わなかったんだ。お前みたいなヤツがいるとは予想外だったがな」
 ヤレヤレといった感じで肩を竦める先生。
「…とにかく、お前は優秀な生徒だ。希望すればどこへだって行けるだろう? ふざけるのもいい加減にして、本気で進路を考えろ」
「何度も言わせないでほしいッス。アタシは先生の嫁になりたいッスよ。…それとも先生はこうやって女子生徒の気持ちを弄んでいたッスか?」

 ゴンッ!

「あいたっ!」
「…お前のその態度といい口調といい…頭の良いヤツはどこかおかしなもんだ」
 おっ女の子の頭にゲンコツを落とすか、普通?
「大体、何で俺なんだ? 遊ぶのもここら辺にしといた方が良いだろう?」
 先生の言葉で、アタシは首を傾げる。
「…まさか先生、アタシに弄ばれていると思っていたッスか?」
「そうじゃない! …ただ、擬似的な恋愛関係だっただけだろう?」
 ムッ!
「何ッスか、それ? アタシは本気ッス! だから先生の部屋に夜毎、通っていたし…」
「それをここで言うなっ!」
 小声で怒鳴って、先生はアタシの口を塞ぐ。
 まあ確かに人気の少なくなった校舎の中とはいえ、誰が通り過ぎるか分からないしな。
「…でもアタシ、ずっと待っていったッスよ? 先生がちゃんと独身で恋人いないことを知ったから、迫ったんだし…」
「そもそも三十過ぎの男に迫るな。俺ももう四十二だぞ?」
「知ってるッス。アタシはもう時期、十八。結婚できるッス」
「親の承諾が必要だろう?」
 …それもごもっとも。
「…じゃあ先生は何でアタシに付き合ってくれたんッスか? 遊びだったら遊びだったと、言ってほしいッス」
 ウソ、本当は言ってほしくない。
 けれど切るのならば、バッサリ切ってほしい。
 変な期待を持たせずに、背中を押してほしいと思うアタシはワガママだな。
 案の定、先生は困り顔で腕を組んで、ため息まで吐く。
「…正直言えば、こんなオヤジに懐いてくれるお前は可愛かった。まるで妹か娘が出来た気分だったしな」
 それは知っている。一緒にいて、感じていたから。

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【2017/07/30 12:22】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  短編  キスシリーズ  キス  恋愛  高校生  先生  歳の差  
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「俺は24になったばかりの男」
 にしては、だらしない男だ。
「でもまあ考えてみたら、現実感ありすぎるし、ないか」
「まあ…何だ。そろそろ現実に戻って、自分が行くべき場所を思い出すと良い」
 と、言うしかないな。
「…ああ、そっか。行く所、あったんだ、俺」
 しかし思い当たることがあったらしい。
 不意に顔付きが変わったことに、思わず胸が高鳴る。
 うん、真面目な表情は悪くない。
 青年が立ち上がると、身長の高さにビックリした。
 私より頭二つ分、身長が高い。
 私は女にしては身長がある方だから、青年は男性にしても高い方だろう。
 青年は服を叩いて、歩き出す。
 ―けれどふと振り返り、私を見つめる。
「ん? どうかしたか?」
 真剣な眼差しを向けられると、不覚にも顔が熱くなってしまう。
「―一応、確かめておこうと思って」
 そう言ってきびすを返し、今度はこちらに歩いて来た。
「へっ?」
 突然のことに驚いている間に、青年はどんどん近付いて来て、とうとう私の目の前に立つ。
 そして両腕を伸ばし、私に抱き着いてきた!
「えっ…えええっ!」
 あまりに突然の行動に、呆然とし、抵抗することも忘れてしまう。
 そして固まっているうちに、青年は顔を上げて…私の唇にそっと口付けた。
「…えっ?」
「ああ…この感触は確かに人間だ」
 そう言って、ゆっくりと私から離れた。
 そして振り返り、また歩き出した青年の背に、
「ふざけるではないわあ!」

 どかっ!

 と飛び蹴りを食らわした。
「ぐおっ!?」
 青年は顔から地面に倒れ込む。
 その背中を今度は踏みつけた。
「いたたたっ!」
「何をしたか、分かっておるのか! 貴様!」
 いっいきなり口付けされるなんて思わなかった!
 しかも…甘く感じてしまうなんて…!
 恥ずかしくて、照れ臭くて、また情けなくて。
 頭の中が熱くなる!
「いっいや、だから。本当に人間かどうか、確かめたかったんだって!」
 顔をこちらに向け、青年は必死に言い訳をするが、踏み付ける力は緩めない。
「人間だと言ったじゃろうがっ! その耳は飾り物かっ!」
 ぎゅうぎゅう踏んでいると、ふと料亭の方から仲人がやって来た。
 そして私と青年を見て、ぎょっと眼を丸くする。
 仲人が慌てた様子で青年の名を呼んだ。
 その名に聞き覚えがあった私は、足の力を緩める。
 何せその名は、今日の見合い相手の名前だったからだ。


「…まさかと思うが、私が誰だか分かっていて、ああいうことをしたのかえ?」
「いいや。でもそうかな?って思ってはいた」
 部屋の中で、改めて私と青年は二人っきりになった。
 仲人が5分ほど紹介の時間を取った後、青白い笑顔で部屋を出て行ったからだ。
 その後、青年は私の隣に座り、髪の毛や頭、頬を触れたりしている。
「でもこんなに綺麗なコが嫁さんになるなんて、ちょっと信じられなくて…」
 そしての精かとも思って、口付けたのか…。
「うん、でもキミなら良いな。ねぇ、俺の嫁さんになってよ」
 …何つうアッサリしたプロポーズ。
 ロマンの欠片もありはしない。
 いや、あのの木の下で出会った時が、一番甘い空気が流れていたな。
 まあ…その後のキスも甘かった。
「ねぇねぇ」
 …人が考えている間に、今度は体にしがみついて揺さぶってくる。
 コイツ、見た目に反してガキだ。
 しかもタチの悪いガキ。
 でも、だけど、私に一目惚れしたらしい…し?
 堅っ苦しい旧家の生活から抜け出して、こういう男と夫婦となるのも楽しいかもしれない。
「…お前さん、私を大事にしてくれるか?」
「もちろん。何があったって、俺はキミのことを守るよ」
 そう言って優しく微笑む。
「ならしょうがない。結婚してやろう」
「ホント? やった♪」
 嬉しそうに笑うと、まぁた私にしがみついてくる。
 …やれやれ。
 退屈な結婚生活を想像していたのだが、破天荒な結婚生活を送りそうだ。

<終わり>



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【2017/07/20 01:43】 | <Kiss>シリーズ
【タグ】 小説  キスシリーズ  短編  キス  恋愛  お見合い  歳の差    
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 旧家の家に長女として生まれたのならば、人生は決まっている場合が多い。
 人も羨む豪華な生活を送れるだろうけど、結婚相手や将来の職業に関しては、自分の意志など何一つ通じない。
 それが分かっているからこそ、私も大人しく18になってお見合いをすることを決めた。
 相手は同じく旧家の長男。
 この見合いが上手くいけば、私は相手の家に嫁入りしなければならない。
 まあこういうのも、昔から代々続くものだ。
 だから覚悟はとうに出来ている……はずだった。
 少なくとも、私は出来ている。
 なのに…何故相手の男は何時まで経っても現れない?
 見合いの仲人は時間を過ぎても現れないことに焦り、今、連絡を取りに行っている。
 今日は当人同士の顔合わせということで、親も付き添い人もいなくて、私一人が部屋に残されてしまった。
「まったく…。遅れるとはどういうことじゃ」
 いつもの古臭い言葉遣いも、人がいないからできるもの。
 いい加減、痺れを切らし、私は部屋から出た。
 見合いの席として用意されたのは、会員制の高級老舗料亭。
 の木がたくさん植えられていて、とても美しい庭園がある。
 かく言う私が今日着ている着物も、お気に入りの柄だ。
 せっかくの見合いだから、一番良い着物を着て、普段はしない化粧までしてきたと言うのに。
「それとも相手にはその気がなく、破談にするつもりかえ?」
 ああ、そういうのもあるな。
 一度の見合いで上手くいくのは珍しい方。
 別に婚約者というワケでもないし、破談になったところで別に構わない。
「しかし顔も見せんとは、礼儀もしつけもなっとらんのう」
 まあ私もこういう言葉遣いをいくら言われても直さないけれど、時と場合では使い分ける。
「…来ぬなら来ぬで連絡ぐらいしてこれば良いものを」
 そしたら一人ででも、この料亭で食事をしたのに。
 部屋は庭が見える所だし、庭園を見ながら美味い食事はしたい。
 でも相手がいつ来るのか分からないままでは、注文もできやしない。
「はあ…。腹が……」

 ぐりゅりゅりゅ~

 …ちなみに私の腹の音では決してない。
「…どこか聞こえてきよった?」
 周囲をキョロキョロ見回すと、の木の下に、一人の青年が倒れているんだか寝ている姿を発見した。
 まさか腹を空かせて、倒れているとか?
 この料亭にいるってことは、不審人物ではないだろう。
 チェックは厳しいから。
 しかしもしかしたら、この料亭の関係者かもしれない。
 私はそっと近寄り、声をかける。
「おい、大丈夫か?」
「んっ…」
 私の声に反応し、青年は顔をこちらに向けた。
 …おっ、結構整った顔立ちをしているな。
 年の頃は25歳前後というところか?
「何故ここで寝ている? 具合が悪いのならば、人を呼ぶか?」
「…ああ、大丈夫。天気が良かったし、も綺麗だったから、つい昼寝をしてた」
 そう言って上半身を起こし、大きな欠伸をする。
「確かにここのは立派ぞ。こう見事なは、ウチにもないからのぉ」
 私は桜を見上げ、そっとその幹に触れた。
 しかし青年がじっとこちらを見ていることに気付き、改めて視線と声をかける。
「何ぞ?」
「いや、アンタさぁ…。もしかして桜の精?」
「……はい?」
 どーやらまーだ頭の回転が悪いらしい。
 寝ぼけなまこで私を見ながら、頭をボリボリかいている。
 せっかく立派なスーツを着ているのに、台無しにしている。
 なのに本人は全く気にしていないとは…大物なのか、バカなのか。
「何故そう思う?」
 が、一応理由は聞いておきたいと思った。
「ん~…。だって古い言葉遣いをするし、桜の着物を着ているし…」
 …コレはアレか?
 いわゆる電波とか、そういう次元とリンクしているのか?
「それに綺麗だし」
 ……まあ最後の言葉は良しとしよう。
 ちょっと機嫌が良くなったので、笑って見せた。
「残念ながら18になったばかりの小娘じゃ。そなたは?」


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【2017/07/20 01:37】 | <Kiss>シリーズ
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 それともコレが年上の余裕さなのだろうか?
キス…してほしいです」
 そしていつも負けてしまうのは、アタシが年下だから?
「―良いですよ」
「んんっ…!」
 けれどアタシのワガママを何でも聞いてくれるから、甘えてしまう。
 情熱的なキスに、頭の中まで熱くなる。
 気付けばあの人の膝の上に座っている格好になっていた。
 けれど気にせず、アタシの頬を撫でてくる。
「あなたは本当に可愛いですね。それに優秀でもある。教育のしがいがありますよ」
「…調教、の違いじゃありませんか?」
「ああ、そうとも言えますね」
 あっさりと肯定したよ…。
「もしかして他のメイドにも、アタシと同じことをしています?」
「心外ですねぇ。しませんよ、そんなこと」
 真顔で本気で言っているので、それは信用しよう。
「どうもあなたは誤解しているようですが、こんなに年下の女の子と付き合うのははじめてなんですよ? しかも職場の部下ですし」
「じゃあ何で手を出そうと思ったんです?」
「…それは『何で告白したんですか?』の間違いでしょうに…。んっ、やっぱりありがちですけど、あなたが他の男に取られるのが嫌だったからですよ」
 そう言ってアタシの手を恭しく取り、手の甲に口付けてくる。
 今度はこっちが心外。
「一体いつからアタシに眼をつけていたんです?」
「……『いつから気になっていたんです?』と言いたいんですよね? 答えは残念ながらハッキリとはしていませんが、一緒に働いている時には愛おしい気持ちに気付いていましたよ」
「友達の娘なのに?」
「一応自制はしていましたよ? ですがまさかあなたが告白を受け入れてくれるとは思わなかったので」
「そっそれは…」
 嬉しい―と素直に心から思ってしまったから。
 だから告白を受け入れた。
 恋人になって、甘い関係になって、毎日が楽しく過ごせてしまうほど、アタシもこの人のことが…。
「それは?」
 意地の悪い笑顔を浮かべながら、間近でアタシの顔を見てくる。
「…やっぱり素敵な人だなぁって、憧れの気持ちを持っていましたからね。この人がアタシの恋人になるって考えただけで、嬉しくなっちゃったんですよ」
 ちょっとぶっきらぼうに言って、今度はアタシの方からキスをする。
「ふふっ。なら両想いってことですね」
「…ですね」
 でも正直、いつまで続けられるかは分からない。
 やっぱりお互い、立場がある。
 それにここの仕事も、慣れれば楽しい。
 仕事を辞める気はお互いサラサラないだろうしなぁ。
「では明日にでも、ご主人様に報告しに行きますか」
「何か報告すること、ありましたっけ?」
 ここ最近の仕事を振り返っていると、あの人は苦笑した。
「いえ、そうではなくてですね。仕事ではなく、恋愛の報告をしようかと言っているんですよ」
「……はい?」
 それって今まさに、アタシが考えていたこと。
「でっでも良いんですか? 立場が悪くなったりとかしません?」
 確かに同僚からバラすよりも、雇い主であるご主人様に一番最初に報告した方が良い。
「ウチのご主人様は別に恋愛を禁止していませんからねぇ」
「でっでも同僚達に何と言われるか…」
「気になります?」
 アタシは素直に頷く。
 気になるからこそ、今までこういう秘密の付き合い方をしてきたから。
「―大丈夫ですよ。あなたと付き合っているからと言って、私が何か変わったわけでもありませんし」
「…悪い噂が立つかもしれませんよ?」
「言いたい人には言わせておきましょう。…ああ、でもそれならいっそ、結婚しますか?」
「はあっ!?」
 また突拍子もないことを…。
「別に夫婦で勤めることなんて、いくらでもあることです。恋人という不安定な関係よりも、しっかり夫婦という間柄になれば、悪い噂なんて立ちませんよ」
 …いや、それでも少しは流れると思うけど。
 でも確かに言われてみれば、結婚の方が落ち着くのは早いかもしれない。
「でも…」
「まだ何かありますか?」
 人が悩んでいるのに、額や頬にキスしてこないでほしい…。
 ちゃんと真面目に考えているのに、この人は…!
「ウチの父には、何て報告するんですか?」
 はっきりとした声音で尋ねると、動きがピタッと止まる。
 やっぱりこの人、仕事バカだ。
 そっちのことは考えていなかったんだろう。
「ウチの父はアナタを信用して、ここに働かせているんですよ? それが一年しか経っていないのに、結婚とか言い出したら、怒りそうなんですけど」
「…そっちの問題がありましたか」
 唸りながら、険しい表情を浮かべる姿を見ると、ちょっと可愛いって思ってしまう。
「まっ、そっちはおいおい。何せ二十歳過ぎれば、結婚は自由ですからね」
 確かにそうだけど、でもその言い方って…。
「何かアタシが二十歳過ぎるまで、待っていたって感じの言い方ですね?」
「そっそんなことはありませんよ!?」
 珍しく動揺を見せる。
 アタシは深く息を吐きながら、改めてこの人との未来を考え始めた。
 …でもまずは、ご主人様や同僚、そして両親の報告が先。

―アタシ、この人と結婚します。

 ってね?

<終わり>


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【2017/07/18 01:48】 | <Kiss>シリーズ
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