Kissシリーズ・学園のキス2(2)

2017.07.30(13:27)

「えっ? 付き合わないの?」
「どこへよ?」
「恋人としてだよ」
「……はっ?」
 イベントでのことは、私が関係者であるからやっただけだったのに?
「ああ、そこまでしなくても良いわよ。これから受験の準備があるんだし、そこでこじれたって言ってもいいし…」
 別れる言い訳なんて、高校三年になる私達には山のようにある。
 何でも良いのだ。
 なのに彼はニヤニヤしながら、私を見る。
「…何よ?」
「いや、医者を目指していることは知っていたけど、本当に真剣に頑張っているんだなって思って」
「何、それ。イヤミ?」
 彼は大病院の長男で、将来は跡継ぎになる予定。
 一方、私の実家は小さな町医者で、上に兄と姉がいるけれど二人とも医学生だ。
 将来、兄弟三人で病院を大きくしようというのが、小さい頃からの夢だった。
 だから私にとって、彼はいわゆる敵。
 思わず睨んでしまうと、彼は苦笑して手を振る。
「尊敬しているんだよ。ただもったいないなとも思っている。せっかくの青春時代、ただ勉強するだけじゃ味気なくない?」
 …何で兄や姉と同じことを言うんだろう?
 医学生でも兄には婚約者がいるし、姉には恋人がいる。
 けれど私は誰とも今まで付き合ったことがないので、心配されているのだ。
「どう? 良い機会だし、ボクと付き合ってみない?」
「何で?」
「ボクがキミを好きだから」
 …何か今、悪夢の幻聴が聞こえた。
「…アンタ、よりにもよって教会で何を言っているのよ?」
「ここだから、言えるんだよ。キミも本気にしてくれるだろう? それともこうでもしないと、信じてくれない?」
 彼の目に危険な光が宿るのを見て、身の危険を察知して後ろに下がったのに、すぐに両肩を掴まれて…
「んんっ…!?」
 キス、された。
 深く熱いキスは一瞬のことだったけれど、それでも感触は残る。
「…んのぉ、何をするのよっ!」
 ビンタをしようとするも、
「おっと、危ない」
 ひょいっとよけられる。
 …彼は運動神経が特に良かったっけ。
「ああ、ゴメン。つい避けちゃった。今度はよけないから、どうぞ」
 とニッコリ余裕の笑みを浮かべるので、遠慮なく、

バシンッ!

 と綺麗な顔を平手で叩いた。
「…いったぁ」
「こっちも痛いわよ」
 平手打ちっていうのは、意外と叩いた方もダメージを受ける。
 ジンジンと熱を持つ私の手は、彼の赤くなっている頬と同じだろう。
「いきなりキスなんてする方が悪いっ!」
「だからゴメンって。でも可愛いキミの姿を見たら、ガマンできなくなっちゃった」
「…それって普段、ブサイクだって言いたいの?」
「…キミって少し、卑屈だね」
 余計なお世話!
「でもそんなキミが好きだというのは本気で本当。…けれどボクは意外と臆病だから、こういう機会がなければ告白キスもできなかっただろうな」
 そう言って今度は優しく、穏やかに私を抱きしめてくる。
 彼のぬくもりに気を取られて、思わず抵抗するのを忘れてしまう。
「ボクはキミのことが好きだよ。さっきのイベントでキミが参加しているのを見て、誰にも取られたくないって思ったんだ。いつも何事にも一生懸命で、真面目なキミのことは前から気になっていたんだけどね」
 そう言って私の頭の上で、クスッと笑った。
「浮かれている女の子達よりも、落ち着いているキミに好きになってもらいたいって思ったんだ。…ダメ、かな?」
 …こういう時に弱い声を出すのは、ダメだと思う。
 けれど…彼を突き放せない私もダメ、だな。
 こんなつまらない私を、好きだと言ってくれる彼を手放せなくなっている。
「…私、面白くないわよ? 女の子らしくもないし」
「良いよ。とりあえず、キミの一番近くにいる男になれれば」
 そう言って再びキスをしてくる。
 …ああ、将来のこと、考え直さなきゃいけないな。


<終わり>
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Kissシリーズ・学園のキス2(1)

2017.07.30(12:35)

「へっ? 私にも参加しろって?」
 それは12月のこと。
 私の通っている高校は共学で、キリスト教関係の学校だ。
 そのせいか、終業式後には学園ではパーティーを行う。
 まあパーティーと言っても、軽くオシャレをして立食をしながら話をしたり、ダンスを踊ったりするもの。
 堅苦しいマナーはなしで、揉め事さえ起こさなければ自由に楽しめる。
 私は二年で、パーティーを取り仕切る係の一人だった。
 なのにパーティーの目玉イベントである『聖夜までに恋人を作ろう!』という、いわゆる数人の男女が集まり、思いを寄せる相手に告白して、カップルになるというものに、参加してほしいと言われた。
 言ってきたのは、イベントを取り仕切っていた同級生達。
 何でも女の子側が一人、急病で来れなくなったらしい。
 まあこのイベントはそもそも、先にアンケートを取って、その中から選ばれた出来イベントでもあるんだけど…。
「でも私、別に告白したい人とかいないんだけど…」
 ウチは進学校で、一年の頃からそれこそ死に物狂いで勉強ばかりさせられる。
 だからこそ、こういうイベントが人気あるのだ。
 同級生達はとりあえず出てくれ、と頭を下げるばかり。
 イベントは互いに自己紹介をして、気になっている相手をスケッチブックに名前を書いて、みんなの前で公表するというもの。
 互いの名前を書けば、カップル成立ってわけだけど…。
「ちなみに男子は誰が出るの?」
 本当はイベントが始まるまでは、異性のメンツは秘密にされている。
 けれど緊急事態なので、同級生達はファイルを見せてくれた。
「…ん? 彼がいるのね」
 ファイルの中には、この学園で人気ナンバー1の彼がいる。
 いつも穏やかで成績優秀、女の子には特に優しいけれど、特定の相手がいないことでも有名。
 …妙に一線を引いているのが、ちょっと腹黒さを感じる相手だ。
 でもちょうど良い相手かもしれない。
 彼の名前を書く女の子は多いだろうし、その中の一人となれば恥もかかない。
 彼だってまさか、あまり話したこともない私の名前を書くワケがないしな。
「…分かったわ。出るだけ出るわ」
 ――こうして私はイベントに参加することにした。


 パーティーは終業式が終わり、午後からとなる。
 体育館を使うので、私達はそれこそ目が回るほど大忙し。
 何せ準備する時間は二時間ほど。
 その間にテーブルや料理や飲み物を並べたり、吹奏楽部にも演奏の準備を指示しなくてはならない。
 着替えは学校に持ち込んでいて、更衣室で後で着替えなきゃ!
 そしてパーティーが無事開催され、最初は立食と談笑が始まる。
 その間に着替えて、軽くメイクもして、体育館に出た。
 イベントが行われるまでは自由時間。
 私は友達と合流して、束の間の安らぎの一時を過ごす。
 …そして悪夢の時間が始まった。
 壇上に並べられたイスに座ると、向かいには同じ数の男子達が座る。
 …多くの視線が痛い。
 本当に突き刺さるようだ。
 けれど男の子も女の子もはしゃいでいるし、楽しんでもいる。
 落ち着いているのは私…だけじゃなかった。
 真向かいに座る彼もまた、落ち着いていた。
 …まっ、彼も頼み込んで出てもらったと言っていたし、あまり興味がないんだろうな。
 あっ、目が合った。
 私を見てにっこり笑い、軽く手を振る。
 なので仕方なく、私もぎこちなく笑いながら手を振った。
 そしてスケッチブックに名前を書く時間になった。
 コレでようやく終われる…そう思いながら、私は彼の名前を適当に書く。
 そうして全員がスケッチブックを見せ合った時、第二の悪夢が始まった。
 何故か彼は、私の名前を書いていた!
 しかも私は彼の名前を書いていたワケで…めでたくなく、カップル成立してしまったのだった…。


「何でアンタ、私の名前を書いたのよ?」
 カップルになった二人は、特別に教会で二人っきりになれる。
 今年は男女七名ずつ出たのに、カップル成立になったのは私と彼、そしてもう一組だけだった…。
 残りの女の子達は全員彼の名前を書いていたので、視線が真面目に突き刺さったのが痛かった。
「え~、だって壇上で合図しただろう?」
 私に締め上げられながらも、彼は笑みを絶やさない。
…ちっ。身長の高い男をしばくのは、こっちが苦労する。
「合図って…あの手を振ったヤツ?」
「そうそう。てっきりボクに合わせてくれるんだと思っていたんだ」
 あっ…。あの時、私は手を振り返したっけ…。
 まさか打ち合わせるわけにもいかなかったし、彼もまた、イベントには困っていたからな。
 彼は私がパーティーを取り仕切る役であることを知っていたし、そう思っても仕方ないか。
「…そう。まあ良いわ。これから冬休みになるし、その間に仲がこじれたって言えば、女の子達は喜ぶでしょうしね」

Kissシリーズ・学園のキス1(2)

2017.07.30(12:27)

「だから…と言うこともないが。お前が女として迫ってきた時は……その延長みたいなもんだと思った」
 …つまりアタシの接触は、過激なスキンシップの一つと思っていたと。
「だけどお前は若いし、未来がある。可能性な無限大だし、俺なんかに構っているのが勿体無いと思ったんだ」
「むっ…」
「外の世界に出れば、お前にふさわしい良い男がすぐに見つかるさ。だから俺ことなんて…」
「むうっ!」
 耐え切れずに叫んだアタシは突然立ち上がり、机に膝を載せて先生の両肩を掴み、くだらないことばかり言う唇を唇で塞ぐ。
「んんっ…! おっおい!」

 ガターンッ

 そのまま先生は背中から床に落ちる。
 あたしは先生が抱きしめて庇ってくれていたから、どこも痛くない。
 …やっぱり優しい。
 そんな先生の上に乗りながら、アタシは何度も先生キスをする。
 最初は抵抗していた先生だけど、途中から力が抜けたようになすがままになった。
 唇がしびれるようになって、ようやくアタシは先生から離れる。
「…お前なあ」
 困り果てた先生の顔、唇はアタシの唾液で濡れていた。
 こういうところが妙に色っぽいんだよなぁ。
「だぁって先生、くっだらないことばかり言うから。アタシはこの恋心を一生のモノにしたい。死ぬ時だって持っていきたいと思っている気持ちを、バカにされたら怒るッスよ」
「うっ…」
 少し怒ったように上から言うと、先生はますます困る。
 そんな先生に、アタシはフッ…と笑いかけた。
「先生、知ってったッスか? アタシ、実は国語が苦手だったッスよ」
「…ああ、そう言えば一年の夏までは六十点台だったな」
「そうッス。でも夏に先生に惚れて、国語の教科書を大事にしたり、何度も読み返したりしたッス。そうすると、少しでも先生に近付けたように思えたッスから」
 そうしているうちに、いつの間にか成績がトップになっていたのだ。
「思い込んだら一途! と言うのがアタシッスからね。…逃がさないッスよ」
 ぎゅうっと先生に抱きつくと、とうとう観念したようにため息を吐く先生。
「…お前には本当に負けるよ」
「じゃあお嫁さんにしてくれるッスか?」
「ちゃんと大学に行くか、就職を決めれば、な」
「うがっ!?」
 …ヒドイ、交換条件。
 本当は専業主婦になりたかったのに…。
「んっ…。じゃあ大学に通って先生の資格を取って、この学校に戻ってくるッス。もちろん、国語の先生として。それなら良いッスよね?」
「お前…俺をクビにさせたいのか?」
「そうなったら、先生は専業主夫になれば良いッス!」
 ニヤッと笑うと、先生は柔らかくあたたかく苦笑した。
「言ってろ」
 そしてゆっくりとアタシの頭を引き寄せ、キスしてくれる。

 ――やっぱり恋愛は一途で、多少強引じゃなきゃね!

<終わり>

学園

  1. Kissシリーズ・学園のキス2(2)(07/30)
  2. Kissシリーズ・学園のキス2(1)(07/30)
  3. Kissシリーズ・学園のキス1(2)(07/30)