恋愛小説・「教え子の甘い誘惑」1

2017.10.10(23:32)

<あらすじ>
「ねぇ、センセ。オレのものになってよ。そうしたらセンセの言うこと、何でも聞いてあげる」
 そんなことを言い出したのは、アタシが勉強を教える高校の教え子くん!
 アタシを困らせるだけの彼だけど、ピンチのアタシは彼の手を取るしかない…。
 教師生活、どうなっちゃうのぉ~!?
 …そう言われて、アタシのとった行動は…!?

〔アタシだけの問題児〕
 授業開始の鐘の音が、校舎に鳴り響く。
 アタシは教室の扉の前で、深呼吸をした。

―よしっ! 今日こそは来ていますように!

 祈るような気持ちで、扉を開いた。
「おはよう、みんな。楽しい英語の授業を始めるわよ!」
 明るく振る舞い、教壇に立った。
 そして視線を彼の席へ向けて…がっくり項垂れた。
「せっ先生…」
「気にしない方が良いですよ」
「いつものことじゃないですか」
 生徒達が気まずそうに、口々にアタシを慰める言葉を言ってくれる。
「…今日も、なのね」
 あはは…と生徒達の間で渇いた笑いが広がる。
 40人いるはずの席には、1つだけ空席がある。
 彼の席だ。
 今日も彼、世納(せのう)華月(かづき)くんは、アタシの英語の授業に出席してくれなかった。

 思い出すこと三ヶ月前の春、アタシは高校2年の英語を担当することになった。
 教師生活も5年を向かえ、そろそろ担任を持ちたい気持ちがあった。
 だから来年ぐらいは…と考えていた矢先、アタシは彼と出会った。
 彼、世納華月くんはアメリカからの帰国子女。両親の仕事の関係で、6年間、アメリカにいたらしい。
 2年からの編入で、日本の生活も久し振りだから、何かとフォローしてあげようと、職員会議で言われていた。
 けれど…アタシの初授業の日。
 彼はアタシの授業の途中で、いきなり立ち上がった。
「…世納くん? どうしたの?」
「悪いケド、英語はアメリカでイヤってほど学んだんだ。この授業、受ける気は無いよ」
 …と、爽やかな笑顔で教室を出て行ったっきり、アタシは授業で彼と顔を合わせることは二度と無かった。
 さすがに担任の先生や、同じクラスメート達が何かと言ってくれたらしいが、効果はゼロ。

 もう…担任どころか、教師自体を続けていく自信が無くなってきた。
「ごっゴメンね、先生」
「いろいろとオレ達も言っているんだけどさ」
「アイツ、自分が英語得意だからって、天狗になっているんだよ」
 生徒達から慰められる教師…情けな過ぎる。
「…も、良いわ。とにかく、授業を始めます。もうすぐ学期末のテストがはじまるしね。みんな、気合を入れて頑張って」
 1人の生徒の為に、他の生徒達の授業に影響を与えてはいけない。
 アタシは気持ちを切り替え、授業を始めた。
 ―そして無事、終了。
 生徒達は渡されたプリントに、顔をしかめている。
「世納くんのは…机の中にでも入れといて」
「はい」
 彼の後ろの席の生徒が、英語のプリントを机に入れた。
 カバンはある。だから学校には来ているんだろう。
 朝、廊下で見かけた気もするし。
 アタシは深くため息をつきながら、保健室へ向かった。

 保健教諭はアタシと同じ歳で、同じ大学を出た榊原(さかきばら)涼子(りょうこ)がいる。
 美人でビシッとしていて、生徒達や教師達からの信望も厚い。
 しっかりしているから、いろんな人から悩みを相談されるそうだ。
 彼女は実際、カウンセラーの資格を持っているから、いつも保健室は誰かしらいる。
「榊原先生、今良いですか?」
 だからアタシは保健室に入る時は、教師の顔をする。
「アラ、美咲(みさき)。また世納クンに逃げられたの?」
 ぐっさり★と言葉の矢が、胸に突き刺さった。
 この言葉のキツさ…本当にカウンセラーの言葉だろうか?
「ええ。今日も、よ。今日でめでたくなく、3ヶ月が突破したわ」
「それはおめでたくないわね。慰めにコーヒーでもいかが?」
「いただくわ」
 壁際の長椅子に腰をかけ、首を鳴らす。
「ご苦労様。もうすぐ期末テストで忙しい時期に、相変わらずなんて大変じゃない?」
「事実、大変よ。教頭先生からは毎日お小言をいただいているしね。担任の先生も頭痛がするみたい」
「どうりで良く頭痛薬を貰いに来ると思った」
 涼子は肩を竦め、コーヒーカップを渡してくれた。
「ありがと。でもいい加減にしないと、彼、もう夏休み中の補習決定なのよ」
「自業自得ね。でもこれがずっと続けば…」
「ええ、今度は進級の問題になるわ。世納くん、成績自体は良いのだから、勿体無い話よね」
「随分他人事のように言うのね。もう諦めた?」
 イスに座り、涼子は楽しそうに言ってくる。

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Kissシリーズ・学園のキス1(2)

2017.07.30(12:27)

「だから…と言うこともないが。お前が女として迫ってきた時は……その延長みたいなもんだと思った」
 …つまりアタシの接触は、過激なスキンシップの一つと思っていたと。
「だけどお前は若いし、未来がある。可能性な無限大だし、俺なんかに構っているのが勿体無いと思ったんだ」
「むっ…」
「外の世界に出れば、お前にふさわしい良い男がすぐに見つかるさ。だから俺ことなんて…」
「むうっ!」
 耐え切れずに叫んだアタシは突然立ち上がり、机に膝を載せて先生の両肩を掴み、くだらないことばかり言う唇を唇で塞ぐ。
「んんっ…! おっおい!」

 ガターンッ

 そのまま先生は背中から床に落ちる。
 あたしは先生が抱きしめて庇ってくれていたから、どこも痛くない。
 …やっぱり優しい。
 そんな先生の上に乗りながら、アタシは何度も先生キスをする。
 最初は抵抗していた先生だけど、途中から力が抜けたようになすがままになった。
 唇がしびれるようになって、ようやくアタシは先生から離れる。
「…お前なあ」
 困り果てた先生の顔、唇はアタシの唾液で濡れていた。
 こういうところが妙に色っぽいんだよなぁ。
「だぁって先生、くっだらないことばかり言うから。アタシはこの恋心を一生のモノにしたい。死ぬ時だって持っていきたいと思っている気持ちを、バカにされたら怒るッスよ」
「うっ…」
 少し怒ったように上から言うと、先生はますます困る。
 そんな先生に、アタシはフッ…と笑いかけた。
「先生、知ってったッスか? アタシ、実は国語が苦手だったッスよ」
「…ああ、そう言えば一年の夏までは六十点台だったな」
「そうッス。でも夏に先生に惚れて、国語の教科書を大事にしたり、何度も読み返したりしたッス。そうすると、少しでも先生に近付けたように思えたッスから」
 そうしているうちに、いつの間にか成績がトップになっていたのだ。
「思い込んだら一途! と言うのがアタシッスからね。…逃がさないッスよ」
 ぎゅうっと先生に抱きつくと、とうとう観念したようにため息を吐く先生。
「…お前には本当に負けるよ」
「じゃあお嫁さんにしてくれるッスか?」
「ちゃんと大学に行くか、就職を決めれば、な」
「うがっ!?」
 …ヒドイ、交換条件。
 本当は専業主婦になりたかったのに…。
「んっ…。じゃあ大学に通って先生の資格を取って、この学校に戻ってくるッス。もちろん、国語の先生として。それなら良いッスよね?」
「お前…俺をクビにさせたいのか?」
「そうなったら、先生は専業主夫になれば良いッス!」
 ニヤッと笑うと、先生は柔らかくあたたかく苦笑した。
「言ってろ」
 そしてゆっくりとアタシの頭を引き寄せ、キスしてくれる。

 ――やっぱり恋愛は一途で、多少強引じゃなきゃね!

<終わり>

Kissシリーズ・学園のキス1(1)

2017.07.30(12:22)

「お前、どういうつもりだ?」
「何がッスか?」
「この進路希望だ」
 生徒指導室で、アタシの目の前にいる担任の先生は思いっきり顔をしかめて、アタシが書いた進路希望の用紙をピラピラと振って見せる。
そこに書いてあるのは、

先生の奥さん』

 という心から希望している進路だ。
「ふざけないで、どこの大学でも就職でもいいから書け」
「だーからぁ、本気ッス。アタシの気持ちはずっと先生に言ってたッスよ」
「その口調も止めろ…」
 先生はただでさえくたびれた中年オヤジなのに、今は余計にくたびれ感が出ている。
 先生とアタシが出会ったのは、中学一年の時。
 ウチの学校は共学で中・高一貫、しかも寮住まい。
 かなり厳しい進学校として有名で、アタシなんかは変わり種。
 けれど運動も勉強も上位の方だから、別に文句は言われない。
 …目の前にいる先生以外は。
 先生は国語担当の教師で、中学一年の時、アタシは国語係だった。
 教科の係は各クラス男女一名ずつ。
 先生が使う資料を運んだり、宿題の提出物を回収して渡す役目をする。
 ――が、アタシのパートナーは当時、係をサボってばっかいた。
 成績が思うように伸びなかったのと、アタシを敵視していた為、係の役目を押し付けやがった…!
 でもそのことに気付いた先生が、パートナーを説得してくれたおかげで、何とか役目をこなしてくれるようになった。
 一見はボサ~とした冴えないオッサンだけど、生徒のことをよく見て知っていてくれる。
 そんな先生に惹かれたアタシは、中学一年から先生に迫っていた。
 けれど年齢差が二回りも違ったせいで、最初は子供扱いだった。
 まあ確かに十二歳の女の子に、三十六歳の男が告白されても、懐かれたとしか思えない。
 だから思いきって高校に上がってすぐ、先生の部屋に夜這いに行ったのだ。
 先生は、男先生専用の寮の一階の角部屋だったから、侵入は楽だったなぁ。
 アタシも中等部の頃は二人部屋だったけど、高等部では一人部屋だから、抜け出しても結構バレない。
 だから男子寮と女子寮が離れていても、夜中に密会する恋人は多い。
 アタシと先生のように。
「アタシ、もう先生のせいで傷モノッスよ。責任取ってください」
「真夜中に夜這いしに来た女子高校生が何を言う」
 あっ、怒った。
 まあ確かに最初はそうだったけど…。
「でもそれから三年間は受け入れてくれたじゃないッスか」
「それはお前がいつまでも窓の外にいるからだろう!」
 …おっしゃる通りで。
 でもその気になれば、寮の部屋は空きがあるんだから移動することだってできた。
 それをしなかったんだから、多少なりと脈はあるはず!
「でも先生も無用心ッスよ。窓に鍵かけないなんて」
「寮の敷地で危ないヤツが侵入するとは思わなかったんだ。お前みたいなヤツがいるとは予想外だったがな」
 ヤレヤレといった感じで肩を竦める先生。
「…とにかく、お前は優秀な生徒だ。希望すればどこへだって行けるだろう? ふざけるのもいい加減にして、本気で進路を考えろ」
「何度も言わせないでほしいッス。アタシは先生の嫁になりたいッスよ。…それとも先生はこうやって女子生徒の気持ちを弄んでいたッスか?」

 ゴンッ!

「あいたっ!」
「…お前のその態度といい口調といい…頭の良いヤツはどこかおかしなもんだ」
 おっ女の子の頭にゲンコツを落とすか、普通?
「大体、何で俺なんだ? 遊ぶのもここら辺にしといた方が良いだろう?」
 先生の言葉で、アタシは首を傾げる。
「…まさか先生、アタシに弄ばれていると思っていたッスか?」
「そうじゃない! …ただ、擬似的な恋愛関係だっただけだろう?」
 ムッ!
「何ッスか、それ? アタシは本気ッス! だから先生の部屋に夜毎、通っていたし…」
「それをここで言うなっ!」
 小声で怒鳴って、先生はアタシの口を塞ぐ。
 まあ確かに人気の少なくなった校舎の中とはいえ、誰が通り過ぎるか分からないしな。
「…でもアタシ、ずっと待っていったッスよ? 先生がちゃんと独身で恋人いないことを知ったから、迫ったんだし…」
「そもそも三十過ぎの男に迫るな。俺ももう四十二だぞ?」
「知ってるッス。アタシはもう時期、十八。結婚できるッス」
「親の承諾が必要だろう?」
 …それもごもっとも。
「…じゃあ先生は何でアタシに付き合ってくれたんッスか? 遊びだったら遊びだったと、言ってほしいッス」
 ウソ、本当は言ってほしくない。
 けれど切るのならば、バッサリ切ってほしい。
 変な期待を持たせずに、背中を押してほしいと思うアタシはワガママだな。
 案の定、先生は困り顔で腕を組んで、ため息まで吐く。
「…正直言えば、こんなオヤジに懐いてくれるお前は可愛かった。まるで妹か娘が出来た気分だったしな」
 それは知っている。一緒にいて、感じていたから。

Kissシリーズ・甘々のキス・12(2)

2017.07.20(01:43)

「俺は24になったばかりの男」
 にしては、だらしない男だ。
「でもまあ考えてみたら、現実感ありすぎるし、ないか」
「まあ…何だ。そろそろ現実に戻って、自分が行くべき場所を思い出すと良い」
 と、言うしかないな。
「…ああ、そっか。行く所、あったんだ、俺」
 しかし思い当たることがあったらしい。
 不意に顔付きが変わったことに、思わず胸が高鳴る。
 うん、真面目な表情は悪くない。
 青年が立ち上がると、身長の高さにビックリした。
 私より頭二つ分、身長が高い。
 私は女にしては身長がある方だから、青年は男性にしても高い方だろう。
 青年は服を叩いて、歩き出す。
 ―けれどふと振り返り、私を見つめる。
「ん? どうかしたか?」
 真剣な眼差しを向けられると、不覚にも顔が熱くなってしまう。
「―一応、確かめておこうと思って」
 そう言ってきびすを返し、今度はこちらに歩いて来た。
「へっ?」
 突然のことに驚いている間に、青年はどんどん近付いて来て、とうとう私の目の前に立つ。
 そして両腕を伸ばし、私に抱き着いてきた!
「えっ…えええっ!」
 あまりに突然の行動に、呆然とし、抵抗することも忘れてしまう。
 そして固まっているうちに、青年は顔を上げて…私の唇にそっと口付けた。
「…えっ?」
「ああ…この感触は確かに人間だ」
 そう言って、ゆっくりと私から離れた。
 そして振り返り、また歩き出した青年の背に、
「ふざけるではないわあ!」

 どかっ!

 と飛び蹴りを食らわした。
「ぐおっ!?」
 青年は顔から地面に倒れ込む。
 その背中を今度は踏みつけた。
「いたたたっ!」
「何をしたか、分かっておるのか! 貴様!」
 いっいきなり口付けされるなんて思わなかった!
 しかも…甘く感じてしまうなんて…!
 恥ずかしくて、照れ臭くて、また情けなくて。
 頭の中が熱くなる!
「いっいや、だから。本当に人間かどうか、確かめたかったんだって!」
 顔をこちらに向け、青年は必死に言い訳をするが、踏み付ける力は緩めない。
「人間だと言ったじゃろうがっ! その耳は飾り物かっ!」
 ぎゅうぎゅう踏んでいると、ふと料亭の方から仲人がやって来た。
 そして私と青年を見て、ぎょっと眼を丸くする。
 仲人が慌てた様子で青年の名を呼んだ。
 その名に聞き覚えがあった私は、足の力を緩める。
 何せその名は、今日の見合い相手の名前だったからだ。


「…まさかと思うが、私が誰だか分かっていて、ああいうことをしたのかえ?」
「いいや。でもそうかな?って思ってはいた」
 部屋の中で、改めて私と青年は二人っきりになった。
 仲人が5分ほど紹介の時間を取った後、青白い笑顔で部屋を出て行ったからだ。
 その後、青年は私の隣に座り、髪の毛や頭、頬を触れたりしている。
「でもこんなに綺麗なコが嫁さんになるなんて、ちょっと信じられなくて…」
 そしての精かとも思って、口付けたのか…。
「うん、でもキミなら良いな。ねぇ、俺の嫁さんになってよ」
 …何つうアッサリしたプロポーズ。
 ロマンの欠片もありはしない。
 いや、あのの木の下で出会った時が、一番甘い空気が流れていたな。
 まあ…その後のキスも甘かった。
「ねぇねぇ」
 …人が考えている間に、今度は体にしがみついて揺さぶってくる。
 コイツ、見た目に反してガキだ。
 しかもタチの悪いガキ。
 でも、だけど、私に一目惚れしたらしい…し?
 堅っ苦しい旧家の生活から抜け出して、こういう男と夫婦となるのも楽しいかもしれない。
「…お前さん、私を大事にしてくれるか?」
「もちろん。何があったって、俺はキミのことを守るよ」
 そう言って優しく微笑む。
「ならしょうがない。結婚してやろう」
「ホント? やった♪」
 嬉しそうに笑うと、まぁた私にしがみついてくる。
 …やれやれ。
 退屈な結婚生活を想像していたのだが、破天荒な結婚生活を送りそうだ。

<終わり>



Kissシリーズ・甘々のキス・12(1)

2017.07.20(01:37)

 旧家の家に長女として生まれたのならば、人生は決まっている場合が多い。
 人も羨む豪華な生活を送れるだろうけど、結婚相手や将来の職業に関しては、自分の意志など何一つ通じない。
 それが分かっているからこそ、私も大人しく18になってお見合いをすることを決めた。
 相手は同じく旧家の長男。
 この見合いが上手くいけば、私は相手の家に嫁入りしなければならない。
 まあこういうのも、昔から代々続くものだ。
 だから覚悟はとうに出来ている……はずだった。
 少なくとも、私は出来ている。
 なのに…何故相手の男は何時まで経っても現れない?
 見合いの仲人は時間を過ぎても現れないことに焦り、今、連絡を取りに行っている。
 今日は当人同士の顔合わせということで、親も付き添い人もいなくて、私一人が部屋に残されてしまった。
「まったく…。遅れるとはどういうことじゃ」
 いつもの古臭い言葉遣いも、人がいないからできるもの。
 いい加減、痺れを切らし、私は部屋から出た。
 見合いの席として用意されたのは、会員制の高級老舗料亭。
 の木がたくさん植えられていて、とても美しい庭園がある。
 かく言う私が今日着ている着物も、お気に入りの柄だ。
 せっかくの見合いだから、一番良い着物を着て、普段はしない化粧までしてきたと言うのに。
「それとも相手にはその気がなく、破談にするつもりかえ?」
 ああ、そういうのもあるな。
 一度の見合いで上手くいくのは珍しい方。
 別に婚約者というワケでもないし、破談になったところで別に構わない。
「しかし顔も見せんとは、礼儀もしつけもなっとらんのう」
 まあ私もこういう言葉遣いをいくら言われても直さないけれど、時と場合では使い分ける。
「…来ぬなら来ぬで連絡ぐらいしてこれば良いものを」
 そしたら一人ででも、この料亭で食事をしたのに。
 部屋は庭が見える所だし、庭園を見ながら美味い食事はしたい。
 でも相手がいつ来るのか分からないままでは、注文もできやしない。
「はあ…。腹が……」

 ぐりゅりゅりゅ~

 …ちなみに私の腹の音では決してない。
「…どこか聞こえてきよった?」
 周囲をキョロキョロ見回すと、の木の下に、一人の青年が倒れているんだか寝ている姿を発見した。
 まさか腹を空かせて、倒れているとか?
 この料亭にいるってことは、不審人物ではないだろう。
 チェックは厳しいから。
 しかしもしかしたら、この料亭の関係者かもしれない。
 私はそっと近寄り、声をかける。
「おい、大丈夫か?」
「んっ…」
 私の声に反応し、青年は顔をこちらに向けた。
 …おっ、結構整った顔立ちをしているな。
 年の頃は25歳前後というところか?
「何故ここで寝ている? 具合が悪いのならば、人を呼ぶか?」
「…ああ、大丈夫。天気が良かったし、も綺麗だったから、つい昼寝をしてた」
 そう言って上半身を起こし、大きな欠伸をする。
「確かにここのは立派ぞ。こう見事なは、ウチにもないからのぉ」
 私は桜を見上げ、そっとその幹に触れた。
 しかし青年がじっとこちらを見ていることに気付き、改めて視線と声をかける。
「何ぞ?」
「いや、アンタさぁ…。もしかして桜の精?」
「……はい?」
 どーやらまーだ頭の回転が悪いらしい。
 寝ぼけなまこで私を見ながら、頭をボリボリかいている。
 せっかく立派なスーツを着ているのに、台無しにしている。
 なのに本人は全く気にしていないとは…大物なのか、バカなのか。
「何故そう思う?」
 が、一応理由は聞いておきたいと思った。
「ん~…。だって古い言葉遣いをするし、桜の着物を着ているし…」
 …コレはアレか?
 いわゆる電波とか、そういう次元とリンクしているのか?
「それに綺麗だし」
 ……まあ最後の言葉は良しとしよう。
 ちょっと機嫌が良くなったので、笑って見せた。
「残念ながら18になったばかりの小娘じゃ。そなたは?」


歳の差

  1. 恋愛小説・「教え子の甘い誘惑」1(10/10)
  2. Kissシリーズ・学園のキス1(2)(07/30)
  3. Kissシリーズ・学園のキス1(1)(07/30)
  4. Kissシリーズ・甘々のキス・12(2)(07/20)
  5. Kissシリーズ・甘々のキス・12(1)(07/20)
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