Kissシリーズ・甘々のキス14

2017.07.30(15:12)

 普通、恋人キスと言うのは唇にするはず…よね?
 なのにたった一ヶ月前から付き合い始めた彼は、アタシにキスする場所は唇以外の場所。
「なあ、キスして良いか?」
「えっ? …うん、まあ良いけど」
 今はアタシの部屋で、彼と二人っきり。
 まったりのんびりした雰囲気を出していた。
 けれど彼はアタシを後ろから抱きしめていて、その唇が触れているのは首筋。
「ヤダ、ちょっと。くすぐったい」
「ん~。じゃあここは?」
 次にアタシの手首を掴んで、何故か甘噛み。
 …確かにくすぐったくはないんだけどね。
 そして頬、耳、また首といくけれど、唇には触れてこない。
 何でだろう?
「ねっねえ」
「何だ?」
「何でその…唇にキス、してくれないの?」
 ううっ…! 女の子から言うと、恥ずかしい。
 まるで誘っているみたいに、聞こえるだろうな。
 すると後ろの彼は、ニヤっと意地悪な笑みを浮かべる。
「唇にしてほしいのか?」
「と言うより、何で唇以外なのか知りたいの!」
 ちょっと見た目が怖い彼は、けれどアタシをとても優しくしてくれる。
 あんまり口数も多くないけれど、一緒にいて安らぐ人。
 彼がアタシに好意を抱いていることに気付いたアタシは、何となく彼を意識するようになった。
 そしてそれとなーく、付き合わないかと言ってみたら、やっぱりOKだった。
 それは素直に嬉しいんだけど…。
 恋人となってから、彼が言うキスとはずっと唇以外の体の場所。
 いや、別に良いんだけどね。
 キスされるたびに、彼に大事にされているのを感じるし。
 周囲にいる友達は、恋人ができるとあまり間もなく深い仲になってしまうらしい。
 キスなんて、恋人になってすぐにしてしまうコも多い。
 だからこそ、彼のキスはとても大切なものには思えるんだけど…。
「お前さ、キスと言えば唇だけだと思ってる?」
「そんなことはないわよ。頬でも手でも、キスはキスでしょ?」
 彼の唇が体に触れるたびに、くすぐったいけれど甘いしびれを感じる。
 それはきっと、唇だろうが体だろうが同じ。
 だってキスしているのは、アタシの大好きな彼なんだもん。
 まっまあだから、彼が唇にキスするのが嫌ならば、別にそれでも構わないんだけど…。
「キスする場所に意味があるの、知っているか?」
「へっ? …あっ、何となくは」
 確か22ヶ所ぐらい、キスの意味がある体の場所があるみたい。
 日本ではあまり馴染みがないけれど、外国では結構知られているみたいで…。
「って言うか、あなたは知っているの?」
「昔通っていた幼稚園が、そういうのを教えてくれたからな」
 …まず日本系ではないだろう。
「首筋は執着、手首は欲望、頬は厚意、耳は誘惑ってな」
 彼は言いながら、同じ場所に口付けていく。
 なっ何かとんでもない言葉ばかり飛び出てくるけれど…。
 もしかしたら、コレが彼のアタシへのメッセージなんだろうか?
 口数少ない彼が自分の気持ちを伝える方法として、キスを選んだのならば…理解できる。
 でもやっぱり理解できないことが、一つあった。
「…じゃあ、唇にするキスの意味は?」
 顔だけ振り返って彼の顔を真っ直ぐに見ると、今度はあたたかな笑みを浮かべる。
 そして静かにゆっくりと、唇にキスをされた。
「唇はもちろん、愛情だ」
「じゃあ何で今までしなかったの?」
「そりゃあもちろん…」
 そこで彼は言いつまった。
 眼をウロウロと泳がせて、顔色が僅かに赤くなる。
 アレ? これってもしかして…。
「恥ずかしかった、の?」
 アタシが先に言うと、一気に彼の顔色は真っ赤になった。
 …ああ、図星だったのね。
 彼は言葉よりも、態度で分かりやすいタイプみたい。
「…何でお前はいつも、俺より先に言うんだ?」
 それって告白のことも言っているんだろうな。
「だって…何かじれったいもん」
「んなっ!?」
 彼とは実は、中学時代からの知り合いだった。
 付き合い始めたのは、知り合って三年目になってから。
 随分と間があった。
 いい加減、アタシが耐え切れなくなったというのもある。
 お互い気になっていたのに、全然進展がないんだもん。
「あなたの言葉を待ってたら、おばあちゃんになっちゃうわ。だけどキスであなたの気持ちを伝えてくれるのならば、教えて?」
「…ああ、だが覚悟しろよ? キスする場所は、まだまだあるんだからな」
 ぎゅっと抱き締める力が強くなった。
「ふふっ。それは楽しみね。でも一番してほしい場所には、できるだけ多くしてね」
 アタシはニッコリ笑って、彼の唇に指で触れる。
「指先のキスは賞賛、だそうだ」
「じゃあ上手くキスできたことを、褒めているってわけね」
「調子に乗るな!」
 少しむくれた彼が、今度は強引に唇にキスしてきた。
 …こんなふうに彼の愛情に触れられるのならば、どこにキスされても良いと思っていることは、彼には内緒。

<終わり>
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Kissシリーズ・お笑いのキス2(2)

2017.07.27(05:58)

 でもアタシにまで、可愛さを求めないでほしいというのが本音。
 サッパリ・アッサリしているのが、自分の良いところだと思っている。
 それは服装や格好なんかにも現れている。
 スカートとかワンピースを着るのは好き。
 でもやっぱりデザインはシンプルなのを選ぶ。
 彼が着るような、フリルとレースはご遠慮願いたい。
「はあ…」
 ファミレスに入ると、彼はトイレに行った。
 …もちろん男性用のに行くワケだけど、他の人に見つかったら声かけられないだろうか?
 そんな心配をしていると、不意に2人組の男に声をかけられた。
 2人ともアタシ達と同じ歳らしい。
 ファミレスに入って来たアタシ達を見て、どうやらナンパしようと決めていたらしい。
 …と言うか、彼を女の子と勘違いしているな?
 そして彼らの口ぶりから、どうやらお目当てはアタシではなく、彼の方らしい。
 まっ、男の子って可愛い女の子を好むみたいだし。
 どう断ろうか考えていると、彼が戻って来た。
「どうしたの?」
 そして男の子達に声をかけられているアタシを見て、ビックリしている。
 男の子達は戻ってきた彼に、嬉しそうに声をかける。
 話の内容は彼を褒め称える言葉や、どこかに遊びに行こうという言葉。
「えっ、あの…」
 彼は二人の勢いに押され気味。
 だけどどんどんその表情が暗くなる。
 男の子達はそれでも話し続ける。
 ―やがて、彼がゆっくりと顔を上げた。
「…いい加減にしやがれっ!」
 いきなり顔付きも声も『男』になったことに、二人はギョッとして彼から離れる。
「こちとらデート中なんだ! しつこいナンパ野郎共は引っ込んでろ!」
 …ちなみに彼が住んでいる地域では、ちょっと訛り言葉を使われる。
 彼は立派に、その言葉遣いを受け継いだらしい。
「はっ! いっいけない…。ボクったら…」
 周囲がし~ん…と静まり返ってしまったので、彼も我に返るのが早かった。
 アタシはため息を一つし、荷物を持って立ち上がる。
 まだ注文する前で良かった。
「じゃっ、お店の邪魔になっちゃうと悪いから、行きましょうか」
 しゅん…と落ち込んでいる彼の手を、今度はアタシが繋いで店から出た。

 とりあえず落ち着かせようと人気の少ない住宅地まで歩いて来た。
 その間、彼はしょんぼりしたまま無口。
「…気にすることないわよ。ああいうタイプにはガッチリ言った方が良いんだから」
「うん…。でもあんなところで男の子っぽいとこを見せちゃうなんて…ボクもまだまだだなあ」
 がっくりと肩を落とす彼だけど…。
「でもアタシは惚れ直しちゃった」
「えっ?」
「だってかっこよかったから。それにアタシを守ってくれたじゃない」
 そう、女の子の格好をしてても、ちゃんとアタシを守ってくれる。
 一緒にいて、楽しい気分にさせてくれる。
 だからアタシは彼の告白を受け入れたのだ。
「確かにアタシはあなたに『お嫁さんになって』とは言ったけど、『女の子になって』とは言わなかったでしょ?」
「うっうん…」
「まあ女装するのは良いけれど、中身まで女の子になられちゃ、流石にアタシの立場がないし」
 とは言え、彼は家事全般が得意で趣味。
 毎日、アタシにお弁当とオヤツの差し入れをしてくれるし、時には手作りの洋服やアクセサリーまでくれる。
 女の子として叶わない部分が多いけれど、変わってほしくない部分もある。
「ボク、さ…」
 不意に彼は立ち止まるので、手を繋いでいるアタシまで立ち止まった。
「小さい頃、あんな告白しちゃったでしょう? でもキミが言ってくれた言葉もあるから、こういう格好をするようになったんだ」
 そう言って髪の毛の先を指でいじる。
 可愛い仕草だなぁ。
「可愛くなれるように一生懸命努力してきたつもりだったのに……。やっぱりキミの可愛さには叶わないなぁ」
 …でも言っていることは、イマイチ理解できない。
「可愛いってアタシのどこが?」
「全部だよ!」
 彼には珍しく、声を荒げた。
「え~? でもアタシなんて地味じゃない」
「違うよ! 可憐なんだよ」
 その言葉は真正面から彼に打ち返したい。
 けれどこれまた珍しく、本気でムキになっているので、黙っておこう。
 いつもは可愛らしい仕草しか見ていないから、何か珍しい。
「派手に着飾ったりしない分、可愛さが滲み出ていると言うか…」
 それはきっと…彼にしか感じないことだな。
 だってアタシ自身、全く分からないことだから。
「だからキミの理想通りの人になりたかったのに…」
「アラ、アタシは充分、今のあなたがステキだと思っているわよ?」
「ほっホント?」
「うん」
 男の娘でも、可愛い姿を見れるのは嬉しい。
 ちゃんとアタシを大事にしてくれるし、文句なんて一つもない。
 だからそう思っていることを証明したくって、彼の手を引いて、キスをする。
「んっ!?」
 突然のことに、彼は眼を白黒させる。
 いくら人気の少ない住宅地とは言え、全く人がいないワケじゃない。
「ねっ? コレで安心した?」
「うっうん…」
 白い頬を赤く染め、夢見心地の顔をする彼を見ると、愛おしいと思える。
「ねっねぇ」
「ん? なぁに?」
「もう一回…良い?」
 上目遣いでねだられると、断れるワケもない。
 軽くため息を吐くと、アタシは再び彼にキスをした。
 周囲から戸惑いの雰囲気が伝わってくるけど、素知らぬフリで。
 まあ何も知らない人から見れば、女の子同士のキスシーンに見えるだろうな。
 苦笑しながら唇を離すと、今度はぎゅっと抱き着かれた。
「ボク…絶対キミのお嫁さんになるからね!」
「はいはい」
 でも結婚式では、彼もウエディングドレスを着たいと言い出すかもしれない。
 そしたら…アタシがタキシードを着ようっかな?
 お揃いでウエディングドレスを着るよりは、まだマシかも、ね?

<終わり>

Kissシリーズ・お笑いのキス2(1)

2017.07.27(05:48)

 休日、アタシは駅前で恋人を待つ。
 恋人はアタシと同じ高校に通っていて、学年も同じ2年生。
 元々母親同士が親友だったこともあり、小さな頃から遊んでいた。
 でもお互い住んでいる家は遠くて、なかなか一緒にはいられなかった。
 しかし高校受験前に、彼の方から同じ高校に通わないかと誘われ、通学するのも苦じゃない距離だったし、レベルもそこそこだったのでそこを希望校にした。
 お互い見事合格して、高校の始業式で会えた時は喜んだものだ。
 ウチの高校は自由がウリで、制服はあるけれど私服でも可。
 アタシも彼も、私服で通っている。
 でもアタシはたまーに制服を着るけれど、彼は滅多に着ない。
 まあ入学式と卒業式は流石に制服着用が校則としてあるから、しょうがなくは着ていたな。
 そんなことをボンヤリ思い出していると、目的の人物がこちらへと走って来るのが見えた。
「ごめ~ん! 待ったぁ?」
 上擦った舌っ足らずの甘い声を出すのが、アタシの『恋人』で『彼』だ。
 ちなみに着ている服は、いわゆるゴスロリファッション。
 もちろん―女の子用。
「ううん。そんなに待ってないよ」
 だけどアタシは笑顔で接する。
「ホント、ゴメンねぇ。電車が遅れちゃって…」
「いいって。それより早く行こう。今日は洋服を買いたいんでしょう?」
「うん! 行こう!」
 彼は笑顔で手を繋いでくる。
 ちなみにちゃんと髪も可愛くセットしているので、見た目的には『可愛い女の子』だろう。
 …実際、こっちを見る男性達の視線が熱く彼に向いているし。
 彼に引っ張られて来たのは、これまたゴスロリショップ。
 正直言って、アタシには縁が遠い。
 平凡な女の子であるアタシにとっては別世界に見える。
 けれど彼は慣れていて、すんなり入って行く。
「わあ! やっぱり春物が一番可愛い♪ 小物も、お洋服も! そう思わない?」
 春色の新作の洋服を嬉しそうに彼は自分の体に当てる。
 彼は小柄で、アタシと同じぐらいの身長なので、こういう服が良く似合う。
 顔立ちも可愛いし。
「うん、良く似合うよ」
「ホント? どれを買おっかな?」
 店内にいる女の子達の視線も、彼に向けられる。
 でも本当の性別を知らないことを思うと、ちょっと不憫。
 …まあ元々、彼がこうなったのはアタシのせいなんだけどね。

 幼い頃、それこそ小学生に上がる前まで、彼は普通の男の子の格好をしていた。
 まあその頃から彼は可愛かったけど、こういう格好は一切していなかった。
 そんな彼に、ある日、こう言われた。
「あのね! ボク、将来キミのお嫁さんになりたいんだ!」
 …今思うと、ツッコミどころがある告白だったな。
 けれどアタシも幼くて、ただ単純に『結婚すること』として受け止めた。
 告白されたことは分かっていた。
 彼のことは確かに気になっていたから、アタシはつい、
「うん…分かった。じゃあ大きくなったら、アタシのお嫁さんになってね」
 ……と答えてしまった。

 その後、お互い小学校に上がると忙しくなって、会うことがなかった。
 手紙や電話、メールなどで連絡は取り合っていたけれど、お互いの成長した姿は一切見ないまま、高校で再会した。
 けれど入学式を終えた翌日、彼はこの格好で登校してきた。
 驚いて理由を尋ねたアタシに、彼はこう言った。
「え~、だってキミが『お嫁さんにしてくれる』って言ったじゃない」
 …そこでアタシは、十年前の自分の失言を思い出した。
 そして彼がずっと、アタシを思い続けてくれたことも知った。
 彼のご両親はこういう格好をすることに驚いたようだったけど、将来アタシと結婚することが決まっていると彼が言うと、
「それなら…」
 と渋々受け入れてしまったらしい…。
 まあ彼の母親とウチの母親は未だに仲良いからな…と遠い目をしながら思う。
 なのでアタシは高校入学と同時に、恋人婚約者がいる身となった。
 でもまあ今の世の中、こういうコがいることはテレビでも取り上げられているし。
 可愛いし似合っているし、アタシは彼を受け入れることにした。
 ―が、世の中そんなに甘くなかった。

 学校に行くと、アタシはいろんな生徒達から文句を言われる。
 その文句の言葉は、いつも同じ。
「何で彼にああいう格好をさせたんだ!」
 …ちなみに言ってきたのが男の場合、うっかり女装をしている彼に恋心を抱いてしまったパターン。
 女の場合、彼氏がうっかり女装した彼を好きになってしまったパターンと、女として敗北感を抱いてしまったパターンがある。
 何故こう言った苦情がアタシにくるのかと言うと、彼は自分が女装している理由を尋ねられた時、こう言っているらしい。
「だぁってボクの彼女が『お嫁さん』にしてくれるって、言ってくれたんだもーん」
 満面の無邪気な笑顔で、ハッキリと言っているらしい…。
 彼と付き合っているのは有名なので、いっつもアタシは苦情を受けるのだ。
 言われたアタシは遠い目をしながら苦笑するしかない。
 十年も前に言った言葉が、まさかこんな状態を生み出すなんて、予想もしていなかったのだから…。

「はぁ~。いっぱい買っちゃった♪ 満足満足」
 大きな紙袋を持ちながらも、空いている手ではしっかりとアタシの手を握っている。
「でもキミは何も買わなくてよかったの? せっかく似合いそうなのがあったのにぃ」
「アタシには似合わないわよ。あなたが着ている姿を見ている方が良いの」
「そお?」
 ちょっと拗ねたように言われるけれど、自分でも似合っていないのは分かっている。
「でもボク、キミとお揃いのワンピとか着たいなぁ」
「えっ!?」
「あっ、メイド服でも良いよぉ」
「そっそれは流石に…。あっ、お腹空かない? アタシ、何か食べたいな」
「そうだね。じゃあどっかに入ろうか?」
 上手く気がそらせて良かった…。
 時々彼はこういうことを言い出すから、心臓に悪い。
 流石に同じ服を着て二人並ぶというのはな~。
 …明らかに彼の引き立て役になってしまう。
 別に彼の女装姿がイヤなワケじゃない。

Kissシリーズ・甘々のキス・10(1)

2017.07.18(01:04)

 昔っから、女の子っぽいことが苦手だった。
 女の子は早い段階から、オシャレに興味を持って、可愛く・綺麗になっていく。
 ボクはそういうのを、一歩引いたところから見ている方が楽だった。
 だから制服も女子用のを着るのにちょっと抵抗を感じて、私服の学校を選んだ。
 スカートを履かずに過ごすボクだったけど、私服だらけの学校だとそんなに目立たなかった。
 でも女の子にモテるのは正直ちょっと困ったけど…。
 普通の女の子のように生きるのに抵抗を感じていたボクだけど、何も女の子が恋愛対象だからと言うワケじゃない。
 ただ、苦手だったから。
 髪をショートカットにして、服装もどちらかと言えば男の子っぽかった。
 家族はすでに諦めていたし、ボクはこのまま生きていくことを決めていた。
 でも…こんなボクでも恋をして、受け入れてくれる人が現れた。
 その人が今のボクを良いと思ってくれているのか…本当は心配だ。
「ええっと、それじゃあオムライスとウーロン茶。キミは?」
「えっと…。じゃあサンドイッチと紅茶で」
 喫茶店で向かい合って、ウエイトレスにメニューを注文する。
 …けど何となく、ウエイトレスのボクを見る眼が熱く感じるのは気のせいだろうか?
「今日、良い天気で良かったな」
「はっはい…」
 ボクが敬語を使うのが、彼がボクの通う高校のセンパイだからだ。
 ちなみにボクが1年で、センパイが2年。
 ウチの学校は身に付けている物で学年が分かるということがない為、割と年齢差を気にせず親しく付き合う人が多い。
 ボクとセンパイもそのタイプだった。
 同じ学校の中では会うことも多くて、何度も会っているうちにボクは…センパイに恋をした。
 思いきって告白して、受け入れてもらったのは嬉しいんだけど…。
「まさにデート日和だよな」
「んなっ!?」
 ぼんやりと窓の外を見ながらセンパイは、何気なしに呟く。
 けれど注文した品を持ってきたウエイトレスの動きと表情が、音を立てて固まるのをボクは見てしまった。
 ウエイトレスはそそくさとテーブルに料理を置くと、すぐさま奥へと引っ込んだ。
 ああ……絶対に勘違いされている。
 センパイはボクのことを、ちゃんと恋人扱いしてくれる。
 それは…照れ臭いけれど、嬉しい。
 …でも周囲から見ればその…怪しい関係に見られてしまうことが多かった。
「美味しそうだね。食べようか」
「…はい」
 しかしそんなことは一切気にせず、センパイは料理を食べ始める。
 ボクは食欲が失せてしまったけれど、食べる。
 まあ、いつものことだし…。
 ボクはセンパイと付き合うようになってからも、男の子っぽい格好は止めなかった。
 センパイも特に何も言ってこないし、恋人としての関係に問題はない…とは言えないな。
 今みたいに、周囲に誤解を与えることが多いし…。
「はあ…」
 食べ終わった後、センパイとボクは映画館に向かって歩いていた。
 学校で一緒にいても、学生達はボクの本当の性別を知っているからまだ良い。
 …でも、こういう外だとな。
 ふととある洋服店から、可愛い二人組の女の子達が出てきた。
 そこの洋服店は、可愛い服を売っているので有名。
 女の子達は買ったばかりの服のことで、話が盛り上がっている。
 ボクは自分の格好を見て、ため息をつく。
「ん? どうかした?」
「あっ…と。…こういう服、可愛いなと思いまして」
 ボクはつい、洋服店のショーウインドウを指さした。
 マネキンは可愛い服を着ていて、センパイはそれを見て首を傾げる。
「確かに可愛いな。着てみたい?」
「えっ!? いや、どうせ似合わないんで、いいです。それより早く映画館に行きましょう!」
 ボクはセンパイの腕を掴んで、その場から離れた。
 けれど映画を見ている間にも、ボクの頭の中にはあの可愛い服のことが浮かんでいた。

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