Kissシリーズ・イジワルなキス2(2)

2017.10.07(00:41)

「んなっ! ちょっ…何すんのよっ!」
 引き剥がそうとしても、思わぬ力でビクともしない!
「…あっ、本物?」
「本物よっ! ちょっと、具合が悪いなら保健室に行くか病院に行きなさいよ!」
「……そんなんじゃ、治らない」
「じゃあどうやったら治るのよ? ご両親、わざわざ海外から連絡してくれたんでしょ? 恋しいなら、もうそっちに行ったら?」
「行っても治らない」
 両親が恋しいとかじゃない、か。
 慣れない一人暮らしでまいっているのではないか、というのが周囲の意見だった。
 でも違うとなると…。
「じゃあどうすれば元気になるの?」
 あたしが尋ねると、顔を上げて真っ直ぐに見つめてくる。
「…協力してくれる?」
「まああたしにできることなら…」
 幼い頃にさんざんイジワルされたけれど、でも元気のない姿を見て喜ぶあたしじゃない。
 すると急に束縛が解けたかと思うと、いきなり…キスされた。
「…へっ?」
「…ああ、やっぱり…。こうしていないとオレ、元気が出ないみたいだ」
 そう言って今度はぎゅっと抱き締められた。
 ハッ!と我に返ったあたしは、アイツの腕の中で暴れだす。
「ちょっと! いきなり何すんのよ!」
「そんな驚くことじゃないだろう? 二回目なんだし」
 …その言葉で、八年前の出来事を思い出す。
 そう、彼とキスをするのは二度目。
 一度目は彼が引っ越す前日、突然あたしの眼の前にコイツが現れた。
 珍しく真面目な表情で話があると言われて、家の近くにある公園に行ったのだ。
 そこで何もコイツは言わず…突然、キスをしてきた。
 当時のあたしはキスの意味が分からず、ただ首を傾げるだけ。
 でもコイツは満足したように微笑んで、そのまま帰って行った。
 ――翌朝、アイツが誰にも何も言わず、転校して行ったことを知った。
 そしてあたしは成長し、キスの意味が分かるようになる。
 アレがファーストキスだったことも…。
「…ずっと聞きたかったんだけど、何でキスしてきたのよ?」
「あっ、覚えてた? 何も言ってこないから、忘れられてたかと思ってた」
「そりゃ忘れたかったわよ!」
 けれど同じ学校に通って、顔を見ていたらイヤでも思い出す。
「…当時のオレってさ、本当にガキで、好きなコほどイジワルしちまってたんだ。でも遠くへ引っ越すって親に言われて、気付いた。おチビと離れるのが寂しいって。だからキスしたんだ」
「……当時のあたしからしてみれば、最悪のイジワルだったわよ」
「ゴメン…。本当は引っ越すことを言って、イジワルしてたことを謝ろうと思っていたんだけど…。いざおチビを前にしたら、何も言えなくなって…気付いたらキスしてた」
「自分勝手なヤツ」
「本当にゴメン…。でもオレ、おチビがいないとダメみたいだ」
 …それならもう、昔の変なあだ名で呼ばないでほしい。
 まだ八歳の頃のあたしは小さくて、確かにおチビってあだ名が似合うコだった。
 そして性格も消極的で…コイツがイジワルしてこなかったら、きっと誰とも関われなかった。
 コイツがいない日々に平和を感じていたのは確か。
 けれどちょっとだけ、寂しさを感じたのも確かだった。
「…それならもう『おチビ』って言わないで。あたしの名前、ちゃんと呼んでよ」
 顔を上げながら言うと、少し照れるコイツが可愛いと思ってしまう。
「ううっ…! 改めて名前で呼ぶのって、結構照れるな」
「じゃなきゃ、もう二度と声をかけないし、キスもさせない」
「うっ! …こういうところでイジワルするなよ」
「アンタがそれを言うか」
 八年前のことはちゃんと今でも恨んでいるのだ。
「はあ…。わーったよ。無視されるのも、キスできないのも、オレにとっちゃあ死活問題だからな」
「バカなヤツ」
「自覚してる」
 こんなにやつれるほどあたしを好きだなんて、本当にバカ。
 けれど今は真剣な表情で、真っ直ぐにあたしの名前を呼ぶようになったんだから、いっか。

<終わり>

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Kissシリーズ・イジワルなキス2(1)

2017.10.07(00:35)

 生きていれば、もう二度と会いたくないと思う人間は必ず一人はいると思う。
「おっ、おチビじゃねーか! ひっさしぶりだなあ!」
 …それが特に、小学二年生の時に思いっきりイジメられた男だと余計に。
 桜が満開の高校入学式で、あたしはそのイジメっ子と再会した。
「どっどうしてここにっ…!」
 小学二年の時に同じクラスになったコイツは、何かとあたしをイジメてきた。
 けれどそれも三ヶ月も経たずに終わった。
 理由はコイツが転校して行ったから。
 あの時ほどほっとしたことはない。
 あたしはそのまま地元に残り、平穏で平和な小・中学生活を送ってきたのに…!
「いや、今度親父が海外転勤になっちまって。でもオレ、英語が苦手でさ。日本に一人で残ることにしたんだ」
 一緒に行けばよかったのにっ!
 思い出したくもない、忌々しい思い出が次々とよみがえってくる。
 あっ…倒れそう。
「また三年間、よろしくな!」
 なのにコイツときたら、平然と明るい笑顔を浮かべやがる…。
 まあ同じクラスになるとは限らないしな……と思っていたのに!
 同じクラスの上、苗字の席順でも前後と近い!
 …神様はあたしに何の恨みがあるんだろう?
 あたしはできるだけ近づきたくなかったのに、コイツは平然と話しかけてくる。
 やがて互いに友達ができたものの、何故か男女入りまじったグループになった。
 そうなれば当然、遊んだりつるんだりするのはグループ行動が多くなるわけで……そうなると、アイツとも接する機会が多くなる。
 …本当に嫌だ。
 小学二年の頃のアイツは、あたしにとって悪魔だった。
 まあ子供ながらのイタズラが多かったけれど、大分傷付いた。
 まず髪の毛をグシャグシャにされる、おもちゃの爬虫類で驚かしてくる、ノートや教科書に落書きをされる…などなど、数多くのイジワルをされたきたのだ。
 流石に周囲の友達や大人達も、時々は見兼ねて止めてくれた。
 けれどコイツは全く反省なんかせず、直らなかった!
 …あの頃、支えてくれる友達がいなかったら、不登校になっていただろうな…。
「何、遠い目してるんだよ? なあ、ちょっとノート見せてくれよ」
 前の席に座るコイツは、こうやっていっつも気軽に話かけてくる。
「絶対イヤ」
 だからあたしはノートを胸に抱え、拒否をした。
「何でだよ?」
「授業中に寝ているヤツが悪いから」
 ハッキリ言うと、近くにいた友達がクスクス笑う。
「なっ…! すっ少しだけ貸してくれよ」
「他に人に借りなさい」
 情けない顔をするけれど、あたしはそのままノートを机の中に入れる。
「ひっでぇ! ううっ…。昔はもっと優しかったのに…」
「違うわよ。昔は弱かったの!」
 コイツにイジワルされて、何も抵抗できないぐらいに弱かった。
 だからコイツが転校しても、あたしは強くなろうと思って、生きてきた。
 様々な武術を習ったり、勉強も頑張ったり、人付き合いも上手くできるようになった。
 …まあコイツは不思議なことに、明るくて分かりやすい性格をしているから、友達があたしよりも多いけど。
 それでも成績はあたしの方が上っ!
「ちゃー…」
 ブツブツ言うも、それでも予鈴の鐘が鳴ったので前を向く。
 …そう、決して許しちゃいけない。
 確かに小学生の頃のイジワルは苦々しい思い出だけど……それ以上に、コイツには最悪なことをされたのだ。
 その一点だけは、決して許すまじっ!
 例えコイツが忘れていても、あたしは絶対に忘れられない!
 そういう出来事があったからこそ、あたしはずっとコイツに冷たいままだった。
 友達にはイジワルされた過去を話すと苦笑して、あたしの味方をしてくれる。
 けれどアイツに対して評価が下がるわけじゃなく、こういうのを人徳って言うんだろうな。
「はあ…」
 早く来年にならないかな?
 クラス替えでコイツの顔を見なくなれば、平穏を取り戻せるのに…。

 ――そして一年後。
 念願かなって、あたしはアイツと別のクラスになった。
 しかもアイツは一番最初のクラスで、あたしは最後のクラス。
 校舎も別になり、晴れてあたしは平穏な日々を取り戻した!
 新しいクラスでは新しい友達もできて、一年の時のグループとも遊ぶ回数は減っていった。
 だけどまあみんな、新しい友達が増えて喜んでいたし、別に良い…と思っていたのに。
 何故かアイツだけは見るたびに元気をなくしていく。
 高校二年の秋にはげっそり痩せていて、流石に心配して、声をかけてみることにした。
 他の友達や先生、親が聞いても何も答えないと言うから、あたしが話しかけても同じかもしれないけど…。
 放課後、誰もいなくなった教室で、アイツに机の上で寝ていた。
「…ねっねえ、大丈夫?」
 今にも倒れそうな顔をしているから、声をかけつつ近付く。
 するとゆっくりと顔を上げて、あたしを見るなり、いきなり腰に抱き着いてきた!

Kissシリーズ・甘々6

2017.06.19(06:32)

 アタシはつねづね思うことがある。
 もしかして彼氏にこの人を選んだのは、間違いだったのかもしれない―と。
 その理由は…。
「ねぇねぇ、もうすぐクリスマスよね? イルミネーション綺麗な場所に行かない?」
 とアタシが言うと、彼氏はニッコリ笑顔でこう言う。
「行かない」
「ええっ!?」
 驚きと悲しみのあまり涙ぐむと、彼氏はいきなりプッとふき出す。
「ウソウソ。行くって」
「ほっホント…?」
「ウソ」
「どっちなのっ!」
「アハハ」
 …どうやら彼氏はドの付くSだった。
 ……いや、それは何となく気付いてはいた。
 高校入学時から何となく彼とは気が合って、一緒にいることが多かった。
 二年生になって、アタシの方から告白した。
 それはまあ、やっぱり恋人になりたから。
 そして少しでも、彼に優しくしてほしかったのに。
 今でも彼は変わらず、イジワルだった。
 彼は結構イジワルなところがあった。
 アタシの言うことをイチイチ否定して、でも次の瞬間には言う通りにしてくれる。
 後はちょっとでも隙を見せると、髪の毛を引っ張ったり、頬をつねったりしてくる。
 友達や周りの人達は、それはスキンシップなのだと言う。
 そして彼がドSだからと、どこか遠い目をして言った。
「…ねぇ、そのイジワル、いつになったら止めてくれる?」
 とアタシが真面目に聞いても、
「お前が面白いから、止めない」
 …と言う満面の笑顔の返答は、恋人としておかしいと、アタシは思う。
「むぅ~」
「そんな拗ねた顔してもダメ。それにお前、イジワルな俺が好きなんだろう?」
「うっ…」
 それを言われるとアレだけど…。
 彼にかまってもらえるのは嬉しいし、彼の喜ぶ顔は見ていて心がときめいてしまうんだけど……。
「あっあんまりヒドイこと、しないでよぉ」
「そんなにヒドイことはしてないだろう? 傷付けたことはないし」
「アタシの心は傷ついているの!」
「へぇ。そうなんだ」
 …綺麗な顔でニコニコ笑っているところを見ると、完全にアタシの意見はスルーされているな。
「なあ、こっち来いよ」
「イヤよ!」
 怒っているアタシがそっぽを向くと、近くに来る気配が…。
「…俺の言うことに逆らうなんて、良い度胸だな」
 そして背筋がゾッとするほどの低い声が間近で聞こえた。
 背後から彼の手が伸びてきて…。
「ふぎゃっ!?」
 アタシの左右の頬を、むぎゅ~っとつねってきた。
「アハハっ! 面白い顔と声!」
 引き伸ばされた顔を見て、彼は大笑い。
 これ以上ないぐらいの輝かしい笑顔を浮かべながら、更にむぎゅむぎゅと頬をつねってくる。
「…もうっ! 止めてってば!」
 アタシは耐え切れなくなって、彼の手から離れた。
「こういう痛いイジワルはイヤなの! 止めてくれないなら…」
「止めないなら、何?」
「うっ…」
 いきなり真面目な顔で、真っ直ぐに見つめないでほしい。
 おっ怒らせたかな?
「もしかして…別れるとか言い出さないよな?」
「そっそれは……」
 真剣な彼に戸惑っていると、今度は静かに頬を両手で包まれる。
 そしてそのまま引き寄せられて…。
「んっ…」
 キス、される。
 ただ触れるだけのキスなのに、甘くて身も心もとろけてしまう。
 さっきまでイジワルされることに怒っていた気持ちも、どこか遠くに行ってしまった。
 …いつもこう。
 アタシが怒ると、こうやって真剣なキスをしてくる。
 そうするとアタシが大人しくなるから…。
 触れていた唇が離れると、またいつものように、額と額が触れる。
「俺と別れられる?」
「うううっ…」
 自信たっぷりに問われると、口ごもって何も言えなくなってしまう。
 ―コレもいつものパターンだった。
 彼にはすっかり主導権を握られてしまっている。
「まっ、そもそもお前の方から告白してきたんだし、そんなことは有り得ないよな?」
「こっ告白してきたのはアタシの方だけど…。キミって本当にアタシのこと、好きなの?」
「好きだよ。お前の困っている顔が、一番好きだけど」
 だからイジワルされるのかっ!
「ああ、泣き顔も可愛い。だから困らせたくなるんだよな」
 そんな楽しそうに語らなくても…。
「ふっ普通、恋人なら笑顔とか、喜ぶ顔が見たいとか思わない?」
「確かにそういう表情も好きだな。お前も俺のそういう顔、好きだろう?」
「うっうん…」
「なら、さ」
 ニッコリ悪魔の微笑みを浮かべ、彼は再びアタシの頬をつねり出す。
「うみゅっ!」
「俺の物でいなよ」
「あっあらひはおもひゃひゃなひっ! (アタシはおもちゃじゃないっ!)」
「おもちゃ、だよ。俺だけの、ね?」
 パッと手を離すと、今度は抱き締めてくる。
 そしてまたキスをしてくるんだから…アメとムチを使い分けるのが上手い人。
 …でもこういう扱いも、アタシにだけしてくれるのなら…と思う時点で、彼から離れられない。
 アタシは彼の体に抱き着いた。
 決して離れないように―と。

<終わり>


イジワル

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  3. Kissシリーズ・甘々6(06/19)